厭債害債(或は余は如何にして投機を愛したか)

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zoom RSS 「リスク限定型」ファンドですって?

<<   作成日時 : 2008/01/11 18:09   >>

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日経平均プットオプションのノックインの売りを組み込んでクーポンをかさ上げしている商品のどこが「リスク限定型」なんでしょ?まあこの話は何年も前からでていることなんですけれど、いまだに存在していたんですねぇ。

今日の日本の株式市場は前日NYが結構金融株を中心に上昇して引けたにもかかわらず大幅な下落となりましたが、もっぱらこういうオプションにからんだ動きであると見られていたようです。

オプションとは一定の行使価格(ストライクプライス)である原資産を買うまたは売ることが出来る権利といえます。日経平均のプットオプションのノックイン(例えばノックイン価格14231円)というのは、そのノックイン価格に達した瞬間にある行使価格(たとえばそのオプション取引がされたときの20%下とか決めてある=今回の場合は17789円のときの20%下が14231円)のプットオプションが発生するのです。日経リンク債ないしリスク限定型ファンドの投資家はこのオプションを売ることで利率をかさ上げしているのですが、このノックインプライスに達した瞬間に、有体に言えばリンク債を販売した業者などが投資家に対して日経平均を17789円で売る権利を持つことになります。すなわち投資家は一旦20%のロスが生じる(厳密に言えばオプションの時価評価を含めると日経平均の下落や予想変動率の増大によってリンク債などの評価はすでに落ちていたはずですが)のです。で、しかもその後は日経平均の上下に沿って償還額が変わるので、戻る可能性もあるとはいえ下方リスクは(細かい取り決めにもよりますが多くの場合)限定されていないとおもいます。

で、このようなノックインタイプのオプションがさらに市場のかく乱要因となる仕組みはあちこちのブログなどに詳しく書いてありますが、ポイントはノックイン価格に近づけば近づくほどデルタが凄まじいスピードで上昇するということです。デルタとはオプションが内在する原資産に対する潜在的エクスポージャーと理解すればよろしいかと思いますが、オプションの買い手(つまりこういうリンク債などの売り手)は通常ヘッジします。要するに潜在的プットを持っているわけですから買いポジションでヘッジするわけですね。ノックインプライスから離れていれば、プットが最終的に出来る可能性が少ないのであまり大きな動きはないのですが、ノックインプライスが近づくにつれてプットオプションが発生する確率が飛躍的に高まっていくため、ヘッジする側は日経平均の買いを増やしていきます。ところがこういうヘッジはノックインがついた瞬間に不要となる。それゆえノックインがついた瞬間にヘッジしていた人は買いもちを一気に処分するため、価格が大きく動く。
こういう動きが予想できるから、それを知っている市場参加者は日経平均先物を売りたててノックインをつけさせることで短期間で大きな収益を得ることを目指すことになります。そしてそれが今日のようなテクニカルな下落をまねくのです。

経験的には人がいない時間帯を狙って悪材料を流し相場の薄いところで動かすというのが良くある手法です。今日はメリルリンチの損失拡大の噂が材料となって円高株安が一気に進みました。よーく考えたら150億ドルの評価損っていうのは時価総額の3分の1でふつうはそれだけで終わっているわけですが、ただ、もともとアナリスト達は120億ドルは予想していたからいまさら慌てふためくようなレベルのニュースかなとおもいました。さまざまなメディアが相場操縦にからんでいないという保証もありませんしね。

いずれにしてもリスク限定型なんてトンでもない呼称を良くつけたものだと思いますし、この呼称が販売資料などに入っていたら訴訟問題に発展しかねないのではないでしょうか?

こうした商品を買ってしまうということは、もちろん自由ではありますが、血にライオンがいっぱい草むらで目を光らせている草むらの真ん中に放たれた一頭のシマウマのようなものです。多くの場合ライオンが昼寝をしていてシマウマはおいしい草を食べて立ち去ることが出来るかもしれませんが、ちょっと近寄りすぎるとすぐにライオンが起きだしてガブリ。そうするとその血のにおいを嗅いだほかのライオンがどどどっと駆けつけてきて血祭りということです。
さらに悪いことに多くの猛獣たちに蹂躙された草むら(市場)はしばらく荒れ果ててしまい、見向きもされない場所になる。こういう商品に手を出すということは自分が傷つくだけならともかく市場まで荒らしてしまう可能性があるということです。こういうのはあくまでも厳密なリスク管理が可能なプロ同士の世界でやるべきなんだと思います。

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コメント(8件)

内 容 ニックネーム/日時
個人的にはこの商品はマーケティングの勝利だと考えてます。まあ、結局プライシング競争でしかないんですけどね。どうして株=あぶない、金利=安全と考えるのか。物を買うときに高いものは比較して、勉強して普通買うと思うんですけど、投資は違うんですかね、、という愚痴でした。
ttori
2008/01/11 21:56
プットオプションショートに債券のごとき名前をつけオブラートにくるんでしまうアイデアはすばらしいです。きっと、クーポンのかさ上げ分も少なめで、妥当分との差額は販売した業者の儲けになるんだろうなー。
mischoice
2008/01/12 10:36
絶妙なネーミングですよね
「日経平均が20%下落しない限り」という条件の下ではリスク限定と言えなくもないw
流石にネーミング時に当局に確認は取った上での事だと思うのでその辺で問題にされる事はないんじゃないでしょうか?でも今後の投信の販売には多大な影響があるでしょうね
tko
2008/01/12 11:01
ttoriさんどうもです。この辺の事情は多分ttoriさんの方がきっとお詳しいとは思いますが、レギュレーションによって債券しか買えない投資家層へ販売するならともかく、そうでないなら、意図的にリスクを小さく見せようとすることで投資家に誤解を与えることを意図した商品といわれても仕方ないですね。
厭債害債
2008/01/13 12:30
mischoiceさんコメントありがとうございます。当然そういうことかと思いますし、仕組みを作る側でしっかり抜かれ、販売手数料をしっかりとられ、おそらく投資家が予想しているよりも儲かる可能性が相当少ないはず。
厭債害債
2008/01/13 12:34
tkoさんコメントありがとうございました。この辺のネーミングに対して行政が関与しているならば行政訴訟の対象になるかもしれませんけれど、おそらく、あくまで自主的に決めさせているという形で逃げるんでしょうね。
厭債害債
2008/01/13 12:37
まーだこんな商品にだまされるリスク「聞かん」投資家がいるのですね。ということで禁しょう法なのですが、機関投資家とプロ投資家はどこで線引きするのでしょうかねー。
多分個人でなく機関であるところがミソなのですかね。機関投資家経験者の皆さん、金融工学のプロがついていて「うちはそんなもの買うかよー」っていっても、次の日理事、役員様の一言で買っちまってたなんてことありませんでしたか。
禁しょう法
2008/01/13 21:18
禁しょう法さん、コメントありがとうございます。機関投資家というのは昔は一定の類型が証券取引法などに記載されていてそのカテゴリーに入る限りプロと扱われるというルールでした。いまでもその流れは引き継がれていると思います。
ただ、実際極めて小さい地方の金融機関など機関投資家のカテゴリーに入っていてもとうていきちんと判断できていないと思われる投資がたくさんありますね。
ちなみに、比較的大手の金融機関については、最近はさすがに偉い人の一言でややこしい仕組み債を買うというのはやらなくなっているようですね。でも、もっと大きなプロジェクトとか、結局わからない人々の集まりである役員会とかで決めているわけですから、あまり細かいことにこだわるより、最大リスクがどれだけか、あたりがきちんと捉えられていればいいのかもしれません。
厭債害債
2008/01/14 01:15

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