厭債害債(或は余は如何にして投機を愛したか)

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zoom RSS Rogue Trader(詐欺師トレーダー)

<<   作成日時 : 2008/01/25 13:24   >>

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かつてベアリングブラザーズシンガポールを舞台に手張りで大損をこいたニック・リーソンが書いたものを基にした映画がありました。あの時(1995年)円換算で1500億円程度損失を出し、ベアリング社は100年にもわたる歴史を閉じることになった。一人の男が伝統ある会社をあっという間に潰してしまったということで話題になりました。昨日はフランスを代表する大銀行であるソシエテジェネラル銀行で同様の事件が発生し、円換算7700億円相当の損失が出たということです。ソシエテジェネラルの自己資本の額からすればすぐにどうこうなるというものでもないのですが、今回の事件は色々と根が深そうに思います。

まず、これが一人のトレーダーの詐欺によって行われてきたという会社側の発表です。今回は株の先物による損失が中心だったということですが、ここまで損失が拡大するまでに通常はマージンコール(追証)が発生するのではないか、ということで本当に一人で隠しおおせるのか?という疑問が当然わきます。このトレーダーはコンピューターにやたら詳しいと言われていますが、そうだとしても市場で取引されている先物の追証には現金や有価証券、等価物の差し入れが必要となるはずで、相手先のシステムまでだまさないと成立しないのではないかと思います。もちろん自分の会社のなかだけでもごまかしていればこうやってしばらくは隠し続けることが出来たのでしょうけれど、ほんとうにそうですかねぇ、というのが素直な疑問。組織的隠蔽がされていたなら、銀行そのものがただではすまないとおもいます。

ニック・リーソンのときもそうだったかもしれないし、あるいはNY大和銀行の時(1995年:米国債取引で950億円相当の損失)そうですが、取引を確認し決済するバックオフィスと取引を執行するフロントオフィスが一緒だと不正が起こりやすいのです。それゆえまともな金融機関だとそれをしっかり分けてお互いにけん制しあう仕組みになっていなければなりません。詳しいことはわかりませんが、コンピューターの仕組みを操作してそういう取引確認の流れまで自分の手元においていたとしたら、過去20年近くの間防止策が全く機能していなかったということです。今回はその辺をどうやって隠蔽してきたのか、興味のあるところです。もちろん上層部が関与してしまえばなんでもありになってしまう。

もう一つの問題は、会社としてこれほどまで大きな問題に気づいたとき公表する前にポジション解消のための取引を大規模に市場で行っているということです。おそらく法律的には問題がないのでしょうけれどおかれている立場からしてどうなのかなぁと思います。たとえばこれだけの大銀行ですから欧州株の指数にもそれなりのウェイトを占めているはずですが、こういう重要事項の発表前に市場に大きな影響があるようなやり方で指数の先物を売る、ということが業界の倫理として正当化されるかどうか、です。ではどうしたらいいのかといわれるかもしれない。たしかに当該企業にとっては損失を拡大させないためにはそれしか方法がない、と言わざるを得ないようにおもえます。しかし一方で個別株のインサイダー取引として刑事罰を食らう可能性のあるケースを想定すると、その会社の経営者が会社の業績に極端な影響が出る話を聞いてしまったあと、自分の唯一の財産である自社株を発表前に売ればやはりインサイダーとして罰せられる。この場合その経営者は刑務所に行くのがいやなら無一文になることを甘受するしかない。実は今回のケースもルールとしてはそうだったのかもしれない、という気もします。

今回の先物の処分売りが欧州株の暴落を招き、それにあわてたFEDが緊急利下げに走った、という見方もあります。http://www.ft.com/cms/s/0/5533cf5c-cab6-11dc-a960-000077b07658.html

もしそうだとしたら、政策まで誤らせた(あるいは正解に後押しした?)のかもしれない。いずれにしても、「市場の効率性」に疑問符をつける新たな事例といえましょう。

なお、余談ですが、今回の銀行のトレーダー氏はまだブルンバーグ上で顔写真入りでさらし者(ご丁寧にすでにEx-Traderという肩書き)になっています(きっと会社が意図的にやっているのだろうと思いますが)。驚いたことにニック・リーソン氏も某サッカークラブの役員としてブルンバーグに顔写真入りでダイレクトリーに入っています。個人でトレードをやっていらっしゃるようです。ご興味のある方はお早めに。

大和銀行のときも、ベアリングのときも張本人は服役中とか後に本を書かれ結構ベストセラーになりました。今回もそういうことなのかなぁ…あまり脈絡はないのですが「一人を殺せば殺人者だが百万人を殺せば英雄」とかいうチャップリンの「殺人狂時代」のせりふが頭に浮かびました。

(追記)
さる方からこんなWikiサイトを教えていただきました。感謝です。
http://en.wikipedia.org/wiki/List_of_trading_losses


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内 容 ニックネーム/日時
 害債さんは「解消→発表」の順番を問題視されているのですよね?「発表→(多分追加下げ)→解消」だとさらに損が増した可能性が高かったところを、未公表の事実を隠して売買した(擬似インサイダー)、という理由で。
 頭の体操みたいなマゼッカエシですが、逆に、例えば彼の持っていたのが売りポジションで、「発表→(追加下げが生じて収益)→後に買い戻し解消」を選んだとしたら、それは当然なんですかね?重要情報はまず公開、という、インサイダー的議論で行けば正しいのかもしれませんが、なんだかこっちの方が悪質なような気がしません?
 
元IB現PB
2008/01/25 14:34
売りポジションを過大に持っていたなら利益が出ていたはずで、そもそもほめられこそすれ発表という話にもならないように思えます、というのは答えになっていないともいえますが、でもそういうことなんじゃないかな、と思います。つまり発表というのはポジションに不利益が生じているからこそ起こるのであり、それを解消するのはもっとコストがかかることが明白である、だからインサイダー的な問題があるのだろうと思ったのですが。
厭債害債
2008/01/25 15:09
おそらく不正自体は常にあり、それが損失につながった時のみ公になっているのだと思います。つまり大きな相場の転換点、特にみんなが儲けたあとの反対相場の時に発覚しやすいものなのではないでしょうか。今回の株安でFEDをはじめとして世界中か混乱し、まあ過ぎてみればそういうことかと思いますが、おそらくこういった巨額損失発覚自体、景気後退局面に現れるサインなのではないかと考えます。
不正は常にある
2008/01/25 23:58
個人的にはスケープゴートにされたと見てますが。東京でも一部影響があったみたいですけど、大勢に影響はない模様。損の公表のタイミングは結局、「ボードは損失を最小限に留めるために努力する義務がある」とすると、公表前にロスカットは自然ではないでしょうか。ただ、自社株が含まれるインデックスは?といわれると、微妙ですね、、。普通はインデックス取引は”市場の”指数ですからいいといわれますが、その株が大きなウエイトを占める指数となると、、、。
ttori
2008/01/26 09:35
個人的にはスケープゴートにされたと見てますが。東京でも一部影響があったみたいですけど、大勢に影響はない模様。損の公表のタイミングは結局、「ボードは損失を最小限に留めるために努力する義務がある」とすると、公表前にロスカットは自然ではないでしょうか。ただ、自社株が含まれるインデックスは?といわれると、微妙ですね、、。普通はインデックス取引は”市場の”指数ですからいいといわれますが、その株が大きなウエイトを占める指数となると、、、。
ttori
2008/01/26 09:35
ttoriさんどうもです。おっしゃるとおり、経営的には当然の判断でしょうし、違法でなければまあそうすることになるのでしょう。ただ、なんとなく釈然としなかったので書いてみたのですが、インデックスに入っている以上自社株を売っているのと同じだというしかないとは思っています。
厭債害債
2008/01/27 02:33
不正は常にある、さん、コメントありがとうございます。ご指摘の点、全く同感です。
厭債害債
2008/01/27 02:34
ということで、昔は単純に決算期で、どっちかてじまって益だしなんてやって、次であたらなければ、倍倍ゲームでいつか当たるだろうなんてやって最後に「おっぱピー」なんてやってたんだよね。昔はすっぴんでやってたけど、今では、デリバでお化粧し放題だからなー多分相当なやつでなければ、こいつはブスで年増なんてわかんねーだろー。
朝起きたら男だってか。
両建て野郎
2008/02/08 01:31
両建て野郎さん、コメントありがとうございます。昔よりもすぐにわかりづらい状況であることは間違いありません。ただ、昔ながらの定性判断でわかる人にはわかるようです。
厭債害債
2008/02/08 22:37

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