ソーシャルメディアと大統領


トランプ氏のツイッターなどのアカウント凍結が言論の自由との関係で議論されています。ワタクシなりの考えでは、そもそも私企業であるツイッターやフェースブックがこれほどまで公共財としてその存在を前提とした言論の自由が云々されるまでに増殖していること自体が問題なのだと思っています。ロンドンのハイドパークのスピーチコーナーやそれ以外の街頭デモなどでも今だって意思表示はできるけれど、今やあらゆる主体が知的レベルの高低や主義主張の正当性や反社会性などを問われることなく、内容の素晴らしさも醜さも一緒くたの状況でこういう場を使って発言を繰り返すことができる。そのこと自体が問題なのだと思います。

(ワタクシがツイッターをほとんどブログ更新通知にしか使わない理由はそこにあります。そういうところに加わりたくないということです)。

以前にも書いたことがありますが、もともとワタクシは情報の自由市場という概念を学生時代から支持しており、ツイッターなどが出てきたとき、ようやくそういう理想の世界に近づいたと思ったものでした。しかしながら、現実はこれはパンドラの箱。いろいろな人の罵りあい、いじめ、フカシ、自己顕示欲、扇動などがどうしても目立ち、人間の様々な醜さを目の当たりにすることが多くなってしまいました。本来であればそういったものは自由市場において淘汰されるべきものですが、ワタクシは人の良い部分を過大評価しすぎていたようです。そういった多くの醜いものが評価されてしまい、増長し、更なる害悪をもたらしてしまっています。

ワタクシ自身は情報の自由市場という概念そのものはまだ重要だと思っていますが、SNSという者に潜む特性と組み合わさったとき、それが非常な害悪に転じるリスクが顕在化したと思っています。

その特性の第一は「孤独との親和性」です。SNSの発信者も受信者もパソコンなりスマホなりに向かった状態で受信と発信を行う。これらのツールは基本的に「おひとり様」です。本来の情報の自由市場とは、多くの人が集まってワイワイガヤガヤ言いながら自由に議論していくそういう場であり、自由な批判と納得という結論が予定されている。ところが孤独と親和的なSNSでは、そういう場ではなく孤独な独りよがりの発信がいくらでもできる。これが第一の問題です。普通に発信するならこれほどまで過激で突拍子もないことを大統領(候補者時代も含め)としてはなかなか言えないはずが、何の抑制もなくトランプ氏が発信できるこういうソーシャルメディアの問題点といえます。

もう一つは「排他性」です。お互いに言いっぱなしができ、いざとなったらブロックとか自分の世界に引きこもることができる。同時に、異質なものをブロックなどで排除し、自分の意見と親和的なものだけで党派を組むことができる。これが通常の議論の場との大きな違いであると思います。つまり結果的に、情報の自由市場のように見えて実際は、それぞれが自分たちの意見で凝り固まる党派性を強めるだけのものとなりがちです。これまで以上に異質なものを排除する傾向がSNSにはあるのではないかと思います。結果的にこうした特性が一部トランプ支持者などを含めた、批判に耳を貸さないカルト的な集団を生みやすく、その先の突拍子もない行動に歯止めが効かなくなる要因となっていると思います。

ワタクシは上に書いたような理由で、ツイッターは原則的には自分のブログで新しい記事を書いたときに通知するだけにとどめています。ツイッター上での意見のやり取りは有益な場合も多いと思いますが、一つ間違うとどんどん過激になっていって最後はお互いのの知り合いのブロック合戦という結末になっているような事例も見受けます。またこれは実例としてですが、かつてブログを拝見し真っ当な金融の分析を行っていたような人が、ツイッター上ではどんどん発言などが過激化し攻撃的な言葉を多数発するようになって、さすがに見るのがつらくてフォローをはずしてしまったことがあります。なんか不幸ですよね。

言論の自由との関係でいえば、実はソーシャルメディアのビジネスモデルそのものが非常に危険な特性を持っていると言えます。妙な広告収入などに依存し、発言者の属性を問わずに有象無象にも自由に発信させているその仕組みに問題があるのではないか。トランプ大統領の言論の自由の話にもどれば、そもそも米国大統領がこういったメディアを通じて発信することの異様さこそ改めて検討の対象とすべきだったのです。(アメリカの大統領なのだから、重要な情報は記者会見を開いて、質疑応答を経たうえで、きちんと語り掛けるべきだったのです。)勿論、トランプさんの側ではツイッターでのメッセージが公式であると主張するかもしれませんが、こういう手の加わりやすい偏った扇動しやすいメディア、つまりその発言に即時的に有象無象がリアクションを表現できるようなメディアはアメリカ大統領の発言の場としてはふさわしくなかった、というところに尽きるのではないかと思います。

ツイッター社がアカウントを凍結したのはその意味では正しいと思っています。「大統領、あなたのような影響力のある方の来るところではない」と。手遅れの感はありますがね。米国大統領は、実は言論の自由を「行使」する側ではなく「保護」する側なのです。上院を押さえていれば憲法の守護者である最高裁判所の判事を実質的に任命できる立場であり、すなわち権利を行使する立場である以上に米国憲法の最高の守護者でなければならない。そういう立場で言論の自由との関係をとらえるべきなのです。ツイッターに参戦するのは、そういう立場を忘れ民間の主催するフォーラムで有象無象と言い争うレベルの大統領であるということに自らを貶めていたことにほかなりません。このことこそがトランプ大統領のアカウント凍結問題のキモではないか、と思います。メルケル首相が、おっしゃっていたことも、こういう状況(いろいろ本来政府が表現の自由との関係でルールを示すべきなのにそれを民間SNSの自主規制にゆだねていること)において、大統領がそこにのこのこ一人の参加者として参加していたことの問題点を指摘したものだと理解しています。

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