某フラッグキャリアのこと

政府系金融機関から政府保証つきの緊急融資という事態にあいなりました。政府保証までして政府系金融が資金を出すということは、普通に資金調達が出来ないということです。今回の「緊急性」はワタクシの目にはGMに匹敵する状況と映ります。

日経の社説にもありましたが、一民間企業に政府が支援して金を出すという場合、まずその企業が国民生活上きわめて重要な役割を背負っていること、次に国民の税金をリスクにさらす以上、本来その企業がその支援の必要性が一時的であり最終的には損失をかぶらなくてもすむ蓋然性が高いこと、について説明責任を負うはず。最初の点については、たしかに地方交通や競争政策の観点から重要であることは疑いありません。しかし後者については、過去6年間のうち半分がネットの赤字で累積でも巨額の債務をかかえている企業ですし、高コスト体質の是正も図られず、環境問題や原油価格など外部環境に対してきわめて脆弱な体質を持っているので、支援が一時的ですむという蓋然性はかなり低いのではないかと思います。

高コスト体質については、あちこちで書かれているのであえて書きませんが、基本的には組合問題だと思っています。米国の航空会社は戦略的にチャプター11を使いながらコストを切り下げたりしています。日本でも労働コストの問題に手をつけないと、いつまでも改善はありえません。一方では現場の乗務員などにも過去に比べて労働が厳しいとか身分が不安定だとか不満は大きいようです。一回きれいにして(つまり日本流の再生型破綻をやって)労働関係をくくりなおしてはいかがでしょうか?とつい言いたくもなります。

こういう意見もありますが、世の中の見方は結構厳しいですよ。
http://www.jalcrew.jp/jca/healthy_management/20081001_rate_cutting.html
組合が給料カットに不平を言うのはまあ仕方ないとして、一応学識経験者と思しき人がこのような意味不明のロジックを立てるのはいかがなものでしょうか?(一応、今年も大赤字予想ですし大借金体質ですし、1~2年黒字になったからといって気を許せるかどうか普通の経営者なら誰でもわかりそうなものですが。「論理のすり替え」というタイトルはてっきりこのコメントそのもののことで意図的に摩り替えるにはこうするのだという見本だと思っていました。)。そしてこのようなロジックを堂々と乗せてしまうあたりやはりKYであるといわざるを得ないのです。大体において、昨年も大規模増資をやるときにも、大口株主にほとんど挨拶もなかったと聞いています。組合も組合なら経営者も経営者で、やはり全体としてKY組織になってしまっています。

すでに書いたように某航空会社は累積赤字(債務が増えているという意味で)企業ですが、いまだに高配当を続けています。赤字のときでも「株主優待券」は配っていますね。これが高配当となっています。この株主優待券、いま1枚6000円程度で金券ショップで売れるはずです。調べたら4000株持っている人の場合、年間6枚もらえるようです。株価が仮に180円として、4000株でコストは720000円。株主優待券を6枚換金したら36000円。これだけで時価ベース配当利回りは5%となります。自社製品のお菓子を配るのとはちょっとわけが違います。それはこれによって自社の収益を確実に毀損しているからです。これを普通の人が金券ショップで買って(当日でも買えますから)長距離便に乗るだけで、場合によっては片道2万円以上の節約になります。本来某航空会社が得べかりし利益が削られている。つまり、某航空会社は赤字であっても実質配当をし、さらに自社の収益を圧迫する行動に出ているということです。こういう行動がどうして認められるのか、不思議でなりません。優待券つけなければ株価がもっと下がる、というのであれば、それが実力なのです。株主優待を使う価格が実態ならば、そこまで値引きをして株主優待をやめるのが正しいと思います。まあこれは株主のガバナンスの問題なんですが、今回のように事実上公的資金が入った場合、配当やこうした株主優待は、国民の税金で本来責任を取るべき株主を優遇する形になりかねないため、論理的に成立しがたいはずです。

政府系金融による融資の話で、株価が妙に反発したりしているようですが、ワタクシの目にはとても奇異に映ります。政府の介入が必要なくらいの民間企業、しかも長期的な収益性の改善が「労働問題」によって見通しが立っていない企業の末路はまさにGMではありませんか?日本にとって重要な会社であることは認めます。だからこそ、これを機にきちんと説明の出来る経営をやってもらいたいと思います。一部政治家ややくざな投資家の圧力をきちんと跳ね除けて国民に道筋を示すことが、公的資金導入の大前提だと思うのです。金融システム救済とは異なり、競争政策という問題がなければ、なくなっても困らない企業です。ほかに飛行機は飛んでますから。だからこそ破綻という選択肢を前面に出して改善を進めてほしい。いまなら間に合うかもしれない。それができなければ、今後国民に余計な負担のかかることのないようにその場しのぎではない早期の敗戦処理が必要になっていると感じています。

この記事へのコメント

39歳無職
2009年06月24日 08:06
ナショナルフラッグと言えば聞こえは良いですけど、
別になくなっても全然構わないという、
私のような国民も多いのではないでしょうか?
別にシンガポールエアでもコリアンエアでも、BAでも何でも、安全に快適に目的地に行ければOKです。
こんな赤字の航空会社が、必要なお金をかけて整備を行えているのか?却って心配になったりもします。
一つの会社に8つでしたか?労働組合があるような会社は、どこかおかしいのでは?と思います。
こんな会社の救済のために、税金を投入されてはねえ・・・
元U
2009年06月24日 09:37
まるで「死ぬ死ぬ詐欺団」ですよね。
赤組の労働貴族ぶりを物語るエピソードに、調達する航空機の設計・装備について、標準的でないCA達の要求する仕様に変更させ、結果的に中古機市場での売却損を拡大させたという、リース業界では有名な話があります。

ただ、確かにご指摘のとおり労働組合が最大の問題だと思いまが、法的破綻の場合には、赤字路線の削減と地方空港のあり方も考える必要があるような気がします。
通行人
2009年06月24日 12:21
御説はその通りですが、何故、正論通りにならないでしょうか?
某フラッグキャリアーの後ろに、ノンバンクが並んでいる。
国土交通省の要請を受けて、某省が政府保証を付けた。それならと、某省の要請を経て、某省の保証を付けるという段取りになる。
そんな連想が浮かびます。

2009年06月28日 00:15
39歳無職さん、どうもです。航空行政上は依然として重要な企業ですが、おっしゃるようにほかの企業と競争できなければ話になりません。
元Uさんどうもです。個人的には極端に利用客が少ない地方路線は大手航空会社は飛行機を飛ばす必要がないと思っています。飛行機がどうしても必要なら自分で免許取って跳べば?というのがワタクシの意見です。
通行人さん、どうもです。この問題の利害関係は相当錯綜していて、一筋縄ではいかないですね。

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