厭債害債(或は余は如何にして投機を愛したか)

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zoom RSS 欧州カバードボンドの混乱(追記あり)

<<   作成日時 : 2007/11/22 10:10   >>

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かなり問題となりそうな決定が欧州のとある債券の業者および発行体の協会の委員会で行われました。かなりひどいことになりそうです。
http://ecbc.hypo.org/content/default.asp?PageID=316
(直接のリンクがうまくいかないのでここの11月21日のところをクリックしてみてください。)

ここに書いてある内容は、ECBCという欧州のカバードボンド協会が業者間取引の値つけを来週の月曜日まで中止(サスペンド)することを各業者に勧告するというものです。勧告ではありますが、当然各業者はそれに従うものと考えられます。

カバードボンドというのは欧州で発達した資産担保証券と考えていただいていいのですが、政府や地方公共団体向けの債権をバックにしたいわゆる公共債ファンドブリーフというタイプと住宅ローンなどを担保にした抵当ファンドブリーフというのがあります。この意味で抵当ファンドブリーフというのはアメリカの住宅ローン担保債券に似たような性質を持ちますが、担保掛目の基準など欧州のほうが厳しいといわれていたうえ、法律(だったと思いますが)業界自主ルールにより業者には顧客との間でつねにツーウェイの価格を提示する義務があるとされており、流動性が担保されていると理解され、その意味でこれまでそれほど心配されていなかった分野です。

ところが、業者間取引が出来なくなった場合、顧客から取引を持ち込まれた業者はその取引の価格変動リスクを他の業者に転嫁することが出来ません。債券市場というのは売りたい人と買いたい人がまったく違うところにいて、それを多くの業者が個別のネットワークで注文を受け、業者間の取引を通じて需要と供給を一致させる仕組みになっています。この点市場で板を寄せてやるやり方とは根本的に異なります。
今回この業者間取引がなくなったことは、市場がなくなったことを意味します。いくら業者が顧客に対して取引に応じる義務があるとしても、その提示する値段はとんでもないものになってしまうのです。なぜなら業者は取引に応じることで自分でまるまる価格変動リスクを抱えるわけですから。

今回は期間限定だから大きな影響がないとこの協会の方々は思っていたのかもしれません。しかし、今回のサブプライム問題の本当の問題点は仕組み商品の「価格発見機能」の喪失にあると以前書きました。市場をなくすということは、まさに価格発見機能をなくすということです。おおげさでなく、これはカバードボンドが一時的にせよサブプライムCDOと同じ状況になっているということなのです。

今回の措置はやはりアメリカ発の問題によるものです。カバードボンドの仕組みは欧州で発達したのですが、米国でも取り入れられ、実はかのカントリーワイドやワシントンミューチュアルが発行体となっています。今回ワシントンミューチュアルが例の担保価値水増し疑惑でたたかれてしまい、カバードボンドの取引が機能不全に陥ったようです。そしてその結果がカバードボンド全体に恐怖の連鎖となって波及していったのだろうと思います。
http://www.hypo.org/DocShareNoFrame/docs/2/DNDNKEFCLBEJGDDFGAJBHPGGPDB39DBYEKTE4Q/EMF/Docs/DLS/2007-00264.pdf

詳しい背景はこれから調べますが、高々数日取引を停止してどれだけの落ち着きが回復できるというのでしょうか?そもそも一旦信頼を失った(価格発見機能を失ったとみなされた)市場に改めて人々が参加するでしょうか?その意味で、かの協会の決定はこの時期「最悪」であったといえるでしょう。

ちなみに、この種類の債券も殆どトリプルAです。さらに悪いのは顧客との関係では業者が取引に応じる義務があるということで、極端なことを言えば数十パーセントのディスカウントで取引実例が生じる可能性があります。ここでもトリプルAが大幅な評価減に見舞われる可能性が出てきました。

(追記)
これまでもクリスマスをはさむ年末の3週間ほどは業者間マーケットメークをしない慣行があったそうです。またノーザンロックの取り付け騒ぎのときもイギリスの業者がビッドを出さなかったようです。しかし、今回の状況は明らかにそれらの状況とは異なっているような気がします。

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これ債券市場における広義のシステミックリスクのお話とみることも可能なのでしょうか?(^^;)・・・厭...
このエントリーは公開時刻自動設定機能によりエントリーしており生ます。 まあ、タイ ...続きを見る
法務の国のろじゃあ
2007/11/22 20:28
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コメント(2件)

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こんにちは、ろじゃあです。
エントリー拝読しました。
これ、外電とかで既に出ているんでしょうか。
思わずろじゃあは訳も分らず備忘録としてエントリー書いてしまったんですが、取り急ぎ混乱を回避するための対応だったのですね。
反応はどうだったのか興味がございます。
そうか、26日以降でないと判らないのか(爆)。
また勉強させてくださいませ。
ろじゃあ
2007/11/22 20:33
ろじゃぁさま、コメントありがとうございます。外電などで取り上げられたかどうかあまり定かではないのですが、取引先の方とはひとしきりこの話題で盛り上がりました。たまたま来週発行体のうちの1社の上のほうの人とミーティング予定があるので、つめてみたいと思います。
とりあえず欧州は落ち着いた対応を見せているようですね。しかし元々WaMuの担保価値水増し疑惑に端を発しているだけに、この部分が解決されないと最終的には落ち着かないのでは?と危惧しています。長引けば確実にセンチメントを悪くするでしょう。
厭債害債
2007/11/24 14:12

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