厭債害債(或は余は如何にして投機を愛したか)

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zoom RSS 日銀のETF保有の影響と出口戦略について(本日の日経「経済教室」を読んで)

<<   作成日時 : 2018/08/22 12:38   >>

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郡司先生が書いておられます。基本的には日銀のETF保有における出口を論ずるものであり、困難であるという点については共有できますが、内容についていくつか気になった点を挙げておきます。

1。日本企業のROA(総資産収益率)の変化を調べた結果として、日銀によるETF買い入れにより日経平均採用銘柄群の「利益」が低下したとしている点。私も厳密に検証したわけではないのですが、郡司先生が検証されておられたのはROA(総資産収益率)すなわち利益を総資産で割った数字であって、要因としては分子(利益)の減少と分母(総資産)の増加がある。この点について結果的にROAが低下したことを持って利益が落ちていると断定するのはちょっと尚早ではないか?分母すなわち資産のほうが(金融緩和効果で)伸びる、そういう企業群が日経平均採用銘柄に多かったのではないか?という反対側の検証が必要なように思います。「日銀が間接的な株主になることで企業のガバナンスに何らかの影響を与えたと考えるのが自然」というのもちょっと強引かつ短絡的な結論であり、直観とも異なります。それ以外の要因はいくらでも考えられるでしょう。

なお、本文記載の共同研究(多分要旨)はこちら
https://www1.doshisha.ac.jp/~msatake/009_miurakazuki-abstract_P2_2_1.pdf
ここでも「利益率」の変化が分子によるものか分母によるものかは正直はっきりと示されていません。そもそも日経平均構成企業の「利益」は当然きちんと開示されているので、「利益」が減っているという立論のために直接その利益の数字を用いずなぜROAを用いているのかがやや理解に苦しむところです。

2.出口戦略の案の一つとして「ETF売却と同時に同額の株式を信託銀行経由で買い上げ、これまで積極的に関与してこなかった株主総会で配当と賃金を引き上げるよう株主提案する」という風に書いてあります。このままのペースで行くと日銀が持ち分法対象とせざるを得ないような会社も出てくるようですが、それでもまだETFならオブラートにくるまれていたものが、信託経由の直接保有となると(日銀の経営決定権を事実上政府がすべて握っている以上)事実上の政府関係企業という取り扱いになるのです。まあETF経由でも同じであるからこそ、いま出口を問題にしたり日経平均からTOPIXにシフトして影響度を何とか弱めようとしているわけですが、ここでの株の直接引き受けは問題の解決にはならないでしょう。

しかも郡司先生は配当と賃金を同時にあげるという株主提案を勧めていますが、これは先生も認めておられるように利益相反、もっと言えば二律背反に近いので、ワタクシが仮に株主総会でこれを提案しろとかボスに言われたら、ちょっと悩むと思います。こんな事みんなの前で言ったら、よっぽどうまく合理的な説明が出来なければ、「あいつは頭がおかしい」といわれるのが関の山です。「賃上げ要求は企業にとってコスト要因だが、配当増額も要求すれば株価対策になる」って、賃上げ要求で利益率を落とす提案をしつつ配当増やせという提案は、やはりどうかと思いますよ。もちろん内部留保があるから、という言い方はできると思います。しかし、内部留保はそれをやればどんどん減るでしょうし継続的にできるわけではありません。つまり言っている内容がショートターミズムに堕した内容となってしまうわけで、その後引き続き日銀が株主でいることの意味が改めて求められることになるでしょう。

さらに日銀の株式買入等基本要領のほうの改正との絡みでの利益相反を問題として、こちらの同要領のほうを改正すべし、という提案をされていますが、今進めているスチュワードシップによるガバナンス改革の視点で、むしろそれを弱める方向というか、国策としては企業の「ROE」を上げるために株主ががりがりと企業側と対話しなさいということなので、大株主の日銀はそれこそ国策に従ってがりがりと配当を要求しそのために賃金を削らせるとか、逆にもっと大きな視点から国策に従って賃金をまずあげさせてインフレに寄与させ(目先の配当等は放棄して)、長期的に経済的利益を上げさせるようなスチュワードシップを行使するということになります。もしかしたら、郡司先生の言う「賃金上げ」と「配当UP」の同時実現をまさに政府が要求しているからこそ、こういう混乱した状況が生まれるのではないか、ということに改めて思いを馳せました。いずれにしても、この文章を読ませていただく限り、結論は日銀が大株主のまましばらくやりなさい、という、資本主義の根幹にもかかわりかねないかなり難しい話になります。

本日の経済教室を読ませていただいて、実は政府の方針そのものの中に結構矛盾を抱えているのだということが改めて認識できた点には感謝したいと思います。

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