小説:フレアウィルス

20xx年、高齢化社会は来るところまで来た。日本では65歳以上の人口に占める割合は50%を超え、少子化もとどまるところはなかった。米国ですら、すでに人口はかなり前にピークアウトし、高齢化が進行していた。高齢者に対する医療の問題は世界的に共通の悩みであり、保険制度がある日本などは制度破綻の危機に瀕していた。米国でもメディケア制度が国家財政の足を大きく引っ張る状態が生まれていた。年金制度はかなり前に破綻しており、結局政府がかなりの部分を補てんせざるを得ない状況が続いてきた。

「このままでは、世界中の国が自然に滅亡していきます!!」暗い顔で某国の大統領補佐官が大統領に進言した。
「どうしようもないではないか、人として死にたくないという自然の感情はある。近代国家では人の命は何よりも重いのだ。老人だからと言って軽んじることは許されない。第一、今の人口構成で老人を軽んじていることが分かれば、次の選挙で(ゴホゴホ)」
「しかし本当はもっと先のことを考えて行うのが政治というものではないでしょうか?実は私に一つ考えがありまして」
「なんだね、言ってみなさい」
「老人に死んでもらいます」
「ブハー(コーヒーを吹く)またいきなりなりを言うのだね、気でも狂ったか?」
「もちろんいきなり処刑するのではありません。自然と病気で早く死ぬように仕向けるのです」
「そりゃ、老人人口比が改善すれば財政は改善するけれど、そんなことできないだろう。」
「老人だけが死亡しやすい、風邪のような病原菌があるんですよ。フレアウィルスっていうんですが、それをばらまけば、一定の結果は出ます。」
「お、おまえは何を言っているんだ。国民に対して病原菌をまくっていうのか?」
「いえ、もちろん自らそんなことはしませんよ。実は中国でその菌を細菌兵器として研究しているのです。工作員を使ってその菌をまずは中国の特定の地域で漏えいさせます」
「そんなことしたら、中国と戦争になるだろう」
「もちろんばれないようにですよ。で、中国で広まれば、ここまで国際交流が広がって、観光や貿易で中国人のプレゼンスが高まっているので、あっという間に我が国にも入ってきます」
「・・・」
「中国はいまだに専制国家ですから、強引に封じ込めようとするでしょうが、実は、香港で反中国デモが収拾がつかない状態で、そういう病気の蔓延が外出できない状態を生むことで終息するというのは、一つのメリットです。つまり中国の専制君主にとっても実はメリットがある。中国も実は見て見ぬふりをするはずです」
「なるほど」
「で、観光やビジネスを通じてすぐに我が国に菌が入ってきます。もちろん、人から人へと移るので、厳格なコントロールはできませんが、我々は事前に様々な情報を得ていて、どのようにすれば、大規模な感染爆発を防げるかの知見を持っています。大統領がそれを専門家集団の意見を聞きながらうまくコントロールしているかのように見せて、国民にリーダーシップを示すことができるのです。国家の人口構成の是正に加えて、大統領の支持率がアップします。次期再選は間違いありません」
「ちょっとまて、でも我が国の少子高齢化のうち高齢化は多少それで制御できても、少子のほうはどうにもならない。」
「大統領、今回の菌の特徴は、感染力が非常に強いことです。国民に対して、その感染力の強さを認識させれば、国民が最終的に外に出ないように強く説得することができます。しかもあらゆる娯楽イベントが中止に追い込まれます。テレビでもろくなイベントが放送されなくなります。残念ながら経済はちょっと犠牲になるでしょう。でもどうせ、金融緩和だけでむちゃくちゃに引っ張ってきただけの一種のバブル経済だから、どこか近いうちに限界が来るということはこれまで何度もお話しした通りで、たまたまこのイベントに引っ掛かれば、大統領の責任はなくなりますよ。」
「うむ」
「話を戻すと、娯楽がなくなったら、家でカップルがすることといえば・・・」
「あっ」
「多分、出生率は上がります。すぐにではないですが、われわれが再び、世界の覇権を握れる日も近いでしょう」
「そうだな・・」

その後、どのような対応がとられたのか、記録はそこで途切れていた。
(完)

(注意:本編はあくまで近未来的なフィクションであり、特定の状況を想定して作られたものではありません)

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 13

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い 面白い 面白い 面白い 面白い 面白い 面白い 面白い 面白い
ナイス ナイス

この記事へのコメント

2020年05月04日 22:30
「話を戻すと、娯楽がなくなったら、家でカップルがすることといえば・・・」
→DV→離婚、現実は甘くないですな