厭債害債(或は余は如何にして投機を愛したか)

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zoom RSS 本日の経済教室はややミスリードでしょう

<<   作成日時 : 2008/06/20 18:04   >>

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本日の経済教室

安田教授の論旨は次のとおりかと思われる。

1. 日本の公的年金の利回りは悪い
2. アメリカなど外国の年金運用の利回りは高く、日本の公的年金利回りより相当高い。
3. これは国債中心の安全資産偏重運用のせいである。
4. 改善するためには原則的に国債運用を中心としながらもベビーファンドを分離して資産の一割強ぐらいを自由度の高い運用に割り当てる。それが人材育成に役立つ。成功していけばどんどん分割を進め、最終形としては「世界一流の独立性の高いファンドが5、6個集まった形かもしれない。」
5. もう一つのアイデアは認可法人化し独立性を高め、受託者責任を明確にし、人件費や設備投資に自由度を持つことで、「高度な運用システムも開発し、世界のプロフェッショナルを採用することが出来るだろう」。外部に任せるだけでは自らの運用能力が向上しないので、有能な人材をひきつける環境作りが必要だ。
6. 運用のプロフェッショナルとしては「黒い目のメジャーリーガー」つまり世界で通用する日本人の運用のプロを採用すべきだ。そういう人材とは、現在「外資系の一流の資産運用会社や投資銀行、ファンドで活躍している日本人」である。

趣旨としては賛同できるところも多いのだが、一部意図的とも思えるようなミスリーディングや根拠のない記述にはちょっと突っ込みを入れておきたい。

「2006年度までの5年間の年金積立金の運用利回りは3.52%だった。」という記載がある。これはもちろん名目リターンであるが、国内の他の運用者と比較して利回りが低いことを挙げるのはまだいいとして、「海外の公的年金運用機関と比べると利回り格差は4-7%になってしまう。」というのはちょっと比較としては大胆すぎるような気がする。だって、負債の通貨が違うのだから、マザーマーケットが違うわけで、当然運用の中心となる通貨が違うのに、単純に名目利回りを比較するのは変だ。要するにドイツの10年国債が5%の利回りで日本の10年国債が1.8%だから、ドイツの国債に投資しないのはアホだといっているに等しい。ベースとなる金利水準の違い(つまり突き詰めればインフレの違い)を考慮しない比較は無意味だと思う。
同じ意味で中段に次のような記述が。
「そもそも国債運用が安全なら、今年の世界的な株価暴落時には、国債偏重の公的年金の運用利回りは、株式や外国証券・ファンドなどへの積極投資が特徴で米最大の公的年金基金(カルパース)より運用利回りが良かったはずである。しかし、事実はカルパースが3%弱、GPIFはマイナスの運用実績である。」
これも比較できない物を比較しているように思える。ドルの負債を背負ったカルパースは当然米国市場を中心に運用し、円の負債を負ったGPIFは日本市場を中心に運用するのは当然で、両国の債券や株式市場のパフォーマンスが違えばカルパースとGPIFのパフォーマンスが異なるのは当然である。「カルパースは日本の再生ファンドや成長企業に株式投資を行い、対日投資で二ケタ近い利回りを得たといわれている。他方GPIFが国債偏重で3%強の利回りに甘んじているというのは不思議な光景である。」とあるが、一部だけ取り上げれば、GPIFからの外債外国株投資だって18年度は二桁利回りを上げている。こういう書き方はフェアではない。だいたい、国債偏重といいながら、GPIFの国債保有比率すらきちんと表示していない点(国内債券は表示しているがこれもミスリードであることは後で書く)問題である(もちろん確かに多いんだけれどね)。

なお、この文章では年金積立金とGPIF運用分がごっちゃになっている印象を受ける。積立金運用の国内債券のうちかなりの部分が財投機関債であり、これはGPIF運用とは分けて管理されている。これを除けばGPIF運用のうち6割弱が国内債券であり、為替のボラティリティなどを考えると、外株や外債で結構リスクはとっているほうだと思う。全体に安全志向の国民性を考えると、現状が極端な安全志向とまでは言いづらいものがある。

どうやら、とにかく日本の公的年金の運用者はだめで外資系ならすべておつけーといいたいようだが、日本の運用者のどこがだめで外資系運用者のどこがいいのかきっちり論証してからこういう文章を書いてもらいたいものだと思う。

まあ、この文章の狙いはどうみても年金のSWF化促進と外資への委託促進にあることは明らかなんですけれどね。まあ筆者のご出身からすれば納得ですが。

参考
http://www.mhlw.go.jp/topics/nenkin/zaisei/tsumitate/kekka/index.html

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コメント(6件)

内 容 ニックネーム/日時
いまでもGPIFは結構な額を超有名外資に委託していると思うんですけど。識者とかいってGPIFのことをごちゃごちゃ言っている方は年次報告書くらいよめと。上もリスクリターンのことすらまともに理解してないように見受けられる内容をどうどうと一面使って書いて恥ずかしくはないのかなあ、と(あ、知識ないから恥ずかしいもなにもないのか)。こんな記事のせる日経もどうかと。
ttori
2008/06/20 21:23
「運用受託機関別運用資産額一覧表」によると、外株/外債は大部分が外資での運用のようですね。

資金運用業務概況書
http://www.gpif.go.jp/kanri/pdf/kanri03_h18_p04.pdf
R
2008/06/21 20:14
コメントなし。笑うしかないでしょう。
かるパース
2008/06/21 23:32
と思ったけど、とりあえずコメント。
利回りって何。TWRなの何のよ。
外国の年金ってどこ、インフレ高進国の利回りはそりゃー高いよね。
年金積み立て金(このへん理解ってできたないよね。)の調達サイドに見合う、コンサーバティブな運用は何でしょうか。で海外の年金(この場合当然公的なという意味でしょうけど)ちなみに君たち欧州の代表的年金基金ってしってるかな。
GPIFの運用構成っ知ってるのかな。ちなみに5332規制って知った。
GPIFの運用委託機関はどこでしょう。ちなみに日本で最初にインデックス運用だの、オルターなちぶだの、コーポレートガバナンスだのって提案してきた、黒目の侍たちが昔いましたとさ。
これは今から相当前の話です。
かるパース
2008/06/21 23:54
ttoriさん、どうもです。筆者の趣旨はまあ外資に委託するのではなく「外資で修行した」日本人をきちんと雇って運用力をつけろということのようですが、それにしても議論の前提がちょっとあまりにもあまりかと思いましたね。

Rさんコメントありがとうございます。おっしゃるとおりすでにGPIFは外資の運用力を結構使っているような気がします。
厭債害債
2008/06/22 22:28
かるパースさん、どうもです。ご指摘のとおりこの論文では利回りにおいて時間加重という概念が使われていませんね。利回りを比較する上で基本的な概念ミスです。ワタクシはあえてそこまで指摘する気力もなくしておりましたが。
厭債害債
2008/06/22 22:35

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