「社会的格付け」なるもの


https://fairfinance.jp/

ちょっと前から上記のようなものがあったのですね。全く不勉強で知りませんでした。

ワタクシ的にはもともと「格付け」というものに対してはかつては個人的にはすごく苛立ちを覚えたものでして、信用格付け会社の「勝手格付け」というものが世間的にいろいろ物議を醸していたこともありますし、格付け情報の情報量を米国本社の意向とか言われて大幅に値上げされた時は怒り心頭でしたが、まあそれは置いておいて、この社会的格付けって、一応プロセスには企業との対話も入っているようですが、ちょっと違和感を覚えました。

第一に、若干卑怯といったら言い過ぎかもしれませんが、NGOさんたちが直接そういう環境や社会的な対応に問題のある企業に声を上げるならともかく、ワンクッション置いた投資家である銀行や保険会社に対する格付けを通じて圧力をかけようとしている点です。いいかえると金融系の企業がレピュテーションに対して比較的敏感な、いわば弱腰な業種であることを見越して圧力をかけている感じが否めない。本来ならばNGOなんだから問題のある企業があればダイレクトに切り込んでいけばいいのです。それをせずに銀行や保険会社をターゲットに格付けという手段を使って自分たちの目標を他力本願で(なおかつ上から目線に立てるやりかたで)実現しようとしているように見えてしまうのです。

二番目に、社会性というのは、この格付けの判断項目をみてみますと、かなり機械的である(これこれの規程を作っているとか)か定性判断に大きく依存する項目とかがほとんどなので、実効性というか本当にその企業の良しあしが図れるのかどうか、ちょっと疑問です。やはり「格付け」というのはその利用者がいてそれを利用して(自らリサーチを行う手間を省略して)経済的便益を得ることが目的であるはずなのですが、金融機関や保険会社に対しての社会的格付けを誰がどういうふうに利用するのか、その辺が非常にあいまいです。金融機関や保険会社については預金者なり保険契約者なり株主が最大のステークホルダーということになるのですが、主要な株主はスチュワードシップの趣旨にのっとって自ら調べたり運用機関を通じたりしてそれぞれについての意見をお持ちのはずです。また預金者や株主にとっては、自らの預託したお金が契約通りきちんと払われるのかどうかのほうがよほど重要であって、社会性については二の次となると思います。この社会性の格付けを利害関係者がどのように利用することが期待されているのか、その辺がどうも見えてこない。
株主となるだけの資金力がないNGOがまあこういう流れを利用して自らの理想に近づけようとしていくのは理解できますが、「格付け」というのはちょっと方向的にずれているのではないか、と思います。

第三に、格付けするというのはそれなりの説明責任を負うと思います。よそ様の企業にたいして格付けという形で優劣をつけることになります。レピュテーションにかかわる話をああだのこうだの言う場合にはその結果について説明責任がありますし、おそらく今後これがどこかで使われるようなことがあれば、その結果もたらされる経済的な帰結(株価の下落等)にも責任を負う可能性もあります。現在この格付けをわざわざ依頼している企業というのは寡聞にして知りませんが、勝手格付けだとしたら余計にその責任はあるでしょう。もちろん、雑誌などでも勝手にランク付けすることが多いですし、ビジネス系の週刊誌には毎回のように何かのランキング(大学、企業、金融機関のリスク度、倒産の可能性など)が掲載されています。まあこれについてもいろいろ問題はありますが、ただこうした記事は一応客観的な数値データを示したうえでの分類であり、投資家目線や当事者として一定の参考にはなるのです。しかしこの社会的格付けについては、そこまでの共通の納得考えられなさそうな気がします。

第四に、民間の信用格付けは一応ビジネスとして成り立っていますが、それは発行体企業と格付け会社、そして投資家のと間にまあ相互の利益の関係が成り立っているからです。発行体企業は高い格付けを得ることで信用力を一定の範囲で確認されているというお墨付きをもらえます。投資家サイドでも、すでに国の基準などにも格付けが組み入れられるなどで一定の格付け以上でなければ投資対象とならないケースも多く、それの一次的スクリーニングの役割を果たすことで、市場が一定の範囲で効率化できています。その作業の対価として格付け会社は一定のフィーを格付け依頼する企業から受け取ります。そして格付けプロセスの一環として企業と格付け会社との間のかなり突っ込んだ資料のやりとりやインタビューが行われる。なによりも、企業の支払い能力の優劣については一定の財務分析にかかわる数値が共通の認識としてあるので、まあ恣意性は大きくありません。
しかし、「社会性格付け」にはそこまでの機能は期待できません。あくまで企業活動のうち、NGOさんたちが興味を示す一定の項目だけを取り上げ、企業の信用や場合によっては本当の行動の良し悪しすら測れないかもしれない共通とは言えない基準で格付けを行う。そのような格付けになにか意味がありますかね?という疑問は当然でてきます。格付けの基準項目は一応公開されていますが、非常に細かいけれど、財務格付けと異なり、こういうのが客観的な「良し悪し」の基準として良いのかどうかは必ずしもコンセンサスができていないと思われ、その状況では格付けは一方的な意見表明を超えることはできないと思います。
(参考:保険会社格付け評価項目)
https://fairfinance.jp/media/494302/ffg_scoring2018_jp.pdf

とはいえ、信用格付け会社も最初割と「やんちゃな」人たちとみなされていたのが次第に社会のインフラ化してきて、きちんと金融監督の枠組みにも入ってきたのは時代の流れだと思います。もしかしたら、そのうちこうした「社会的格付け」もどこかで社会的な存在意義を確立するかもしれません。ただ、そのためにはまずはそれに取り組む団体がきちんとした納得感のある「格付け」をだし、それがどのようにステークホルダーにとって有用なのかその社会的意義を世間に納得してもらうこと、そしてなによりもまずは団体そのものが「信用できる主体」であることを少なくとも格付け対象としている企業さんやステークホルダーにに納得してもらう必要があります。今回日本で中心となる4つのNGOさんの中には、代表者やその組織すらHPで確認できないものもあります。そうした主体が大手銀行とか保険会社の「格付け」をつけしかも「公開」することには、現時点ではどうしても違和感を覚えてしまいます。

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