厭債害債(或は余は如何にして投機を愛したか)

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zoom RSS 「非産運用」〜捨てられる銀行2

<<   作成日時 : 2017/04/27 12:05   >>

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共同通信の記者の方の著作で、前著「捨てられる銀行」の続編という位置づけです。基本的には金融庁の森長官の趣旨を汲んだ、ある意味金融庁長官のプロパガンダ本、ということになりましょう。(なにせ本の外帯には「・・・森長官の真意とは」という表記があるくらいですから、まさに真意をここで披瀝されているということで、そのために出した本ということです。)とはいえ、内容的には森長官が考える現状の問題点などが整理されていて、これからの金融行政の考え方を整理するうえで非常に参考になりました。

悲惨運用、ないし非産運用というもじりは、あまりセンスがいいとは言えませんが、ワタクシ自身は、日本の資産運用業界というか証券、銀行、販売サイドも含めた問題認識については森長官とはかなり同じ意見です。とにかく妙な投信が多すぎる。保険は保険で、ちょっと前ワタクシの親戚のところにメットライフが外貨建て保険を勧めてきたらしいんですが、そもそもワタクシの親戚は全く外貨運用というものに縁のないひとで、平気で経験値の少ない人に多額の手数料を取って販売するなど、適合性の問題もさることながらこれじゃぁ長期投資や長期資産形成などできませんし、業界全体の信頼を損ねてしまう、というのは全くその通りだと思います。

若干最近、地銀などへの対応でメディアも含めた勇み足っぽい感じはあるものの、問題意識そのものはあっていると思いますし、それをわかりやすく解説した本、ということが出来ましょう。

ただ、ちょっと数か所、記述に気になるところがあり、著者の方が本当に充分整理されてない可能性もあると思ったので、あえて指摘しておきます。

たとえば豪ドル建て貯蓄性保険の話(p22)。保険会社から銀行に販売手数料が5〜7%も払われていると書かれており、それなら豪ドル建て国債を直接保有したほうが高い利回りを享受できる、という記載がありました。これはおおざっぱに言って二つの点で問題です。一つは「保険の機能」があるということ。まあ多分問題となっているのは一時払いでしょうから、あまり最初の払込金額と最終受取金額に差がないのでその場合は確かに問題なのですが、平準払いという可能性もあります。平準払いの場合、その保険期間を通じて保険料を分割して支払うわけで、最初の払込額は小さくなります。保険は保険金額全額にたいしてかかるわけで、たとえば加入直後に死亡しても(養老のばあい)保険金額全額が出る。この部分を無視しているようにとられかねない記述です。

もう一つは、そもそも個人が100万円とか500万円とか普通に店頭で豪ドル建て国債を買うと、一般的には手数料率が高いです。やはり数パーセントとられるのではないでしょうか?だから往復で考えるとそれとの比較が意味があるのかどうか?ましては平準払いの場合だと、比較すべき豪ドル建て国債の購入単位はもっと細切れになるので、現実的には手数料はべらぼうな比率になりそうです。

ワタクシは外貨建て保険の販売の問題は大きいと思いますが、そのコアむしろは「適合性」と「説明責任」のほうだと思っています。

親会社に従属させられる資産運用会社の問題点として次のような記述もありました。「ある銀行では資産運用の経験もない者が平然と子会社証券会社や資産運用会社のトップや重役に居座っているのだという。スマートフォンの使い方の分からない者が携帯電話会社のトップを務め、ボールを蹴ったことのないものがサッカークラブの監督を務めているようなものだ。」趣旨はわかりますが、「重役」は書きすぎましたね。社外取締役などの意味をきちんと理解すべきではないでしょうか?金融庁的にこのような記載を認めて大丈夫でしょうか?とちょっと心配になりました。

一番気になるのが次。
アメリカで非常に存在感の高いインデックス投信の会社、バンガードに取材に行った時の話ですが、「筆者は2016年9月にバンガード本社の取材を許されたが、交通費、宿泊費はすべて自己負担を求められた。同行した他の日本人も同様だった。顧客のコストにつながるものは極力排除しているからだろう」(p194)
えー!それ以外のところはこの著者である記者の取材は先方のアゴアシつきだったのでしょうか?だとしたらそれって、まさにこの本で書いている「利益相反」(記事を書く記者と記事を書いてもらう会社と)の典型的な例になりませんか?とふと思った次第。

これからスチュワードシップとの関係で話題になる議決権行使の問題も、ISSなどの助言に頼ってしまうことの問題点をきちんと整理されていてよかったと思います。個人的にも、ああいう助言会社はそもそもかなりきわどい存在であり、禁止してもいいと思うぐらいですが、まあ必要悪ということで認めるなら格付け会社と同様にきちんと監督の対象とすべきだと思います。

森金融庁の考え方を平易に整理するには非常に良い本だとおもいます。それ以上でも以下でもありませんが。

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