厭債害債(或は余は如何にして投機を愛したか)

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zoom RSS 円安の功罪と金融政策、そのほか考えた事

<<   作成日時 : 2007/01/28 09:54   >>

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今日の朝日新聞の「補助線」というコラムで山田編集委員が利上げ論を打っている。理由の一つは円安の弊害、二つ目は金利収入を低いままにしておいては所得が伸びず消費が振るわない、という事である。政策決定会合の前の週末の観測記事が思い切り外れた事への腹いせで書いていない事を祈る。

1990年ぐらいから2004年ぐらいまでの日米金利差と円ドル相場を見てみると、3ヶ月LIBOR金利(つまり多少の金利先行きの予想が織り込まれた金利)の差が4%以上あればほとんどの場合円安傾向である。この例外はこの期間において3回程度しかない。更に言えば金利差の方向性と為替相場はほとんど関係がない。つまり金利差が縮小傾向にあるときでも円高にはならないし逆に拡大傾向にあるときでも円安傾向になっているとはいえない。ところが、2004年からは金利差拡大と円安がかなりリンクしている。

私はいよいよ日本の資産におけるホームバイアスが減少し始めたのではないかという印象を受けている。ホームバイアスというのは資産選好において自国通貨建て資産が選好されやすい傾向であり、資本輸出国(債権国)日本にとって民間貯蓄1500兆円のバイアスが少なくなることは、金利差がアロケーション判断に利いてくるということになるだろう。その意味ではもしかしたら金利引き上げが円安を防ぐ効果はあったかもしれない。しかし、逆に金利差が4%以下になるためには日本の金利があと1%近く上がらなければならない。米国では景気の底打ち感からむしろ金利上昇懸念が出始めているなかで、日本の金利操作だけで円安が止められると思うのはチョッとナイーブすぎないだろうか。

金利収入と消費の観点は、たしかに日銀の研究所から出た報告書内閣府経済社会総合研究所が1月に発表した「短期日本経済マクロ計量モデル(2006年版)の構造と乗数分析」では金利上昇が消費には当面(せいぜい2年)プラスの効果があると定量的に分析している。しかし同じ報告書は同時に、GDPにはマイナスだという定量分析も行っている。つまり金利を上げると短期的には消費が上向くが、景気全体にはそれ以上のマイナス効果がある(つまり企業の減益など)ということである。(もしかしたら他の研究レポートがあるかもしれないが、不勉強で見ていません)。

直感的にも金利が上がって喜ぶのはホームバイアスばりばりの年寄りだけである。円資産に大量の資金を滞留させている年寄りが、わずかの金利上昇で多少お金が増えてもどうせまた溜め込むのがオチだし、決して波及効果の高いようなものを積極的に買うわけではない。逆に若年層が企業の締め付けでお給料が絞られ、あるいは雇用機会が減らされる可能性のほうが高いような気がしている。

金融的にも短期金利の引き上げは今のマーケット環境であれば銀行の利ざやを縮小する方向に向かいやすい。諸外国のカーブがフラット化してしまった中で、日本のイールドカーブが相当スティープであるが、これは今後長期金利資産への選好が進むなかでフラット化すると言う見通しが未だに強いからだ。こないだの利上げ騒動でもわかるように、利上げしない方がカーブが立って、金融機関には収益機会が増す。その結果社会にはお金が回りやすくなる。

金融政策の限界、というかそもそも日本の社会が金融政策だけでどうしようもない所に来てしまっているという事を素直に認めるべきではないかと思う。その意味で成長路線をとる安部政権は正しい。ただ、安部政権のやっている事があまりにポピュリスト的で場当たり的であることが問題なのだ。

金利の正常化ということについても、今の長期的な日本の見通しのもとでどのレベルが正常かという議論ができる人は多くない。まずは日本の社会を変えてから金利を議論すべきだろう。それまでは残念だが日銀には低金利を続けてもらうしかない。

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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
円安で唯一気がかりなのが「ホームバイアス」との関係ですね。強過ぎたバイアスの正常化なのか、それともマネーのアウトフローの序章なのか。後者だと、その可能性はかなり小さいと思いますが、キャピタルフライトにつながるリスクもあり、その場合は金融政策の出番(ただし通貨防衛)ですが、あまり想像したくないです。
本石町日記
2007/02/05 21:36
残念ながら、キャピタルフライトの可能性は排除できませんね。元本が完全に戻ることを期待しない外債ファンド投資が多いのですから。やはり人口問題とそれに端を発する将来の低成長見通しが根源にありそうな気がします。ファンダメンタルズを無視して一時的に金利を上げて解決する問題とは思えません。まったく、想像したくない未来図ですが。
厭債害債
2007/02/06 06:25
金利を段階的に引き上げると
1)消費拡大
2)アセットバブルの予防
3)交易条件改善
4)ゾンビ企業の退出促進
が期待できる。よいことづくめ。
輸出主導の景気にブレーキをかけるのはわずかな利上げではなく、中国経済の減速であろう。
maha-rao
2007/05/14 16:22
maha-raoさん、昔のエントリーですのにコメントありがとうございます。おっしゃるように中国経済の減速は景気には効いてくるでしょうね。
一方金利引き上げの効果は本文でも書いたように、全体として中長期には消費にもマイナスですし経済成長にはマイナスとなるという研究のほうが一般的かと思います。まあバブルを日銀が意識していることには異論の余地はありませんから、実際それにしたがって利上げするということなのでしょうけれど。ゾンビ企業という表現、10年ぶりぐらいに聞きました。さすがにこれにふさわしい企業は某元国営航空ぐらいでしょうか?
厭債害債
2007/05/15 01:13

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