厭債害債(或は余は如何にして投機を愛したか)

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zoom RSS きしみはじめたアベノミクス

<<   作成日時 : 2016/08/17 20:35   >>

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民主党の野田政権が解散総選挙をやると決めたとき、ワタクシも含め「ようやく暗黒の民主党政権が終わる」とほっとしたと同時に、一抹の不安を覚えた人も多かったのではないか?それは総選挙の結果として安倍氏が首相になることがほぼ確実視されていたからである。第一次安倍内閣は病気のため途中退任したが、やはり国のトップとして健康不安はあまり印象がよろしくないし、そもそも考え方や政策の点でそれほど優れた宰相という印象もなかったからだ。ところがどこから湧いて出たのかアベノミクスなる「異次元の金融緩和」をベースにした政策を打ち出したあたりから、風向きが変わってきたように思う。ある意味変化への希望というか、そういうものについて国を挙げて取り組むという姿勢がみえたからだ。そしてこれは国を挙げての政策ということで、金融庁や財務省も一体となった施策として取り組もうとしていたことは明らかである。
http://www.fsa.go.jp/access/25/126.pdf
http://www.mof.go.jp/about_mof/councils/kinyuukaigou/report/teigen.pdf

すなわち、黒田日銀の金融政策も金融庁や財務省のお墨付きだったわけで、その背後には、それぞれの省庁が考える独自のゴールがあったと思える。たとえば、財務省にとっては、デフレ脱却⇒景気回復→増税を含む税収増、といった財政再建(あるいは自分らの支配できるカネの増加=権力増加)への夢があったと思うし、金融庁としては、金融機関が貸し出しを増やせる状況を作ることで、金融機関の構造改革(システム的な安定性の増強)を狙っていたのではないか、と思う。

しかしながら、デフレ脱却という明確な戦果が出ないままで黒田日銀が迷走し始めた結果さまざまなところで軋みが生じ始めている。

まず、デフレは「マネーの量を増やせばあっという間に解決する」というあまり根拠のない宗教に依存してしまった結果、意地になって「量」を増やそうとしていることで問題が生じている。その典型例は日銀のETF大量買いである。すでに日銀が多くの会社において実質的な筆頭株主となってきていることはあまねく報道されているが、これによって、日銀(実際は日銀が買っているETFの運用機関)がきちんとしたガバナンスを企業に対して果たさなければならないことになる。まさにそれはアベノミクスが日本再興戦略を通じて行った「スチュワードシップ・コード」「コーポレート・ガバナンス・コード」あるいは公的年金を通じて積極的に取り組ませたESG投資という戦略と表裏一体である。企業の株を保有することで投資家にも行動する責任を負わせ、それによって企業行動に影響を及ぼして日本を変えていこうとしているのだから。

さて、日銀がそのようなことが出来るかというと、そもそもETFの保有を通じて直接意思表明をすることは難しい。結局そのETFの運用会社が決めたルールに従って議決権行使をしていくのが関の山である。一般にはETFのようなインデックス運用では多数の銘柄を機械的に保有するため、非常に形式的に議決権行使における賛否は決められる。例えば社外取締役の独立性が一定の資本関係に依存するとか。しかしながら「スチュワードシップ」などで期待されているのはそのような機械的な(アホでもできる)判断ではなく、影響力を持つ大株主が会社とじっくり話し合って経済や株主にとって良いやり方を進めていくということである。ところが日銀がETFを大量買いすればするほど、「物言わぬ株主」が増える。というかむしろ「機械的基準で判断してしまう」非常に危なっかしい大株主が誕生することになる。日銀のETF買がアベノミクスの異次元緩和から導かれるマネーの大量供給の流れである一方、コーポレートガバナンスに対する取り組みもアベノミクスの成長戦略の一環である。したがって、すでにこの段階でアベノミクス自体の戦略が正面衝突している印象を受ける。太平洋戦争に例えると、陸軍と海軍が全く違う方向から攻めた結果どこかで同士討ちをやっている感じだ。

金融庁も、最近は最近の金融緩和のやり方に一定の距離を置き始めたと思える。土曜日の日経新聞では、マイナス金利政策について銀行の経営悪化が銀行の貸し渋りにつながりかねないとの懸念を日銀に伝えたというような記事があり、こちらのほうもこれ以上のマイナス金利深堀りにかなり否定的な態度だと思われる。銀行だけではなく、保険会社の経済価値ベース(負債も時価評価して保険契約の持つオプション性などの価値なども加味した実質)の自己資本にも多大なる影響が出ている。(植村さんのブログで言及されています http://nuemura.com/item_2283.html)。そもそも保険会社に対しては、いま欧州のソルベンシーIIやICSをベースにしたフィールドテストが金融庁から要請されていて、各社必死でその計算(ていうか合理的な前提づくり)に取り組んでいるはずだが、いずれにしても、金利が低下すれば、極めて長い負債を持つ生保の自己資本が大きく低下することは明らかであり、金融庁の目指す健全性確保と矛盾してくるのである。(ちなみに、今年に入って生命保険会社がすごい勢いで資本性の調達を行っており、7月末現在ですでに昨年の実績を超えようとしているが、基礎利益ベース(すなわち現行会計ベース)では収益が大きく落ち込んでいるようには見えないのに、こうした資本調達に走る背景の一つは、こうした金利低下による経済価値ベースの自己資本の減少が影響しているとみている)。
(参考:第一生命のEVの動き http://www.dai-ichi-life.co.jp/company/results/kessan/2015/pdf/index_009.pdf
をみると、金利低下がいかに影響したかが良くわかるうえ、「終局金利」なるもの(これは制度上認められているが)によって多少なりとも金利低下の影響を減殺しようとしているのがわかる)。


恐らくこうした複雑な利害を調整するための結論は、日銀が目標を微調整してインフレを長期目標としていく(その意味で木内さんの考えに近くなる)しかないのではないかと思う。その上で市場に対して歪みを増幅しない形の金融政策に徐々に戻していく(一種のテーパーリング)ことを始めるのがよいだろう。今のような妙な目標を掲げ続けることで、日本の本来行うべきこととしてみんなが合意した政策(税と社会保障の一体改革など)までゆがめられてしまっているのだから、できるだけ早い時期にそうした見直しを行うべきことは自明である。

前回の決定会合で、9月会合での検証を明言したが、上記のようなバックグラウンドを考えると、ワタクシは結構真面目に「見直し」が入る可能性が高いと思っている。陰謀論的になってしまって恐縮だが、いまだにアベノミクスというのは自民党が両院で改憲に必要な多数をとるための人気取りの経済短期盛り上げ政策だったとの疑いをぬぐいきれないので、すでにそれが実現したら、もはや用済みではないか、との疑いも残る。(外れたらごめんなさい)。以前「異次元緩和」のスタートを太平洋戦争における「真珠湾攻撃」に例えたが、ワタクシだけではなく多くの人がいまの日銀の政策を太平洋戦争のロジックで語り始めている。つまり優秀な官僚と参謀にありがちな「無謬」神話を守ろうとした挙句、最後は非常に悲惨な事態を招くということが日本の教訓として頭にある人が多いということである。いずれにしてもさすがに優秀な政府、中央官庁、日銀のみなさんであれば、それぐらいのリスクには気付いていると思っているのだけれど。

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