厭債害債(或は余は如何にして投機を愛したか)

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zoom RSS 日銀保有株と議決権行使(本日の「大機小機」(日経新聞))

<<   作成日時 : 2017/07/21 12:58   >>

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http://www.nikkei.com/article/DGKKZO19077090Q7A720C1EN2000/

タイトルからちょっと期待して読みましたが、非常になんというか違和感があり、残念ながら論点が若干本筋からずれているように感じました。上記コラムの論旨は日銀が大量保有しつつその議決権行使方針に従って議決権行使をすると「定款目的を超えて株主のために経営せよ」との主張につながり、それは定款違反や違法経営と紙一重である、というところのようです。当該コラムによればその背景にある日銀の「議決権行使の指針」https://www.boj.or.jp/finsys/spp/kyoryo5.htm/ には「@日銀の経済的利益の増大を目的とし、A株主の利益を最大にするような企業経営が行われるように、議決権を行使すべきだとされている」とのことです。

ここでまず疑問に思ったのは、本当にそうなっているのかということです。念のため日銀のルールをググってみました。まず「議決権行使の指針」というのがヒットしたのですが、ここには「この指針は、株式買入等基本要領(平成14年10月11日付政委第122号別紙1)に定める株式の議決権行使を受託者が行うために必要な事項を定めるものとする」とあります。

ではその「株式買入等基本要領」https://www.boj.or.jp/finsys/spp/kyoryo1.htm/ というのはどうなっているかというと「この基本要領は、金融機関による株式保有リスク削減努力を支援し、これを通じて金融システムの安定確保を図る趣旨から、本行が金融機関の保有する株式の買入等を行うために必要な基本的事項を定めるものとする」とあり、どうやら金融機関のリスク削減のために株を引き取る際の根拠規定のように読めます。また中の規定を細かく見ていただければわかりますが、どう見ても「現株」の取得の際の規定でありまして、ETF(指数連動型上場投資信託受益権)はその規程の範囲外だと思われます。

この大機小機の冒頭に戻っていただくと、「日銀の日本株の保有残高は17兆円を超え」とありますから、最近のETF(指数連動型上場投資信託受益権)の買い入れによる資金供給の残高を含んでいるというかそのものを意味していることは明白です。ではこのETFの買入等に関する規程はというと「指数連動型上場投資信託受益権等買入等基本要領」https://www.boj.or.jp/mopo/measures/term_cond/yoryo85.htm/ というのがあり、「基本要領」という意味では先ほどの「株式買入等基本要領」と同格であります。つまり現株の買い入れについてのルール(株式買入等基本要領)とETFの買い入れについてのルール(指数連動型上場投資信託受益権等買入等基本要領)が並列的に存在するわけで、個別株とETFとは別個のルールに服しますよ、ということです。
で、指数連動型上場投資信託受益権等買入等基本要領の中身を見ますと「7. 買入れた不動産投資法人投資口の議決権行使」という項目があります。そのタイトルの通り、REIT(不動産投資信託)の投資法人についての議決権行使を定めたものです。まあREITもそれなりに買ってますからね。ということでじゃあきっとETFの議決権行使に関するルールがあるだろうと思ってよく見たのですが、なんとこの「基本要領」中にはありません。ワタクシの調べ方が甘いかもしれないので、ご存じの方があればぜひ教えていただきたいのですが、規程の立てつけからみても、ここになければどこにもないと理解するのが自然だと思います。「株式買入等基本要領」には本件コラムの筆者が主張するような「議決権行使の方針」がくっついてきているので、指数連動型上場投資信託受益権等買入等基本要領にも同じような方針がくっついているのではないかと思って「指数連動型上場投資信託受益権等買入 議決権行使の方針」でググってみたのですが、不動産投資信託について以外はヒットせず、やはりないのかなと思いました。
ということは、ETFには本件コラムの筆者が書かれておられるような「議決権行使の指針」はETF(を構成する企業)については厳密に言えば適用範囲外ではないか、ということです。

ワタクシの調べが甘いのでなければ、ETFの構成株の発行会社に対する議決権行使の指針自体が存在せず、日銀としてはETF管理会社(あるいは運用会社)に完全にゆだねているか、あるいは別途何らかのガイドラインを出しているかだと思うのです。しかし後者であれば、世間に内密に行うことはあまり好ましいこととは言えず、やはり公表していない以上は「存在しない」と考えるのが自然ではないでしょうか。

最初に感じたワタクシの違和感はやはりその辺の食い違いから生じているのだろうと思います。もともと、日銀のETF大量買いによる最大の問題は、そもそも日銀が実質的な株主としての統制をできるのだろうか?ということではないでしょうか?ワタクシ個人的には、正直あまりガチガチその辺を詰めることはしたくなくて(その点ではこの大機小機の筆者と似ているのですが)企業経営は様々な歴史とか独自性があり、機械的な基準で(それこそ前回のエントリーで紹介したISSみたいに)ばっさり議決権行使の基準をつくってやるのもどうかと思うのですが、一方で今はアベノミクスのもとで金融庁主導でコーポレートガバナンスやアセットオーナーを含めた機関投資家のスチュワードシップが非常に強く推進され、それこそ官民挙げて議決権行使のルールや開示の仕方までこれまで以上に運用会社などに事実上枠をはめようとしているなかで、最大の大株主となりかねない日銀のほうでそのようなルールが定まっていないことや、もっといえば個別企業などとどのように対話していくかなどについて、運用会社などときちんと詰めることなくパッシブ運用をつうじて漫然と企業の株主となり、その是非はともかくアベノミクスがねらったガバナンス強化を通じた企業の稼ぐ力の復活と経済の再生というテーマにそぐわなくなっていることが問題なのだろうと思います。

今回退任される2名の審議委員のかたがこれまで反対してきたポイントの一つにETFの買い入れの量などがあるわけで、その辺の問題点を認識されてきたお二人が退任された後の日銀はますますそういう問題意識から遠ざかってしまうのではないか、という点についての懸念が大きいです。

話を最初に戻すと、やはり本日の大機小機の内容はそもそもの前提が違っているのではないかという疑いが強いですし、また問題点も「そこじゃないだろ」という感覚を強く持たざるを得ない内容でした。

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コメント(2件)

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現株、ETF、REITを個人で持っている場合で考えると簡単ですが、現株、REITは議決権行使書が送られてきますが、ETFは来ないんですよね。ETFでは議決権を行使するのは投信会社という立てつけなんでしょう。
Z
2017/07/21 13:34
Zさんコメントありがとうございます。
もともと日銀そのものが保有するというより信託を通じて保有するので形式的にはどちらにしても信託とか運用会社向けのガイドライン(指針)の問題となるでしょう。現株の場合は明らかに指針を作っているのに対し、ETFはその購入目的も含め多分いろいろ考えた結果として作らなかったのではと思っています。
厭債害債
2017/07/21 13:37

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