厭債害債(或は余は如何にして投機を愛したか)

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zoom RSS サブプライムローンと逆選択問題

<<   作成日時 : 2008/01/17 17:29   >>

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昨日ロイターを見ていたら株式会社フィスコの田浦さんという方が「今日のクレジット市場」というコラムで「『早期デフォルトと詐欺』の調査」というタイトルの記事をかかれていて、その中で2005−6年ビンテージのサブプライムローンで高かった早期デフォルトの問題がかなり虚偽の申告に基づくローンに起因するということを指摘した米国コンサルティング会社のレポートの紹介をされていた。(”White Paper Early Payment Default – Links to Fraud and Impact on Mortgage Lenders and Investment Banks.” : BasePoint Analytics社)
以前ワタクシが書いたエントリーの「邪推」をやや補強してくれるようなお話なので「他人のふんどし」をお借りして再度書いておきたい。

このコラムで要約されている内容を見ると、早期デフォルト(Early Payment Default:EPD)の可能性を見分ける鍵となる指標として最も重要なものは以前ワタクシがフィッチのレポートを引用して書いたエントリーにもあるように、「居住の有無」だそうだ。で、今回の調査でローンプールの平均的なクレジットスコアが上昇しているにもかかわらずデフォルトや詐欺的ローンが増えているのは「「居住の有無」を偽って申告している「にわか投機家・大家」が多いことが大きく左右しているのではないか、と推測される」と述べている。そしてその傍証として商務省の「持ち家空き家比率統計」(http://www.census.gov/hhes/www/housing/hvs/hvs.html)における空き家比率が高水準で推移していることをあげている。

このようににわか投機家がサブプライムローンのかなりの部分を担っていたのではないかという疑いは私も書いたところであるが、これは保険でいう「逆選択」という問題に通じるのであり、こういう契約が多く混じってしまうことで本来予定された大数の法則に基づいた統計データや収益費用計算が全く成り立たなくなる可能性がある。したがって、このような統計データを使った商品設計においては、絶対に排除しなければならない事象なのである。

田浦さんも指摘されているように、もともと自分の居住している家のローンなら必死で払うのだが、そうでないものについては「住宅ローンは非合理的なまでに支払われるという経験則に基づいた過去のデフォルトの水準論など全くの参考程度にしかならない」。そしてその過去の経験則に基づいて作り上げられたモデルや予測をベースに作られた証券化商品のプライシングが大きく間違っていた可能性があるのである。

ただ田浦氏は羹に懲りて膾を吹くような過剰反応も戒めており、「基本的には、費用対効果で、逆選択の構造や誘引(隠しておきたい情報を有する借り手の虚偽申告の動機付け)、徴候をわきまえた補助的自衛手段・システムを導入するのが王道」と結んでいる。
非常に納得のいく意見であり全面的に賛成である。

それにしても、保険などで登場する「逆選択」(本来は保険会社が医学的側面やモラル的側面から加入者を選択することで加入者間の公平を図るべきであるのに、加入者の側からは病気の可能性の高い人やよからぬ動機を持つ人ほど保険に入りたがる面があり、網の目をくぐってそういう人々が意図的に加入してしまうような現象)が起こりやすい仕組みを積極的に作ってしまうこと自体、社会やほかの善良な借り手に対する背信行為といえるのであり、それにかかわった人々は強く糾弾されなければならないだろう。

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ドル切下げしかない。
今回の米国景気後退に対して米国の取るべき態度はドル切下げしか無いだろう。 本当の根っこは米国の長年に亘る貿易赤字にある。 それを基軸通貨を良い事に紙幣を増刷して決済資金に宛ててきたのがこの40年間だ。 ドル資金は国内に止まらず、石油決済通貨として世界中に撒き散らしたので米国本土はインフレに陥らなかったのだろう。 バブルになったのだからインフレは起きている。 ...続きを見る
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2008/02/16 08:33

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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
おはようございます。いつも有益な情報ありがとうございます。
アメリカ不動産バブルも、わが国のケースと五十歩百歩で終わりそうな感じですね。金融工学が発達した現在では、90年代とは比較にならない損失額なのでしょうが。
空き家が増えつつあるとありますが、債権者が差し押さえた家に対しての管理について、ビジネスウィークで面白い記事が出ていましたね。 "http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20080111/144589/?P=1"こうした事は、個々の金額は小さいですが、ボディーブローのように効いてくると思うのですが。
フレッド
2008/01/18 09:24
皆さんわかりましたよね。日本にはこれを回収する組織とか、うまいやりかたとかあるのですよ。
ナポリのゴミと一緒でしょ。
アンダーグラウンド
2008/01/18 23:44
フレッドさん、コメントありがとうございます。引用していただいた記事も、アメリカらしいといえばらしい「無駄遣い」の一例としてみてもいいかもしれません。社会不安に波及してしまうこういう仕組みに加担した罪は大きいです。
厭債害債
2008/01/20 19:30
アンダーグラウンドさんコメントありがとうございます。ナポリのゴミ問題はえらいことになっているようですね。しかし、大都市の癖にまったく計画性のない行政にちょっとあきれてしまいます。こういうのを見せ付けられるとまだ日本の行政がすばらしく見えてきます。
厭債害債
2008/01/20 19:34

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