「コロナ時代の仕事論」


5月1日付日経新聞のコラムのタイトルです。一橋大学の楠木健教授が書いておられます。比較的短いコラムですが、久しぶりに首がもげるほどうなずいてしまいました。

副題は「他人と自分を比べない」。本当にこれ、大事だと思うんですよね。

詳しくは実際の新聞記事にあたっていただくとして、教授が指摘している現代的現象は「大人の幼児化」。ここに書かれたことは、ワタクシ自身が最近本当に仕事関係でよく感じることです。まず教授が「この10年ほどでよく使われるようになったフレーズ」として挙げておられた「イラッとする」という言葉。これが40前後の立派な社会人が仕事のうえで人に向かって使う場面を目撃し、これはワタクシも非常にショックを受けました。まさに「大人の幼児化」という「今の時代を悪い意味で象徴する言葉」だという点で全く同意です。

幼児性の中身として教授が3つ挙げられた点も、本当に思い当たるところというか実例が多いです。一つ目が「子供は身の回りのことがすべて自分の思い通りになるという前提で生きる」ということ。つまり自分の思い通りにならないことが生じたとき、すべて他人や環境のせいにしてしまうということです。ツイッターなど見ていても、世の中の「他罰的」な傾向が強くなってきている気がします。もちろん理不尽なことや不満に対して声をあげることは大事ですが、だんだんエスカレートして思い通りにならないのはすべて首相のせいだとか言ってしまう人もいます。まずは自分が至らないとか、力が不足しているとか、そういう振り返りや自分に対するきちんとした評価をせず、思い通りにならないのは周りがバカだからとか、自分のせいではないとか、そういう考えを持ってしまう人が少なからずいるという例をいやというほど見てきています。仕事でいえば、力を合わせて組織なりチームなりの目標を達成しようとするべきなのに、自分ができないのは(同じチームの)あいつが悪いとか平気で言って、自分の思い通りにならないことを人のせいにしてしまいます。見ていてあまり気持ちの良いものではありません。

二つ目で挙げられているのは、「本来は独立した個人の『好き嫌い』の問題を『良し悪し』にすり替えてわあわあ言う」ということです。これは、ある程度年齢が経過した50代ぐらいのベテランのほうにむしろ顕著です。それはなぜかというと、そういう人たちが一定の権力を持つことで、好き嫌いの問題を良し悪しの問題に容易に転嫁できる立場にあるからです。これは怖い。業績とか結果ですべてが測れるような業務はそれほど多くなくて、実際の仕事の多くは定性的な評価や判断が付きまといます。さらに言えばその「やり方」あるいは「意味付け」といったものについては、もっと個人の考え方が色濃く出るところです。一定の権力を持ってしまうと、「あいつは気に食わない」が「あいつのやり方は間違っている」に容易に転嫁してしまって、それが評価に反映してしまう。もっと行きすぎたらパワハラとかそういうところに行きついてしまう可能性すらあります。これを幼児性というのかはちょっと微妙かもしれませんが、やはり仕事の進め方とか効率化という意味では、ちょっと大人げないように周りからは見えてしまいます。

三つ目として挙げられていたのが、「大人の子どもは他人のことに関心を持ちすぎる」ということです。これも「あるある」ですね。仕事のチームを組んでいて、あるいはフローの中で関わるという意味で人の行動が影響してくるから、行動様式も含めて関心を持つ、場合によっては批判的になる、というのはまだわかります。しかし、現実に組織の中でよく聞こえてくるのは、全く違うラインの人間が別のラインの人間に対し「あいつは仕事をしないのに高い給料をもらっている」「あいつはこんな変な奴なのに高いポジションにいる」「あの人は日常生活でこんな変なことやっているらしい」とか、まあ人のことへの関心が強いことに本当に驚かされます。楠木教授も書かれている通りで「その人に関心があるというより、自分の不満や不足感の埋め合わせという面が大きい」のだと思います。どなたかが喝破したように、日本とは「嫉妬の文化」である、と思いますし、相対比較を非常に重視する文化だと思います。昔の人で、被差別部落が近所にあった人の話では、年寄りはよく「下見て暮らせ」とか口癖にしていたとか。要するに自分は非常に貧しくても、それより下の(被差別部落の)人々がいるから、それを見たらまだ自分たちはましだと思えるだろうから、我慢して暮らせという意味のようです。周りが自分より下だったら安心する、自分より上に対しては非常に嫉妬する。特に狭い社会や変化の少ない組織などでは起こりやすいと思います。

楠木教授のコラムは「コロナ時代の仕事論」というタイトルを超えて、一般的な我々の社会における問題点を指摘していますが、まさにコロナで働き方が劇的に変化している今こそ、少しそれを改めていくチャンスだと思います。幼児化している大人というその本人を責めてもたぶん治らない。人生そういう生き方で40年とか50年やってきた人が、他人から言われて生き方を改めないと思っています。それが変えられるのはまさに、仕事の流れややり方が変わって、それに合わせざるを得なくなったときではないかな、と思います。何よりも、このコラムの最後にあったように「他人を気にせず、自分と比べず、いい時も悪い時も自らの仕事と生活にきちんと向き合う」大人になることが、どれだけ自分にとっても心地の良いことか、それを実感できる時代だとしたら、コロナ時代の仕事も悪くはないと思います。

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この記事へのコメント

774
2020年05月02日 03:17
比べるべき相手は、昨日の/一ヶ月前の/一年前の自分。