厭債害債(或は余は如何にして投機を愛したか)

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zoom RSS 仮想通貨ないし暗号通貨なるもの

<<   作成日時 : 2018/01/29 18:44   >>

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コインチェックのハッキングによる「仮想通貨」流出問題は、どういう結末になるのかなかなか想像がつきません。コインを失った人々に対する補償の問題とか、お金の出所とか興味は尽きないのですが、まあそれは事件処理として考えるとして、ワタクシとしては、この仮想通貨なり暗号通貨と言ったものの使われ方が現在歪んでいるとの思いを強く持っています。背景にある技術は多くの人が言うとおり確かに価値のあるものだとしても、その価値は投機対象とするにふさわしいかどうか?ということでそれについてはやはり違うと言わざるを得ないと思います。

そもそも「仮想通貨」という呼び名が妥当かどうか、「暗号通貨」というのが正しいのではないか、とかいろいろ議論がありますが、ほぼ共通しているのは現在のところ真の意味での「通貨」とはなり得ていない、ということです。
日本でこれほど盛り上がったのは逆説的ですが、金融庁がきちんと「仮想通貨」の法的位置づけを行っているからであるともいえます。

「資金決済に関する法律」では第3条に次のような定義がなされています。

「物品を購入し、若しくは借り受け、又は役務の提供を受ける場合に、これらの代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができ、かつ、不特定の者を相手方として購入及び売却を行うことができる財産的価値(電子機器その他の物に電子的方法により記録されているものに限り、本邦通貨及び外国通貨並びに通貨建資産を除く。次号において同じ。)であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの」

良く見ると細かい定義ではなく、結局のところ「電子的方法により記録され」ている「本邦通貨及び外国通貨並びに通貨建て資産」以外で、「代価の弁済のために不特定の者に対して使用することが出来」かつ「不特定の者を相手方として購入及び売却を行うことができる財産的価値」であれば全部ここに含まれるということです。

しかし、この定義は本来の通貨という概念からはすでに逸脱していると思います。通貨とはそもそも「(強制的に)通用する貨幣」ということであり、現在のところそういった「強制通用力」は全く担保されていない。一部のお店で使えると言ってもそれはモノ好きな店舗が面白がって自分処の商品との「交換」を認めているに過ぎないので、多分お店の側としてもこれを通貨の持つ一つの機能である「価値保管」機能を果たせるものだと思っていないから、真っ当な企業であれば受け取ってそのままにして大幅な価格変動のリスクにさらすようなことはしないと思います。つまり、今のところ真の意味での参加者は個人と取引所だけ、ということになります。

暗号通貨というのは、ワタクシも良くわかっているとは言い難いのですが、マイニングと呼ばれる作業によって行われる認証作業の価値が取引されるということだろうと思います。歴史上の通貨では古くは金とか銀とかそういうものに刻印して、その素材そのものの価値を表象するタイプの物から、ヤップ島の石貨(注)のように、石を切り出して加工して運んでくる苦労が価値に表象されるといったものがありますが、暗号通貨はむしろこのヤップ島の石貨に近いのではないかと思います。残念なことにヤップ島の石貨はまだ美術品的な価値があり贈答品として用いられてもいたようですが、暗号通貨は極端に言えば単なるネット上の記号であり、人間が見て愛でる価値はなさそうです。その意味で、私の中では暗号通貨の本源的価値というのは全く計測不能となっています。

もちろん、普通の国家が発行する通貨も、金本位制がなくなって管理通貨制度になっている以上本源的価値は?と言われるとちょっと困るんですが、それでも国家権力がしっかりしていれば、その「強制通用力」に価値を見出すことが出来ます。言い換えると、この手元にある1万円札は今日でも明日でもあるいは来年でも(多分)お店で1万円の価値のあるものに交換できる、そのことを日本の法律が保証している、これが価値だと思います。さらにいえば、この政府がジンバブエではなく日本国であるというところが重要で、いきなり無茶苦茶な政策(一部の人はすでにそうなっていると思っているかもしれませんが)で貨幣価値を大幅に減ずるようなことをして、この1万円札で来年は今500円の物しか買えなくなるかもしれない、といった不安をあおるような状況でないということが重要です。これが日本国通貨の本源的価値と言えるのだと思います。

ところが暗号通貨というのは、非常に価値の上げ下げが激しい。まさに500円の物が短期間で1万円になるということが平気で起こっている。あくまで今のところ、だけれども「強制通用力」も「安定」もないものを「通貨」と呼ぶわけにはいかない。というわけでワタクシのなかでは、暗号「通貨」なるものはまあ美術品みたいなものかな、と思っています。おそらく価格形成も、通常の通貨交換(為替)市場と違って多くの売りと買いがあって成り立つというより、少数の取引で一方的な方向付けがなされてしまうような市場ですから、かなりいびつなのだろうと思いますが、これも美術品だと思えば別に腹も立たないわけです。なんチャラのオークションで誰それの作品が、最後まで二人で競り合った結果何十億円という値段が付いた、まあそれと同列の話だろうと思います。この場合取引が成立したという意味でその何十億円という価格は「時価」であることには違いないけれど、たとえばほかの取引事例との比較で「公正な価格」かどうかは別問題かと思います。推理小説などで見かける場面があります。ある人物が膨大な財産を抱えて運んでいるらしい。それをわがものにしようと様々な勢力がその人物の命を狙う。結果的にその人物は殺されるが、その「膨大な財産」は見つからない。そこに探偵が登場して、実はその人物が持っている封筒に張られている「切手」が膨大な財産そのものであると気づく・・・。しかしこの場合も切手が好事家の間で高値で取引されているにせよ、そうした取引実態がなければただのわずかな額面の紙切れであるということです。ただこういう美術品系のものは「再生産ができない」という特徴があるので、まあ価値の保存対象としても可能ですが、暗号通貨の場合どんどん追加生産しているような気がするので、果たしてどうなんでしょう?


暗号通貨については、いろいろ疑問はあるものの、通説的には国家の制約を離れた価値認証技術としては非常に優れており、有用であるということです。ワタクシもだからこそ、この技術の最大の受益者は、圧政に苦しむ国や地域の支配下にある人々で、そうした人々が資産を権力者に吸い上げられないためのツールとして有効だろうと思っていました。また悪用サイドではマネーロンダリングに使える、ということ。こういったエリアでは間違いなく有用でしょう。

しかしながら、日本に住む人々で真っ当な生業にかかわる方は、あくまで今のところですが、この暗号通貨をいわゆる決済手段として持ったり使ったりする理由はあまりないと思います。多分今大きな人気を博し始めているのは、まあカジノ、パチンコといった賭博性射幸性の資金の受け皿として、あるいは時代の流れに乗り遅れないための試行的参加にとどまると思います。暗号通貨を買って大儲けした人がいることはおそらく事実でしょうが、それはヤップ島の石貨を買ったらそれがほかの人がオークションでせり上げてえらく高い値段がついてしまったため、いまいろいろな人がヤップ島以外で石貨をやたらに作り始めている状況だと思います。はっきり言いますが、単なる交換手段としてであれば石貨でなくてもいい。それこそ我々であれば5円玉でいいわけです。暗号通貨は現代の記号化された石貨であり、石貨と違うのは記号で表示されるため非常に優れた移転手段となり、記号化されており物理的なサイズが小さく秘密厳守も容易だという点だろうと思いますが、基本的に権力の裏付けによってもたらされる「強制通用力」「安定性」を欠くという点においては、美術品と何ら変わりない。

価値が既存通貨換算で大きく上昇している点は事実として素直に認めつつも、それが永続的なものとなるとはとても思えないのです。何よりも嫌なのは、こういう事件のように良くわからない力が働いて本来お金が流れてはいけないところにお金が流れてしまうことであります。
同時に、このような事件を起こすことが常態化しやすい商品であることがわかってしまった以上、金融庁という国家権力の監督下に置かれる運命は避けがたいわけで、そもそもの出発点の前提が狂うことになるのではないか、そしてその時この「仮想通貨」なるものの価値はどう収斂していくのか、結構見ものだと思っています。

あまり深く理解しないまま書いてしまいましたが、誤解に基づく点があればあらかじめお詫びいたします。

(注)Wikipediaより・・・ヤップ島の石貨(抜粋)
「石貨の由来や歴史ははっきりしていない。 形状は、おおむね円形(円盤形)で中央部に穴が開けてある。小さいものは直径30cmくらいで、普通は直径60cmから1m余り、大きいものになると直径3m、重さ5tほどにもなる。中央に穴を開けているのは、そこに丸太を差しこんでかつげるようにするためである。

この石貨となる結晶質石灰岩(大理石、アラゴナイト、炭酸カルシウム、霰石(あられいし))はヤップ島では産出せず、約500km離れたパラオから運ばれた。ヤップ人はカヌーの船団を組んでパラオに航海し、パラオ人との交渉を通じて石を採掘する許可を得た。石斧などで何か月もかけて石貨を切り出し、いかだに乗せて持ち帰った。これらの航海には危険が伴い、多くの者が亡くなった。その苦労度が高い石貨ほど値うちがあるものとされる。(以下略)」

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