厭債害債(或は余は如何にして投機を愛したか)

アクセスカウンタ

zoom RSS トランプ大統領

<<   作成日時 : 2016/11/09 17:13   >>

なるほど(納得、参考になった、ヘー) ブログ気持玉 8 / トラックバック 1 / コメント 4

選挙戦で接戦になっていたことの意味を我々は軽視しすぎていたようです。トランプ氏があれほど暴言をはいていても、共和党のえらいさんが自分ところの候補を支持しないとか言い出しても、メディアがそろってトランプ氏を口を極めて非難しクリントンの見方をしても、そこまでしてもそれほど差が開かなかったということの正しい解釈は

「もし相手がトランプ氏(ほどのとんでもない候補)でなければ、圧倒的な差でクリントン氏が負けていた可能性もある」

ということです。それほどまで人気がないということを、金融業界をはじめとして過小評価しすぎていたということでしょう。

そのことに遅まきながら気が付いたのは、投票日の前日NYの5番街にあるトランプタワーの前からのテレビ中継を見ていた時でした。あるクリントン支持者の女性がトランプの悪口を言いながらクリントン支持を訴えていたのですが、通りがかりの人の一人ならず何人もの人が、逆にその女性に対して正面切って反論し始めました。むしろ多勢に無勢の状況となった女性は言い争うのをやめて肩をすくめて去っていきました。テキサスではない、クリントンが圧倒的に強いとされるニューヨークでの出来事です。これを見たとき、ヒラリー・クリントンがいかに人気がないか、逆にトランプに対する期待がいかに高いか、ということを思い知らされました。これはもしかしたら、とその時初めて思いました。

そもそも民主党は、8年前史上初の黒人大統領を誕生させました。今回は女性でしかも高齢の候補です。はっきり言ってかなりハードルの高い「案件」だと思いますが、前回オバマが圧勝したことから、そういうハードルはあまり障害にならないと軽視されてきたと思います。しかし、街の声でも「女性大統領によるガラスの天井の打破」ということが言われるということ自体、世の中には女性が男性よりも劣位におかれているという事実ないし感覚が存在するということです。しかし、そのことは大統領を選ぶという点ではもろ刃の剣であり、女性は劣っていると考える人は大統領はむしろ男性にならせるべきだと考える場合もあると思います。ましてや中西部のど田舎の白人男性など、「前は黒人で今度は女か」とか言っているというツイートもありましたが、その感覚でトランプに投票するということは十分ありだと思います。

もともとそういう難易度の高い案件であったことに加え、メール問題がことあるごとにぶり返され、一方のトランプさんは最初のほうで超過激だった発言の「超」の部分が取れただけで人々がずいぶん「慣れて」しまってそれ自体に対する反感が薄まってきたようにも思います。むしろ、その「本音」が次第に心地よく感じられるようになる。そういうことが起こり始めていたのだと思います。

今回のテーマもチェンジだったと思います。既存の権威というものに対する、民衆の反乱とでも言いましょうか、意外に「普通の人」がトランプ氏に投票しているのでしょう。ただ、残念ながら、アメリカにおいて普通の人の国際認識は日本の普通の人々に比べてきわめて低いとワタクシは思っています。トランプが海外でどのように見られているかなど「普通の人」には全く興味もないでしょう。

まあ、レーガン大統領も登場当時はさんざん馬鹿にされましたが、結果的には歴史になお残す冷戦終結などいろいろ仕事をしました。トランプもそうなるかもしれません。ただ、レーガンの場合は多少なりともカリフォルニア知事としての行政経験もあり、政治を知っていた。トランプさんは不動産の世界では丁々発止やってきたし、お金儲けの能力はあるかもしれないけれど、行政経験の低さは隠しようがない。レーガンのときは、まあいいかどうかは別にしてマネタリストの大家たちが経済ブレーンについていて、レーガノミクスという経済政策を作り上げた。しかしトランプの場合、そういう(正しいかどうかは別にして)論理的に説明できる経済政策みたいなものが見えてこないのです。それが一番のリスクかもしれません。実は我々日本人は、民主党への政権移行でこういう体験は国内的にしており、まあトランプさんを鳩山さんと重ね合わせれば大体どういうことが起こるかは想像にかたくないのではないかなんて考えてしまいます。ワタクシは民主党が政権をとった選挙の時も、「悔いのない選択を」と呼びかけましたが、結局「普通の人」が変化を求めて、実際に政権が変わり、そして現実を見て後悔するということはそこかしこで起きます。人々というのは一時期の衝動に駆られ、正解がわからないと思って「変化」に賭けるのですがその結果、とりわけ国際関係において今後大きな予測不可能性を生み出してしまう。「不満」をエネルギーとして勝ってしまった候補はどうしても変化をもたらす行動をとらざるを得ず、それがこれまでの流れや前提を無視してしまう結果トラブルをあちこちで起こすということになりそうです。もちろんアメリカは世界の最大権力であり、それをバックに力ずくでよりよい社会を作り上げることが出来たら理想なのだけれど、トランプさんのこれまでの言動からは、どうもさらにパワーアップした鳩山さんになってしまって、しかも強大な権力をにぎっているから、トランプ氏の国際政治上の無知と相乗効果をもたらし世界秩序が大きな混乱の渦に投げ込まれかねないと思っています。日本のような軍事的なプレゼンスが低い国で起きたことではなく、アメリカがそういう状況になったことのインパクトは、今後いろいろなところで出てくるでしょう

市場への影響についてちょっと考えてみましょう。これも全く予想がつかないというかもう外れたらごめんなさいの世界ですが、まずトランプ氏は自由貿易を否定し、移民労働に対しても抑制的です。つまり米国内の労働コストは上昇し、海外からの輸入には高い関税がかけられる結果一部の製品については国内小売価格が上昇します。一方で、トランプは税金を引き下げると約束しているので、お金持ちを含めて可処分所得が増えます。これらはインフレ要因だと考えられます。一方で、保護主義の結果として米国製品の売れ行きは落ちます。国内の輸出産業は打撃を受け、失業が増える可能性があります。
財政面では減税による財政収支の悪化とオバマケアがなくなることや企業の海外留保利益に対する課税などによる財政の好転など微妙なバランスとなりそうです。企業収益は労働コストの増加や海外売り上げの低下によって全体に下押しされるものの、国内の減税効果で国内企業には好影響がでるため、全体としてはニュートラルかな、と思います。
それ以外にもいろいろ見るところはあるでしょうが、為替はいったんショックで円高にいくものの、次に書くように米国の金利上昇要因が強いため、明確に外交や軍事でとんでもないことが起こるまでは、それほど深く突っ込む理由もないでしょう。金融政策については、「低金利政策による株高演出」を批判していることから、イエレンを公約通り首にして、積極的に金利を引き上げる方向性にするでしょう。また、財政についても減税のイメージが強く拡大的ですので、長期金利も上がりやすくなるでしょう。そしてそのことは為替について仮にリスク回避があっても大幅な円高は避けられる理由ともなるでしょう。問題はこれまでの彼の発言が必ずしも一貫していないということで、その辺は多少割り引いて考える必要があります。
株価については、内需○、外需Xで全体としてはニュートラルですが、金利の上昇がおこると不動産価格がどのような影響を受けるかが注目され、そのことが金融危機の引き金にならないという保証はどこにもありません。いずれにしても「リスク」は大きく高まった、といえます。

それにしても、今年は英国でも米国でも「民衆」が力を持ちました。ワタクシは、やはりトランプは嫌いだと思いますが、どんな状況であれ、民主主義のプロセスで選ばれた結果は尊重されるべきです。そしてその結果は、どんなものであれ、その投票した人々が甘んじて受け入れなければならないのだ、と思います。我々が民主党政権を選び、ひどい目にあった例があるとしても。

さいごにダチョウ倶楽部のかたに登場していただきましょう。
「いいか、押すなよ、ぜったいに押すなよ」(核のボタン)




テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 8
なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー)
ナイス ナイス
ガッツ(がんばれ!)

トラックバック(1件)

タイトル (本文) ブログ名/日時
米大統領にトランプ氏
米大統領選は8日、全米各州で投票、即日開票され、共和党のドナルド・トランプ候補が民主党のヒラリー・クリントン候補を破りました。トランプ氏は来年1月20日、第45代大統領に就任します。 *** ...続きを見る
歌は世につれ世は歌につれ・・・みたいな。
2016/11/09 22:09

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
期待しているいがいにもこれくらいの劇薬をぶちこまないとエスタブリッシュメントのやつらはわからないと…トランプを大統領にするのはよくないと思いながら入れた人もかなりいるみたいですね

アメリカの政治にたいする鬱憤が爆発しましたね〜
ブレクジットもそうだけどポリテイカルコネクトレス唱えて理想だけかたってるだけじゃ大多数の不満のガス抜きはできなかったと
政治がマイノリティの側の弱者にはむいててもマジョリティに属する弱者はむいていなかった

これをアメリカ市民は愚かだった低所得者は正常な判断はせず情にながされるみたいに切り捨てるのは容易いけれど…日本のリベラルがそんなんだったらまぁ日本もどんどん右傾化するでしょうね

2016/11/09 17:55
犬さんどうもです。得票(出口調査?)を様々な切り口で見たデータを見る限り、別に低所得でもない普通の白人がかなりトランプ支持に回っており、まさにおっしゃる通りマジョリティに属する弱者(と感じる人)の不満が爆発した感じですね。
厭債害債
2016/11/09 18:28
(元)が取れて欧州駐在に戻りました。またよろしくお願いします。
欧州時間では当確が出たのが通勤時間帯で車のラジオで聞いた人もいて、「おいっ、あれ聞いたか?」という感じでひと騒ぎ起きていました。経済政策は未だしも外交・軍事は国内重視でしょうから、欧州では相対的にロシアの影響力が強まりプーチン大統領はニヤリといったところでしょう。原油安で懐は寂しそうですが。Brexitの選挙でもそうでしたが、既存勢力に対する反発に思わぬ程の勢いが付く傾向があります。オランダ人は(来年が総選挙らしく)次はNexitかも知れないと冗談にもならない冗談を言っていました。
欧州駐在
2016/11/10 02:10
欧州駐在さん、どうもです。とりあえず変化を求める勢いは世界を覆っているようですが、日本のように結果的に元に戻って、無茶な経済政策やり放題になって、かえって行き止まり感がでてしまうのではないか、とかいろいろ心配ごとは多いです。あとは、これに勢いづいた「ヘイト」が広がるのではないか、という問題。特に移民問題ですね。これはBrexitとも共通の根っこにあり、また日本の潜在成長率の議論とも絡んでくるので、非常に心配ではあります。
厭債害債
2016/11/10 08:40

コメントする help

ニックネーム
本 文
トランプ大統領 厭債害債(或は余は如何にして投機を愛したか)/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる