無害通航権

昔々、学生の頃「国際法」の講義をとりました。あの時の最大の衝撃的な学びは、国際法という成文法はなく、個別条約の積み重ねであること、国際社会には国際司法裁判所というものがあるが、管轄権受諾をしなければ裁判権に服しないということでした。つまり相当多くの事象が最後は「力によって決まる」という部分として残されている、という事実でした。それはともかく、「無害通航権」というのもちょっと勉強した記憶があります。

米国の軍艦が中国の「領海」を通過したという件は、まあ米中首脳会談の当然の帰結、という感じです。わざわざ米国に呼んでいろいろ国賓級のもてなしをして海洋問題についてゼロ回答では米国のメンツ丸つぶれですから、お返しに相手のメンツもつぶしにかかるという、国際政治の冷徹な一面が出ただけであります。もちろん今の段階では中国は手も足も出せないし、公式には米国は「無害通航権」のロジックで正当化しようとしているようで、まあ国際法上も特に問題はないという立場です。

http://jp.reuters.com/article/2015/10/27/south-china-sea-idJPKCN0SL2JL20151027

ただし、記事だけではよくわからなかったのですが、「無害通航権」の主張は逆にその地域を相手の「領海」とみなすことになるので、それは大丈夫なんでしょうか?人工島から12カイリ以内を領海と主張していること自体、そもそももともと岩礁でしかなかった部分をわざわざ埋め立てて人工島にしてしまっているわけで、もともと領土ではないとの懸念が高いなかで、その周辺を「領海」と認定することでいわば実効支配を既成事実化してしまうことにならないのか、という懸念を持ちました(勘違いかもしれません)。

もう一つは、無害通航権の定義上、軍艦が通過することは必ずしも無害であるという一致した解釈になっていないということです。基本的には無害の定義は領海内で余計なことをしないでさっさと通過するということに尽きるわけですが、船舶の外形を無害の定義に含めるという考え方もあるようで、明らかな軍事用船舶はそもそも無害ではないという考え方もあります。まあ中国にも弱みがありますからこの後裁判になることはなさそうですが。

なんにせよ、米国は今回、どのような言い方をするにせよ、力を見せつけた、ということです。今後日本がどのように絡んでいくかは未知数ですが、場所と当事者から見てももはや傍観者ではいられないことは明らかです。「戦争反対」とか「9条が」とかそういうレベルのナイーブな議論とはやや違う次元ですが、もはや現実はどんどん追い越してしまっているということを、我々は素直に受け入れなければならないのだと思います。

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