厭債害債(或は余は如何にして投機を愛したか)

アクセスカウンタ

zoom RSS シティグループ、転換優先株を普通株に転換

<<   作成日時 : 2009/06/12 00:06   >>

なるほど(納得、参考になった、ヘー) ブログ気持玉 15 / トラックバック 1 / コメント 0

シティグループは580億ドルの転換優先株を普通株に転換することで、自己資本(いわゆるTCE=tangible common equity=有形普通株式自己資本)の増強を進めると発表しました。2月ごろに計画はでていましたから、その実行ということになります。この件はいくつか興味深いポイントを含んでいると思ったので、記憶の衰えがめっきり激しくなったワタクシとしては、メモメモ

これによって政府の議決権が34%になります。ちなみに一般にはというかわたしんとこの与信先カテゴリーとして政府や地方公共団体が25%以上持っていたら確実に「公企業」(50%を超えたら「政府関係機関」)ですが、きっとこういう呼び名はお嫌いなんでしょうなぁ。いずれにしても170億株の新株発行により株主価値は76%希薄化するとか…(まあ無配だからべつにねぇ)。ちなみに3月末から6月10日までのシティ株のパフォーマンスは+37.5%ですが何か?

これによってTCEの部分が610億ドル増え、Tier1自己資本も640億ドル増えるという試算ですが、先日のストレステストによって出された必要額をはるかに超える金額ですが、1000億ドルを超えるとも見られる損失への備えとしてはまだ道半ばという感じですが。

今回転換を急いだ理由の一つに、繰り延べ税金資産の問題があるということです。繰り延べ税金資産というのは「税効果会計」におけるきわめて技術的ではあるけれど場合によっては企業の死命を決しかねない重要なアイテムです。考え方は企業会計と税務会計の違いから生み出されます。ある決算期に「企業会計上は損失だが税務会計上は損失控除できない項目」が発生したとします。一番典型的な例はその他保有目的有価証券の含み損です。企業会計上は資本直入の形で損失がバランスシートに反映されますが、損益計算書には出ずゆえに当然税務上も損失とは認められません。したがって、当期の法人税申告では「損があるのに税金を払う」という形となります。しかし、この損は(相場が変わらなければ)いずれは実現するものです。実現すれば実際の損金となりその分税金が安くなったり還付を受けられたりする。その将来の還付などを見越して、その税金相当額を資産計上することが認められています。金融機関の大半はお世話になったはずです。シティグループも12月末時点で445億ドルの繰り延べ税金資産を計上しています。

アメリカの詳しいルールは専門家に任せたいと思いますが、記事によれば、単独で株の5%以上を保有する投資家があわせて全体の50%を超えてしまうと、この繰り延べ税金資産計上が認められなくなるとのことです。しかもシティはこれをTCEにカウントしているので、これがなくなることはただですら少ないTCE資本に大きな痛手となります。そこで、今回シティは今回の転換に合わせていわゆるポイズンピル(毒薬条項)を採用し、単独の投資家が持ち株比率を増やそうとすると一気に株の希薄化が起きるようにするようです。

余談ですが、繰り延べ税金資産というのはあくまで将来の利益があってはじめて成り立つ話です。イメージとしては将来利益が出て本来は税金を払わなければならない局面で
税金が少なくなることで、これら利益と引き換えにこの資産を償却していくわけで、利益が出ないことには繰り延べ税金資産そのものが無意味となります。仮にこれまで計上を認められていても、今後利益の出る見通しが極めて薄くなった場合、会計監査人が形状を認めず過去の分を償却することを強制することがあります。その意味では結構危険な資産です。なにせ業績の悪いときにさらに追い討ちを掛けるような資本不足となるわけで、こういうことがあると会社は一気に倒産に追い込まれる可能性があると思われます。その意味でも、技術的ではありますが、今回の策はかなり重要なポイントかもしれません。

もう一つは、結構投資家への配慮があったという説。実は転換優先配当株については普通株との間で裁定取引をする手法があるといいます。転換優先普通株は、見方を変えれば一種のカバードコール取引と見ることが出来ます。配当をコール売りのプレミアムだと考えれば、上昇時リターンが普通株ほど大きくならない代わり、配当の形で期間収益を得られる。ただ、発行企業側が転換権を持つので、株価上昇のメリットは直接は受けられない(間接的にはスプレッド縮小の恩恵を受ける可能性)一方で結局普通株の下落リスクは丸々背負うことになります。このため、優先株を持ちつつ普通株の空売りで株価下落に対する一種のデルタヘッジをし配当部分のメリットを享受する方法があります。ところが、シティはたしか2月に優先株配当を無配(政府部分を除く)にしているはずで、しかも処分できない状況となってしまったため、この戦略では空売りコストだけがかかってしまう。こうなると早く転換してくれたほうがすっきりしてコストもかからない。というわけでソブリンウェルスファンド系にきっと政治的にも気を使ったのではないかと推測します。(そういえば2007年の秋に出してアブダビだかどこかが引き受けたのって30ドル台の転換価格(しかも強制転換)じゃなかったかしらん?3.25ドルという今回の転換価格はどこかで変更されたのでしょうかね?)。


テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 15
なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー)
面白い 面白い
驚いた

トラックバック(1件)

タイトル (本文) ブログ名/日時
最強ヘッジファンド LTCMの興亡 〜彼らの投資戦略
ロングタームが認めようが認めまいが、債券アービトラージの秘密はもう秘密でもなんでもなかった。1990年代後半になる とウォール街の投資銀行は殆ど例外なく、大なり小なりゲームに参加していた。大半は独立したアービトラージ部門を設け ていて、専任のトレーダーがどんな小さな機会でも見逃すまいと、市場の隅々にまで目を光らせていた。必然的に、彼らを 惹きつけたまさにそのスプレッドが擦り減っていく。ロングタームに言わせれば、証券ビジネスの困ったところは、本質的に 開放されている点にあった。誰にでも買えるし、他... ...続きを見る
投資一族のブログ
2011/01/24 21:11

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
シティグループ、転換優先株を普通株に転換 厭債害債(或は余は如何にして投機を愛したか)/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる