厭債害債(或は余は如何にして投機を愛したか)

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zoom RSS ESG投資に変調?

<<   作成日時 : 2018/12/04 14:49  

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本日の日経新聞の囲み記事です。
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO38471340T01C18A2EN1000/

まあタバコとか火力発電とか特定のセクターや商品カテゴリーを狙い撃ちにしたダイベストメントはあまりうまくいきませんね。アメリカの一部年金基金でタバコのダイベストメントで大負けしているという話はまえから有名でした。

QUICKESG研究所さんの記事では、次のような記載があります。(2016.5.26)
https://www.esg.quick.co.jp/research/316
(引用)
「カリフォルニア州職員退職年金基金(CalPERS)は5月16日、現在実施しているタバコ産業からのダイベストメント(投融資引き揚げ及び投融資停止)を継続すると発表した。但し、タバコ産業からのダイベストメントのレビュースパンを6ヶ月から9ヶ月(ママ)に短縮する方針を示した。次回のタバコ産業大ベストメントのレビューは2017年に入ってから行われる見通し。

 カルパースにおけるダイベストメントが問題視されたのが今年4月。カルパースは現在、タバコ、武器、イラン、スーダンの分野でダイベストメントを実施しているが、理事会の場で、同基金のダイベストメント方針によって巨額の損失が発生していることが明らかとなっていた。理事会からの依頼を受け報告をまとめたコンサルティング企業Wilshire社によると、カルパースのダイベストメントによって2014年末までに80億米ドル(約8,800億円)の機会損失が発生。そのうちタバコ産業ダイベストメントによる機会損失は30億米ドル(約3,300億円)に上るという。理事会はその後1年から2年の時間をかけて、ダイベストメント方針の再検討を行うと発表。海外経済各紙は、これによってカルパースがタバコ産業へのダイベストメントを中止し、再びタバコ産業への投資を開始するのではないかと憶測を呼んでいた。

 今回の発表は、理事会が4月に示した再検討を受けてもの。1年から2年かけて再検討を行うとしていたが、わずか1ヶ月おいての発表という異例のスピードとなった。カルパースはタバコ産業へのダイベストメントを継続すると決めた理由について、受託者責任の観点からと説明したが、それ以上の内容は明らかにしていない。同時に、タバコ産業以外のダイベストメントに関しては、当初の予定通り1年から2年をかけて「損失閾値(Loss Threshold)基準」を定め、閾値に達した場合に自動的に見直しプロセスが開始されるルールを制定していく予定だ。」(引用おわり)
(下線は筆者)

ダイベストメントないしネガティブスクリーニングと呼ばれる手法は、文字通り、特定の投資対象からの投資引き揚げあるいは投資対象から除外するという手法で、もともとESGの源流にあるSRI(社会的責任投資)のバックボーンとしての宗教的思想に端を発しています。このような手法を大幅に入れてしまうと、そのような産業を含む株価指数たとえばS&P500などと異なる動きをしやすくなる、専門的に言えばトラッキングエラーが高まりますから、投資していないセクター主導で市場が上がっているときに大きく市場パフォーマンスに負け越すことが生まれます。まさにそういうことなんだろうなと(きっとタバコって儲かるんですよね)。だからそういう手法って本当は「大きく負ける覚悟」がないとできないはずなんですよね(もちろん勝つかもしれないけれどそれはまさにリスクなわけです)。その意味ではカルパースはそういうリスクテイクをした結果負けたということで、それが周りの賛同を得られなかったというだけでしょう。

いまの主流はESGインテグレーションといわれるもので、これまでの運用プロセスにESGの要素を組み込む。特に年金基金(一部過激なところは除きますが)は一般的に市場パフォーマンスに勝つことを求めるので、たとえば市場パフォーマンスを上回るという目的を捨てないままESGの要素を銘柄選択に組み込んでいくことになり、当然トラッキングエラーを押さえる方向に働きやすい。かりに個人的に許せないタバコであっても、法律的に禁止されていない以上、指数に与えるタバコ銘柄の影響が大きいのであれば、ウェイトを抑えるなどして入れる可能性はあると思います。石炭火力発電についても同様だと思います。

上記日経新聞の記事のトーンはカルパースさんがESGをやめてしまうという勢いで書かれていますが、カルパースさん自体は2022年までの5か年計画のなかで全投資にESGを考慮する事をすでに機関決定されています。
https://www.esg.quick.co.jp/research/374
(QUICKESG研究所のページより)

今回の理事の交代でそれが覆るわけではないと思いますので、ESG投資そのものに直ちに変調をきたすというよりは、上記のようなダイベストメントが年金基金的には(極端なパフォーマンスの悪化を伴ったがゆえに)「受託者責任」を果たしていないという風に見られかねないことへの対応だったのだと思います。

ちなみに米国ではご存じのとおりERISA法(Employee Retirement Income Security Act=従業員退職所得保障法)で基金などの善管注意義務あるいは受託者責任が明確に定められています。受託者責任とは、誤解を恐れずに一言でわかりやすく言えば、年金のお金を安定的に増やしていくことに対する基金や運用者の「他事考慮」の禁止、もっといえば、儲からないファクターにBETすることの禁止です。ESG要素の考慮はもともとこうした他事考慮にあたるのではないか、との疑問があったため、米国の年金は非常に慎重だったわけです(日本でもそうでした)。
ところが2015年にERISA法の解釈通達が改められて、これも端的に言えばESG要素の考慮が長期的にパフォーマンスに影響を与えうる、ことが明記されました。ここから一気に米国でもESG要素の取り込み(インテグレーション)が進んでいます。ESG要素の取り込みにお墨付きが出たわけですが、リターンを犠牲にしていいとまでは言われていないことに注意する必要があります。ESGそのものは受託者責任の範疇だとしても、その手法については、特定の思想や場合によってはちょっと過激な環境アクティビズムなどと結びつきやすいダイベストメントやネガティブスクリーニングに関しては、リターンを犠牲にするリスクが高いだけに、逆に受託者責任の面からの説明責任が強く求められるようになってきたということでしょう。




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