厭債害債(或は余は如何にして投機を愛したか)

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zoom RSS 大暴落 1929 (ジョン・K・ガルブレイス)(村井章子 訳 日経BPクラシックス)

<<   作成日時 : 2008/11/18 13:32   >>

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すでに多くのブログや書評で取り上げられているので、いまさらの感があるが、この本を読むと、今回のバブル崩壊の過程における1929年との類似点の多さにいまさらながら気づかされる。

まずは政治的な状況だ。若干時期がずれているとはいえ、当時もクーリッジ大統領が自由放任政策を推進して次のフーバー大統領にバトンタッチしたのは1929年1月。まさにその時代に大いにバブルが膨らんだということである。

市場の状況も似ている。今回はすでに住宅市場をはじめ多くの徴候が出ていたとはいえ、株式市場が急激な調整を行ったのは今年の10月以降である。昨年後半に史上最高値をつけてわずか1年での大きな調整である。一方、1929年も9月まではなんと史上最高値をダウは更新していたのである。今回は事前に徴候が出ていた分、対策が採られて事態が先延ばしになっただけであり、本質的な調整の必要性とプロセスは異ならないだろう。

また1929年大暴落の2年ほど前まで数年間FRB議長を務めていたクリシンガー氏は「神のごとき賢人」とみなされていた、という記述がこの本にある。ううううむ。似てるなぁ。
さらに、ガルブレイスは「原因と結果」という章で、次のような鋭い洞察を行っている。
「ブームというのは発生してからでなければ阻止することは出来ない。」ふむふむ、これは誰かさんも言ってましたね。しかし(それを阻止する策によって)「終焉を早めれば、それが突然やって来るという不利益に加えて、誰がやったかを名指しされるという不利益もある。」つまりバブルは終わらせ方にも非常な困難が伴うということだ。

当時、投資信託ブームであり、投資信託がアンダーライイング・アセットの価格の総和から独立した価格で取引されていた様子も、いまの証券化商品の様子と似ているともいえる。


そして株式市場はその後どうなるか、というと、11月中旬に一旦底打ちをし、翌年4月まで急激な回復を見せる。一旦心理が落ち着くからだ。しかし、結局ファンダメンタルズの悪化に抗しきれず、その後1932年の7月ぐらいまで秩序正しく下げ続けるのである。

今回の下げでは、1929年11月に一旦底打ちするまでと同じ程度の下げをピークから調整しているので、今回もここら辺で一旦回復に向かうかもしれない。問題は、その後だろう。ガルブレイスは今は昔と違って様々な仕組みが整備されているので、同じようなことにはならないというが、その半分でもなかなか厳しい株価ではある。

最後にこの本からいくつか使えそうなキーワードを。
・ 「市場が怪しい雲行きになったときの常套句、すなわち「経済は基本的には健全である」とか「ファンダメンタルズは問題ない」…」「この台詞を聞かされたら、何かがうまくいっていないと考えるほうがいい。」
・ 「株式市場の大暴落に続く数ヶ月、いや数年にわたって、定評ある専門家が与えた助言はどれも一様に、事態を一層悪化させるような政策を勧めるものだった。」
・ 「将来は予測可能だと思い上がった人ほど悲惨な末路をたどった。」

今回のことについてワタクシも予想はできないが、少なくとも当時の空気や雰囲気を事実として知るのには格好の著作であろうとおもう。

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サブプライムローン問題から世界恐慌へ
79年前の悪夢がやって来ようとしている。 しかし、当時の米国の世界経済に対する影響力は遥かに落ちている。 それは日本は元より、中国・インド・ブラジル等新興国も米国頼りとは言え大きく比重を増している。 ここらのパワーバランスがどうなるか今後も目が離せない。 過去記事を見ても、サブプライムに対しこの「よく考えよう」では大きく警鈴を発してきた事に気付く。 ...続きを見る
よく考えよう
2008/11/20 09:11

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コメント(5件)

内 容 ニックネーム/日時
いつも勉強させてもらっています。

私もこの本を読んで「しびれた」一人です。80年経っても同じような失敗をしている我々自身に失望するとともに、それでも多くのことを学ばせてくれる本。素晴らしいですね。

特に最終章は圧巻で、中でも厭債害債さんも挙げられた「将来が予測可能だと思い上がった人ほど・・」の一文は深く心に刻んでおこうと思いました。

普段はエコノミストとして先行きの経済見通しなどをやっていますが、「人間には先のことはわからない」という神様が決めたルールの下、謙虚に仕事に励んでいこうと思いました。
Eco
2008/11/19 21:57
Ecoさん、コメントありがとうございます。あることがらの普遍性ということも考えさせられる一冊でした。
この時代プロのエコノミストの方々でも相当悩まれると思いますが、ご健闘をお祈りしております。
厭債害債
2008/11/21 22:08
79年前と同率の下げ幅になるとすれば、6千ドル強と言うことになるんですよ。3ヶ月前の高原がまだ暫く続くでしょうから、それと米国政府の打つ手はたった1つ、詰り0金利の選択しか無いのでしょうから。ドル安は加速するでしょうが、取敢えずの出欠阻止に対する財政出動を担保する国債発行しなければならないのでしょうから。
Hbar
2008/11/22 11:29
リチャードクーが正しく指摘しているようにゼロ金利でも借りに来ないことは有り得る。
全ての人間が借金を返すことが日常に成ってしまった世界は貨幣なんか借りる訳がない。
金利という矛盾は消滅する。
ゴールドや貝殻という希少性によって成立した貨幣は、金利という理解しにくい不足の常態制度によって成り立たせてきた。それが自由で成長を約束するかのようにに見えてしまうコトなのだ。

だってアメリカも日本もユーロも将来見渡しても借金地獄だもの。
返すしかないし・・・・紙切れなんだからゼロ金利でも借りたく無いし・・・

働き続けることが出来なくなった野鳥が死ぬのと同じように、働くことが出来なく成ったら素直に(未練無く)死にたい。
kazzt
2008/11/24 00:55
Hbarさん、どうもです。大恐慌時は結果的に株価は3年ぐらいかけて7分の一ぐらいまで落ちたと記憶しております。

kazztさんどうもです。住宅がほしい人はそれでも住宅ローンぐらいは借りるでしょうけれど。問題はそういった「実需」の借り手が少なくなってしまっていること、すなわち経済に新たな成長の種が失われてしまったことだろうと思います。これまでは金融がその一部の役割を担っていましたがおっしゃるとおりデレバレッジの世界では、返済が圧倒してしまいますね。
厭債害債
2008/11/24 19:22

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