日銀のETF買い

29日の一面では「東証1部企業の4社に1社 公的マネー、筆頭株主に」という見出しで、大企業を中心に日銀やGPIFなどの公的資金が実質的な筆頭株主になっている企業が多くなっているという日経新聞の試算が示されている。

このブログでは何度か取り上げているが、公的資金が大株主になるということは全く問題ないとは言えないがまあそれ自体は結果としてありだと思う。問題は、今の時代株主と企業が協働して経済を盛り上げていくために日本再興計画など国策として示された、たとえばスチュワードシップコードの実効性などに疑問が出ることだろう。それは、結局こうした公的資金の日本株投資の大半がいわゆる「パッシブ」で占められていることによる。

もちろん、スチュワードシップはパッシブであろうとアクティブであろうと株主であれば同じレベルで行うことが理想である。しかしながら、実際の活動プロセスはパッシブであれば著しく形式的にならざるを得ないだろう。この結果いくつかの問題が生じる。

まず、パッシブの運用報酬は、特に公的資金やETFの受託については著しく安い。数ベーシス(一桁の低い方)という感じである。もちろん1000億ぐらい受託すれば数千万は貰えるが、たとえば日経225すべての銘柄に同じレベルで「対話」「ガバナンスの精査」「議決権行使上の問題点の精査」を行うことはその程度のフィーでは不可能だろう。おそらく一桁上のフィーが必要だろう。但し大手運用会社は多数のファンドを受託しているので、すべての受託金額を合わせれば不可能ではないかもしれないが、相対的に小さな(特色ある)運用会社は淘汰され、割と一方通行的な市場になりやすくなるのではないか。

次に、「パッシブ」である以上トラッキングエラー(ベンチマークに対する乖離度)を限りなくゼロにすることが理想である。個別銘柄は精査せず、したがってフィーは安い。もちろん、議決権行使などでその意思は表明するのだが、積極的に保有する意思がないのにパッシブホルダーが力を持ってしまっているという事実はいずれコーポレートガバナンスの面でマイナスに働いてしまう(企業の実態をよく見ないまま経営や企業行動に影響力を及ぼしてしまう)可能性があると思う。

更に、結果的に多くのパッシブファンドではアクティブファンドよりも対話や精査という点で「緩め」になってしまうことは否めない(いくつかの運用会社では、事実そうなっている模様)ため、本来日本再興戦略で描いたスチュワードシップ活動やコーポレートガバナンスの理想と同じ政権が主導した異次元緩和や公的年金のアロケーション変更とが結論において正面からぶつかる可能性もある。公的年金ではまだ委託会社に対するモニタリングを行うが、日銀はETFの信託銀行に対してそのようなことを行うのであろうか?実際モニタリングをやったとしても、その結果を投資判断に影響させることが出来るのだろうか?という疑問がある。

思うに、本来のゴールが「日本再興」だったとすると、資金供給は手段であり、よい企業がさらに活躍して日本の成長に寄与するというのがゴールである。手段がゴールと矛盾するのであれば、その手段に手を加えるしかない。パッシブ運用は、経済全体が成長して初めて意味がある。問題意識は、これまでのように自然に全体が成長するような社会ではなくなっているということなので、資金供給してパッシブ運用を増やさせるのは間違いであり、少なくとも日銀の資金で買うべきファンドは、きちんとしたプロセスを実行しているアクティブファンドのはずである。
資金供給とか需給だけで上げた株価はいずれ馬脚を現す。本当の企業価値や成長性に着目した資金供給が本来の政策趣旨ではなかったか?と改めて思う。

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