外圧の使い方

S&Pが日本(国債)を格下げした。すでに1年前からネガティブウォッチになっていたので、それ自体はまったく予想外ではない。問題はなぜ「いま」か?ということだ。

ここから先は勝手な推測なので、気に入らない人は「このアホウめ」と思ってくれてもかまわない。間違っている可能性はかなり大きいけれど、ブログが自分の考えたことの記録であることを踏まえ、一応書き残しておきたい。

数日前にある政治家の方のお話を聴く機会があった。財務の専門家で野田大臣にも近いといわれる人だ。その方はIMFの報告書で日本の消費税の引き上げの必要性に触れられたことにふれ、「外圧」によって正しい方向に向かうこともある、ということをおっしゃっていた。

その言葉が耳に残っていたので、予算審議前の今回の格下げは、政権党としてマニフェスト云々よりきわめて喫緊の課題としての消費税論議の必要性をクローズアップさせる格好の「外圧」となったように感じた。

考えてみたら、日本の国債はほとんどが日本の金融機関によって保有されている。これまで財政の悪化が散々言われているにもかかわらずきちんと消化され金利も上がらないのはこのためだ。90年代の不良債権問題のときも格下げになったが、その後も国債の長期金利は傾向的に下がって2000年以降は一定の低位のレンジに収まってしまっている。おそらく格下げされたから国債を売りに出す機関投資家はまずいない。(投機的収益を狙う人は別)。
株式は、国債の格下げとは無関係だ。そもそもある国の企業の格付けがその国の国債の格付けを上限とするという考え(ソブリン・シーリング)はいまやとられていない。国を超えた高格付けの企業はあちこちに存在するし、国境を越えてダイナミックに活動する企業に国のシーリングはそもそも不適当だ。
そして、為替は、どうしてもこの格下げを材料にしたい人にとって、数少ない「売れる」物のひとつだ。投機的な人々が円を売ってくれれば円安になる。デフレが収まり、輸出企業の収益が改善し、株価にも好影響があり、経済成長にも寄与する。いいこと尽くめではないか?

同じ格下げでも、市場にインパクトのある形で行うには、このような膠着感のある地合いのときが効果的だった。もちろん市場が簡単に見切ってしまって円安効果そのものは長続きしないかもしれないけれど、少なくとも財務省や財政再建に軸足を移した政府にとって今回の格下げがもたらす悪い要素は少ないだろう。

陰謀論は(本当は好きだけれど)あまり格好良くないけれど、これが格付け会社を巻き込んだ「外圧」ごっこだったとしたら、なかなか上出来ではないか、と思ったりする。

あ、菅首相の「そういうことに疎い」発言もきっとお芝居だと思っております。ですよね・・・?首相!

この記事へのコメント

フレッツ
2011年01月27日 23:29
お芝居ではなく、本心で一定そうで怖いw
mikura
2011年01月28日 01:29
サブプライム証券にAAA付けてたS&Pが日本円建て国債の格下げですか。
アメリカ自身に利益があるのか、アメリカを使って消費税増税を目論んでるのか。

格下げについては2002年に財務省が反論してますね。
http://www.mof.go.jp/jouhou/kokusai/p140430.htm
(1)日・米など先進国の自国通貨建て国債のデフォルトは考えられない。デフォルトとして如何なる事態を想定しているのか。
(2)格付けは財政状態のみならず、広い経済全体の文脈、特に経済のファンダメンタルズを考慮し、総合的に判断されるべきである。例えば、以下の要素をどのように評価しているのか。
・マクロ的に見れば、日本は世界最大の貯蓄超過国
・その結果、国債はほとんど国内で極めて低金利で安定的に消化されている
・日本は世界最大の経常黒字国、債権国であり、外貨準備も世界最高

まあ財務省が黒幕だったらお笑いですが。
fundamentals
2011年01月28日 06:05
ありそうな話ですね。裏事情が明るみにでたら、ものすごいスキャンダルですが、、、。
1
2011年01月28日 07:41
閣僚が醜態を晒して円安に導くのは日本政府のお家芸のようですね。政権が変わった後も受け継がれているようで何よりです。
かる
2011年01月28日 22:40
さすがです。しかしマー時期だけに、たかだかワンノッチ下がっただけで大騒ぎとは。まだ同じAAですぞ。機関投資家様が投資不適格とされる水準までは、えーと相当の段階があるはずです。それも安定的だしね。そういえばJGBは中国はおろかボツワナ並みに下がった時期は、なんも騒がなかったマスコミが騒ぐ背景は、官僚さん得意のうますぎるマスコミリークのたまものですかね。
郵貯も斎藤さんだし、BOJも次は財務出身かな。みんすの大蔵シフト極まれりでしょうか。
通公認
2011年01月30日 20:52
むしろ、素で『疎い』発言をするであろう事を読みきった、財務省の能力に・・・(笑)。

誰が何を考え、どう行動しているのかには興味はありませんが、この流れ、すなわち既にレイムダック以下の存在に成り下がった政権が、景気悪化方面の政策だけはポンポンと決めていくであろう状況は、日本経済にとって大変によろしくない流れであろうなぁと思います。
2011年01月31日 03:09
フレッツさんどうもです。あちこちで紹介されているように以前菅さんが格付けについてコメントしていた形跡があり、全く疎いというのは本当はどうなのかな、と思っています。
mikuraさんどうもです。国債費増大というリスクを考えると、金利を上げることになるようなリスクを意図的に起こしてしまうのもちょっと考えづらいとも思ったりしたのですが、どうせ金利が上がらないと見切っているのなら大したものというか・・・
fundamentalsさんコメントありがとうございます。まあ勝手な推測ですので、はなし半分ぐらいで・・・
1さんコメントありがとうございます。事実としてはそういう傾向が続いているようですねぇ。まあエジプトなどの情勢で為替の要素は別物になってしまいましたが。
かるさんどうもです。どちらかといえばネット界隈での取り上げ方の方が最近は目立つぐらいですが、政権側でそれを利用しようとする感じがなんとなく感じられてしまったので。
通公認さん、どうもです。菅政権については意外にしぶといというのが印象です。小泉さんが実証したように首相をクビにするのは至難の業であることを踏まえている可能性はあります。確かに増税などはタイミングが悪いとはいえますが、中長期的な回復に必要なのは将来の「希望」の回復でありましょう。その意味でどこかでは税や社会保障に思い切った手を入れる必要があると思います。

通公認
2011年02月22日 13:13
僕は「希望」に頼れるほど楽観的じゃないなぁ。
長期は短期の積み重ねですから。

というか、タチ悪げな爺さんに限って年金についてブツブツ不安感を煽るので、「お前の分は俺が払ってやるから黙ってろ」とつい言ってしまう今日この頃。
2011年03月02日 00:43
通公認さん、どうもです。ワタクシとしては経済や景気というのは文字通り「気」の部分がある程度あると思っています。日本の場合、確かに希望に頼れるような人口動態でないことはありますが、それでも多少なりとも希望は持ち続けたいと思っています・・・と公式見解。

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