厭債害債(或は余は如何にして投機を愛したか)

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zoom RSS リクイディティーとソルベンシー

<<   作成日時 : 2009/03/03 06:03   >>

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それぞれ金融用語として直訳すれば「流動性」と「支払能力」ということになります。意訳するなら「資金繰り」と「健全性」との違いでしょう。保険会社なんかでもソルベンシーマージンという言葉が良く出てきますが、まさにこれは資産や利潤構造のもつリスクが強く反映する指数であり、逆に言えばたとえば日本の保険会社だったら単年度損益はともかくとして株を大量に売却したり外貨建て資産に大量にヘッジをかけたりすることで大きくかさ上げすることができる。それはそもそもソルベンシーという概念が、バランスシートリスクの側面を強くあらわすものつまり健全性指標だからです。資金繰りがいくら潤沢でもこれは大きく変わりません。

企業にとって両方が重要であることは言うまでも無いのですが、この金融危機のさなかでどうしても「流動性」の問題だけがクローズアップされることに対し、2日付のFTで米国のベイカー元国務長官(駐日大使でもありました)が政府に対して流動性対策よりも支払能力対策をきちんとしなければ、日本の犯した過ちを繰り返すことになる(「ゾンビ銀行」を存続させる)と警告を発しています。(”How Washington can prevent ‘zombie banks’)

(ついつい調子に乗っていい加減なことを書いてしまいました。本文寄稿のベイカー氏は確かに駐日大使の経験はありません。ご指摘くださったHacheさん、Jさんありがとうございます。)

まあ、問題のきっかけとか国の仕組みから含めて考えれば、米国の状況はとっくの昔に日本のレベルを超えてしまっていて、いまさらおっさん何寝ぼけたこと言うてんねん、というのがワタクシの見解ですが、それはともかく、問題の所在についてはまったくそのとおりであります。

すでに多くの方が書かれているように、損失が一定以上拡大しないということがはっきりして初めて流動性対策が効果を持つ。つまり、ある程度存続してきた通常の企業であれば中期的に営業ベースでの利益が見込まれ、損失が確定しているのであれば、それを使って何年で片がつけられる、という見通しが立つ。その段階で不確実性は一気に減り、新たな取引関係が成立しやすくなるわけです。

ところが、損失が確定していない場合、流動性をいくら供給しても所詮一時しのぎにしかならず、長期の取引関係にはなかなか入れません。流動性はいつとめられるかも知れず、そのとき債権者はいきなりリスクにさらされるからで、もちろん景気や状況が回復していれば良いのですが、さらに悪化していたりすると、アウトです。

とりわけ、今回は米国の銀行の資産劣化が止まっていません。本来はきちんと資産査定して損を出させて別の主体(Bad bankとか)に買い取らせれば終わりますが、あまりにも時価についての問題がありすぎて、なかなか実行に移せないでいます。結局査定して必要があれば資本注入させてその上で不良資産処理に移る段取りとなりそうですが、結局時間との戦いであり、シティなどはすでに36%の普通株を国が握るという前代未聞の事態になっています。まあ国有化というのもリスクをすべて国が引き受けるという意味である程度バックストップとなりうると思いますが、アメリカは、やはり「国有化」という言葉はホント、タブーなんでしょうか、なかなか進みませんね。

ベーカー氏は資産査定とストレステストをきちんとした上で、米銀を「健全」(healthy)、「絶望的」(hopeless)、「かなりやばい」(needy)の3つのカテゴリーにわけ、健全カテゴリーはそのままに、絶望的カテゴリーは即時閉鎖、かなりやばいカテゴリーは再編、ないし資本の見直し(公的資金を含む)を行う必要があると述べています。

取り付け騒ぎを防ぐため、資本注入行の預金には全額政府保証が必要とも述べていますが、同時に経営陣と幹部の経営責任を明確にすべきだとも書いております。そして注目すべきは債券保有者にも一定の責任を取らせるべきだと述べているところです。

レーガン政権時代の財務長官として名を馳せた彼はあくまで「国有化」ではなく一時的な資金注入で不良資産問題を一掃するのが目的だと強弁しますが、やはり本質的には同質であることは理解しているようで、政府が一定期間議決権を握ることはやむなし、との考えに傾いているようです。そしてワシントンが他の主要国に共同歩調を呼びかけて(つまり国有化を辞さないこと?)問題の解決に当たるべきだと主張しています。つまり、ベーカー氏はソルベンシー対策として一定の範囲については国有化を急ぐべきだという意見を述べていることになります。

ただ、国有化だけで解決できるとはまさか考えていないでしょうが、もしそうだとしたら彼の見通しは根拠無き楽観とでも言えるものに過ぎません。最終的に景気が回復するのだから、日本のもう一つの過ち=増税(日本が1997年に行った消費税引き上げ)を避けるべきだとも述べていますが、本気で財政赤字が元に戻るにはいったい何年かかるかとかそもそもこれからもアメリカは他国からお金を借り続けることができるのかという本源的な問題には一切触れられていません。彼自身がアメリカという国全体がずっと前から持ち続けてきたモラルハザードを体現しているかのようです。

彼は最後に次のように結んでいます。
「90年代を通じて、米国当局は繰り返し日本の政策当局に対し、日本経済に壊滅的影響を与える前にゾンビ銀行を抹殺すべきである、と主張してきた。今日においては我々が自分自身行った忠告に耳を傾けるべきときである。」

なんだかどうも言っていることが良くわからないのですが、たとえばシティは即刻ペイオフすべきだといっているのでしょうかね?

ともあれ、問題の解決には国有化ですら完全なソルベンシー対策にはなりませんし、ましてやゴールではありません。それは不良資産が問題銀行のバランスシートから切り離されてさらにその引き取り手が市場に登場してはじめて成り立つ話であり、米国がいくら不良債権を大量に含む銀行のバランスシートのコントロールを握っても、まさにそこでゾンビ化してしまうのであれば、問題の解決にはならないでしょう。国有化と資産処理のプロセスで生じる更なる多額の損失について、誰がどう面倒を見るのか、その数字がはっきりし、さらに米国としてその数字をどうやって埋め合わせるのかがはっきりしたとき初めてゴールが見えてくるのだと思います。

ソルベンシー回復のためには一刻も早い資産査定と損失の確定が望まれるところです。

(追記)時々訪問するこちらにも同じ記事についてかかれてました。

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コメント(5件)

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初めてお邪魔します。エントリーのご趣旨と関係がなくて恐縮ですが、James Bakerは米駐日大使の経験はなく、Schifferの前任であったHoward Bakerと混同されていると思います。エントリーは勉強になりますので、細かいところで恐縮ですが、該当部分を訂正して頂いて、このコメントも削除してください。
Hache
2009/03/03 06:38
事実の訂正:FTに寄稿したのはJames Bakerですが、駐日大使だったのはHoward Bakerで別人物でした。(私も前に間違えました。)

ただの訂正の指摘ですので、公開コメントにしなくて結構です。(いつも興味深く拝読しています。)
J
2009/03/03 06:47
Hacheさん、Jさん、ご指摘ありがとうございました。ついつい調べないで調子に乗って書いてしまいました。お詫びとともに本文を訂正しておきます。今後ともよろしくお願いします。
厭債害債
2009/03/03 08:16
James BakerさんってHowardさんと違って、昔からあんまり日本が好きじゃない人です。キッシンジャーやスコウクロフトとかの親中外交サークルと近いところにいる人ですね。ライス女史や名前度忘れしましたけど、現世界銀行の総裁になってる日本嫌いで有名な元国務副長官(たしかGSの出身でしたな)とも懇意の仲です。
相変わらず意地が悪いですなぁ(笑)
panda hugger
2009/03/04 07:47
panda huggerさんコメントありがとうございます。日本の例というのは確かに意地が悪いというか、詭弁というか、という感じです。
厭債害債
2009/03/09 05:41

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