厭債害債(或は余は如何にして投機を愛したか)

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zoom RSS 原油(WTI)市場急落についての一つの仮説

<<   作成日時 : 2008/07/28 18:02   >>

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セムグループ(SemGroup)が原油のヘッジ取引で失敗し24億ドルもの損失を出して破産法適用の申請を行ったようです。この会社はいわゆるミッドストリームとして原油の仲介、貯蔵、パイプラインなどを扱うオクラホマに中心を持つ業者です。言われているのは原油のヘッジのためのショートが踏み上げられて追加証拠金(マージンコール)に応じ切れなかったため、ということですが、ニュースを知ってちょっと違和感があったのは、ショートの踏み上げならばその会社が破綻するときはそのポジションの解消によって相場が更に上昇するはずなのに、結果的にその後急落しているということです。
もちろん、バークレイズさんがポジションを引き取った(要するに市場で解消しない)とか言う話もあるしポジションのアンワインドによるマーケットインパクトはなかったのかもしれませんが、それにしても仲介業者が破綻しただけで急落するというのは不自然な思いもします。
実は貯蔵や輸送という業務が原油先物市場、特に実需と直接結びつかないポジションと密接な関係があるような気がしています。例えば、ヘッジファンドでも投資銀行でもどこでもいいですが投機的なロングポジションを持つ場合を考えて見ましょう。彼らは石油の需要家ではありませんから、最終的に原油を自分たちで使うつもりがないことは明白です。このままであれば市場の関係者は、彼らのロングがいずれ反対売買によって解消される必要があるという確信を持ちます。彼らのロングはいわゆる「足元を見られる」状況になりやすいと思われます。これに対してロングの投機家はどうするか。ある投資銀行の方から直接伺ったのですが、彼らの場合ロングを持つために一定の「貯蔵能力」を用意してある、それはまさに足元を見られないため、というのです。これがあれば、現引きして持つという選択肢をとれることになり、相手に対する交渉力が増しますね。

実はセムグループのタンクの多くはオクラホマのクッシン(Cushing)にあります(ちょっと古いですがこの街のことを報じている映像があります)。ここはまさにWTIの現物決済の中心地といわれていて、オイルタンクが集中している(現地を見たことがないのであくまで間接情報ですが)。今回セムグループの破綻によって、ここのタンクを使えるように契約していた当事者は契約上の地位が危殆化しますね。それによって、結局のところロングを取る能力が落ちてしまった、ということではないかと思うのです。そしてポジションを減らさざるを得なかったのではないでしょうか?(とはいえ、ほかのタンクを調達できれば別に懸念することもないのですが、今回の事件で、同業他社にも同じようなケースが起こりうるのではないかと考えられている感じです)。ちなみに、セムグループの大株主はPEやヘッジファンドであり、カーライルとリバーストーンの共同出資によるファンドが29.3%、ヘッジファンドのRitchie Capitalが25.2%(7月28日WSJによる)なのだそうです。

もちろん理由はこれだけではないと思います。マーケットではハリケーンが逸れただのサウジの増産がどうのという理由付けもあって、まあそれも一面の真実でしょう。ポジションのアンワインド期待で買いあがったスケベロングが切らされただけという見方もあります。すでにチャートはかなり悪いしそれが投げを呼ぶところもあったでしょう。ただ、この会社の破綻のタイミングと原油相場の調整入りのタイミングがあまりにいいので、あえて結び付けてみました。以上のことは素人のワタクシの推測の域を出ませんが、どなたか詳しい方がいらっしゃったらお教えいただければと思います。


(追記:ついに一目均衡表の雲のあたりまで降りてきましたね。正念場ですか・・・)。

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コメント(13件)

内 容 ニックネーム/日時
これはなかなか面白い視点・・
( ・ω・)∩
2008/07/28 22:45
( ・ω・)∩さん、コメントありがとうございました。

厭債害債
2008/07/29 00:27
まだまだ若輩者ですがコメント失礼いたします。上記のような視点は全く持っておりませんでしたので、興味深く読ませていただきました。
個人的に転換点は15日だったのではないかと思っております。原油はそれまで米国景気悪化懸念→ドル安→原油によるヘッジ、という流れがありましたが、15日のBernanke発言により米国景気悪化→原油需要減退による価格下落→ドル安ユーロ高から反転してドル高ユーロ安、と動いたことで市場参加者の心理面に大きなインパクトを与えたのではないでしょうか。
つまり、もともと米国景気の悪化は原油需要の減少をもたらすで、なぜかドル安ヘッジのために原油価格があがるいびつな状態が続いておりました。それがついに崩れたのだ、原油価格急騰は終わりったのだと市場参加者が思い始めたのだということです。
もちろん、地政学的リスクの要因も大きいですし適正価格がいくらとは言い難いですが…。
グレートブリテン
2008/07/29 03:14
いつも興味深く読ませて頂いてます。

そう言えば、ちょっと前の話ですが、穀物なんかでもファンドがエレベーター(穀物貯蔵庫)を買収してましたね。これもそういう魂胆があったのかも。現物の商売しこしこやってるより、先物で儲けられれば簡単ですもんね。
けんじい
2008/07/29 12:10
 スケベロングたちが、なんにせよ流動性が薄くなりそうな事件なのでいったん手仕舞いましょうかね、という流れかと単純に考えておりました。面白い視点だと思います。
 ところで、実需筋がヘッジ目的のショートが原因で破綻、って話にも違和感を持ちませんか?よほど管理がいい加減だったのか、あるいは銀行ALMのような、ヘッジと言う名の投機だったのか。20年前に問題になったJALのドル買いみたいに、10年先の分まで手許で売ってたのかもしれませんが・・・(それはそれで管理能力が問われる)。
元IB現PB
2008/07/29 12:21
「ニュースを知ってちょっと違和感があったのは、ショートの踏み上げならばその会社が破綻するときはそのポジションの解消によって相場が更に上昇するはずなのに、結果的にその後急落しているということです。」SemのPositionが秘匿されていたなら、ご推察のようにShort Cover期待で原油は暴騰してたことでしょう。そうならなかったのは、破綻する前からSemがShortで苦しんでいることが市場関係者の知るところとなっていたからではないでしょうか?血を流しながら漂流している獲物にシャチの群れが襲いかかったようなもの。シャチたちはLong Positionを積み上げて、Semを締め上げた。Semは証拠金が払えなくなったので取引所が強制的にSemのShortを集まってきたシャチの群れから高値で買い戻して解消した。シャチはおなかいっぱいになったし、餌がなくなってしまったので立ち去り、ひとまず買い上げる材料がなくなった原油相場は反落した。
LQ438458
2008/07/29 13:10
上のコメント
>そうならなかったのは、破綻する前からSemがShortで苦しんでいることが市場関係者の知るところとなっていたからではないでしょうか?
は興味深いですね。ポジションが大きいときは分からないようにしないといけないのですが投機のプロではないのでできなかったのですかね。実需の会社がヘッジのポジションのほうが大きくなると言うのは明らかに行き過ぎですね。
EURO SELLER
2008/07/30 01:47
少し前に、アメリカの農業関係者(農家?)がヘッジで先物を売っていたら、それがスクイーズされて追証に耐えられないというような報道がありました。いくら現物をロングしていても、収穫前なら売れないし、含み益になってもマージンコールをかけられないので、いわゆる資金繰り倒産みたいなものだと言うことでしょうか。
美味礼賛
2008/07/30 12:21
合成の誤謬ですかね。結局穀物エレベーターを持っている人が勝つ。インドでも同じようなことが起こっているという番組がありましたが。ようはこの可処分所得の増加を国内消費および投資に結びつける為政者がいるかでしょうね。独占して外人にだまされた国は帝国主義時代以来同じことの繰り返しです。
アフリカはねー。中南米ようやくかね。中ロは成功パたーんかな。アラブは富の偏在を作為的にやった結果ですがね。
かるパース
2008/07/30 23:44
美味さんまさに、堂島の米相場です、紀伊国屋文左衛門です。日本はそういうことを経験すみです。
かるパース
2008/07/31 00:51
みなさま、コメントありがとうございます。ちょっと多忙につき失礼しました。LQ438458さんのおっしゃるように、実はショートで苦しんでいることが周知の事実になっていたのかもしれませんし、それが147ドルまで上がった理由のひとつだったのかもしれません。まさに美味礼賛さんのおっしゃる資金繰り倒産と言うことになるのでしょうが、EUROSELLERさんのおっしゃるように売りヘッジのほうが多かったとすればちょっとやりすぎですね。
厭債害債
2008/08/03 12:15
グレートブリテンさん、ご指摘のように為替あるいは他の証券市場とのリンクを考えると、今後の展開が極めて興味深いですね。けんじいさんコメントありがとうございます。買い方は現引きできないとやはり苦しいようですね。
元IB現PBさん、どうもです。現物を持ってヘッジをして資産評価上はオフセットできても、資金繰りでやられると言うことはありそうですね。
厭債害債
2008/08/03 12:20
かるパースさん、どうもです。コモディティ価格上昇が産出国経済に与える効果はまさにその国の政治の優劣の問題になりそうですね。
厭債害債
2008/08/03 12:22

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