厭債害債(或は余は如何にして投機を愛したか)

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zoom RSS ニューヨーク雑感

<<   作成日時 : 2010/01/23 20:52   >>

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ニューヨークに来ています。ニューヨークは一見不況を感じさせない風情です。レストランはかなりにぎわっていて人気店は予約も取りづらいようですし、メトロポリタンオペラも当日ではほとんどチケットが取れないような状況です。アメリカ人自身が景気後退で問題を抱えていても、常に勝手によそから人が来てくれる、これが強い場所ということなんだろうと思います。

そういえば、メトロポリタンオペラを見に行ったら、昔にはそれほど見られなかった中国や韓国の人々の姿がやたら目立つようになりました。一方かつては結構目立っていた日本人がいまいち目立たなくなっています。「カルメン」は昨年末から新しい演出になりましたが、演出家から舞台周りまでほぼ英国のチームがやっています。そして演じるのは主役のカルメンがラトビア人、相手役ホセがフランス人、その他主な配役の全員が外国からの人(国籍までは確かめていませんが)でアメリカ出身者はいません。

メトロポリタンオペラというとアメリカの豪奢な文化の代表みたいな絢爛たる舞台装置で有名ですが、それを実際に作り演じているのがすべて外国からのひとびとであり、それを見に行く多くの人々も外国からの人である。アメリカは単なる場所の提供を行っているに過ぎない。しかし、その場所を提供することで国はお金を稼いでいく。これはひとつのモデルとして常に考えておくべき選択肢ではあると思います。金融以外が望ましいとは思いますが、いまのところ。

日本でも実は伝統芸能もといスポーツであるところの相撲が実際それを先取りしているのだと思います。演じる主力は外国人ですが、それをうまく日本の伝統に取り込んで、なんとか生きながらえています。柔道も完全な国際的スポーツとなりました。国の枠にとらわれずにやることで、本当の意味で強くなれるのだと思います。

どうすればほかの国の人々が来てくれる国になれるのだろうか?やはりそれは規制の問題でもあり、新しいものがどんどんできるというエネルギーとチャンスが底にあるかどうかという問題でもある。たとえばの話し、平均的な会社でインドの人が英語の採用申込書をもって面接に来たとき、きちんと対応できる会社はどれほどあるのだろう。仮に採用されても、その後「能力を発揮したら偉くなれる」という希望を持たせ続けられる会社はどれほどあるのだろう?アメリカンドリームはあってもジャパニーズドリームという言葉が存在しないのは、強烈なホームカントリーバイアスに加えて、」結局のところ妙な平等主義が幅を利かせているからであろうと思います。平等主義に加えて一部人種に対する差別も存在することから、日本は意欲ある人々にとってはあまり魅力のない場所に違いありません。

もうひとつは、この地においては常に緊張を強いられるということを改めて感じます。今回は現地の計らいでOという米国の有力なチェーンホテル(世界展開はしてません)に泊まらせてもらいました。しかしながら、高級感は多少あるものの、指示がきちんと守られなかったり、勘定が間違ったり、洗濯に出したシャツが破れたり、とかまあ次から次へといろいろ問題を起こしてくれます。黙っていればそれまでです。でも、そういうことを前提として客の側がきちんとクレームし、その上で最後に落ち着きどころを探るという文化を改めて感じました。実体的真実と相対的真実があるとしたらアメリカは間違いなく相対的真実(すくなくとも社会科学的事象については)の国です。刑事ですら訴訟取引があるし、ましてやこういう取引関係では交渉がすべて。いわなければそれまでの国ですね。

ただ、こういう仕組みは常に緊張を強いられる代わりに、強さを養ってくれる。日本のクレイマー達やそれへの対応とはちょっと異なる強さだと思います、平均的には。そしてそれによってどうしたらみんなが満足することができるか、さまざまな人々に対するトラブルを避けるにはどうしたらいいかという知恵が生まれるのだと思います。その前提があってはじめて多様な価値観の人々を受け入れる素地が生まれるのだと思います。

残念ながら、さまざまな形で守られて当然という日本の消費文化では、それはまず生まれない。同じ価値観のぬるま湯にどっぷりとつかった環境でお上がどんどん消費者保護という名目で強大化していきます。そしてそういう環境は間違いなく外からは嫌われます。場所を貸して成長するというモデルは、残された選択肢の数少ないひとつだと思うのですが、そういう手段まで取れなくなってしまうに違いありません。


話は変わりますが、最近のアメリカの最大の話題は、ハイチ地震もさることながら、マサチューセッツ上院議員補選での民主党の敗北のようです。この議席は民主党の有力者ケネディ議員の死去に伴うものであり、もともと民主党の牙城とも考えられていた地域で、そのうえ、知名度の多少高い民主党候補とほぼ無名の共和党候補との対決となったため、当初は民主党の楽勝と考えられていました。実際3週間ぐらい前の世論調査では民主党がかなりリードしていたといわれます。ところがその差がどんどん縮まり、ふたを開けてみたら共和党候補が逆転勝利してしまいました。判断を分けたのはただ一つ、ヘルスケア改革問題だといわれます。

私の昔から尊敬するこちらの投資銀行家は一応民主党の強い支持者なのですが、結構この結果には結構肯定的で驚きました。彼いわく「まさに民主主義がまともに機能している証拠じゃないかね」。オバマ大統領の提案している健康保険改革問題は、確かにアメリカにおける保険でカバーされていない人々が4千万人もいるという大きな問題に正面から取り組んだ点で、画期的だったし、当初は人々はその理念を含めアメリカを変えようと彼を選んだわけです。しかしながら、実際、議論が進むにつれ、この問題の複雑さと困難さ、そして解決までにかかるコストと時間の大きさが人々に認識されてきたのです。

選挙戦であくまでも改革することを訴えた民主党のベテランが負け、それについて正面から反対を訴えて戦った共和党の無名の候補者が勝った。このことは、われわれ日本人が想像する以上にアメリカにとって大きな反動だろうと思います。ほんの1年3ヶ月前に彼らが取った選択を根底から覆したようなものです。しかし、それでも臆することなく彼らはそれを選んだ。この点見習うべきだとかはいいませんが、行動様式としては極めて興味深いと思います。

オバマ大統領は一方で政府支援を受けた金融機関に対する一種のコスト回収を提案したり、報酬の問題を積極的に取り上げたりするなど、民衆の感情に訴える政策を採っています。昨日は金融機関のリスクテイクを制限する法案を提出するというニュースで、一部の金融機関の株が大きく下落しています。実はこれらの動きをオバマ流ポピュリズムと冷ややかに見る人が多いことも一方の事実であり、それはオバマ大統領が肝心の健康保険問題で行き詰ってしまっていることの裏返しとも考えられます。

さらにこれからもアメリカは大きなチャレンジにいくつも直面しなければならない。アフガニスタン、イランの核とイスラエルの関係、中国との経済問題その他、どれひとつとってもあまりにも大きな問題でしょう。ハイチの地震もメディア的にはテーマとして格好の材料であり、連日救援の様子や早速孤児を引き取る米国人の話題とかいろいろ中身の濃い報道がされています。

さて、この中でアメリカにおける日本の取り上げられ方は、ほぼ皆無といっていいでしょう。もちろんそれ以上に大きな問題がいっぱいあるからだし、金融関係者はもちろん日本の金利とか為替とかを話題として取り上げるのですが、小沢幹事長など新聞のどこにも出てきません。今日はWSJ、USAToday, NYTと3紙を眺め、さまざまなテレビのニュースを見てみましたが、支配政党の事実上の代表が検察に事情聴取がされ、状況によっては政権の存続にかかわりかねない状況でも、日本の政治状況は(一部米軍基地の話題を覗けば)まったくといっていいほど取り上げられていません。

意図的かどうかは別にして、米国内における日本の存在感がこれほどまで希薄になったことに驚きました。最初のメットオペラの例もそうですし、アメリカで事業を行う日本企業も数としては減ってきているようです。とはいえ、これまで我々は良くも悪くもアメリカとの関係だけを重視してやってきたからこそワタクシが感じるような「空白感」があるわけで、逆にアメリカサイドでは、もはや日本になどかまってられないことをはっきりと打ち出していると感じます。日本がもし新政権の下でそのようなアメリカ依存脱却という方向性を決めたということであれば、我々がそれに対応した新しい気持ちで社会の構造を見直していかないと変わらなければならないものも永遠に変わらない、というかどんどん沈んでいくだけでしょう。しかし新政権は口ではアメリカ依存脱却といいつつ、やっていることは旧来型の日本の仕組みへの回帰のように思えます。再軍備とか輸出の問題とか、なかなか難しい問題が多いのですが、困難を乗り越える覚悟はあるとはとてもまだ思えないのです。もちろん自民党においてもそうです。

話を戻せば、アメリカにしても結局のところ医療制度改革について「困難を乗り越える覚悟」を一度はしたものの、結局日和ったということなのだと思います。変化を求めるということは、とりわけ豊かさに囲まれた国では、このアメリカですらそれほどまでに難しい作業なのだと思います。変革の難しさがわかってしまった日本では今、人々はあちこちで当惑してしまっています。それがまさに今の日本の閉塞感だろうと思います。そして残念なことにアメリカもこのままでは日本と同じ強烈な閉塞感にとらわれるときが近いうちに来るような気がしてなりません。


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コメント(5件)

内 容 ニックネーム/日時
今批判の対象になっていますが、小泉政権はその新しい事に取り組んでいたと思います。良し悪しは別としてですが、当時は手探りながら新しい自由で競争する社会を目指し、そのために民間の専門家を閣内に入れたりもしていました。
転じてその後の政権は、あまりに無能な政府が自らの無能さを規制強化などで自分たちの制御下に置こうとあがいているように感じてなりません
結局、多少お調子者でもバランス感覚で国民に説明でき、人事を決められる総理大臣が生まれるまでは何も出来ず地盤沈下し、政府があがくほどに大きな政府が出来上がっていくように思えてなりません。
七さん
2010/01/24 04:30
>>こういう仕組みは常に緊張を強いられる代わりに、
>>強さを養ってくれる。
良くも悪くも大多数の日本人はそういう社会を望んでいないと思います。
私のような人間でも、そういう状況が幸せと感じられるかどうか?かなり疑問です。
40歳無職
2010/01/24 19:49
七さんさん、コメントありがとうございます。まさにご指摘の通りで、ワタクシも完全に同意です。

40歳無職さん、どうもです。お誕生日をお迎えになったということでしょうか?おめでとうございます。おっしゃる通り厳しい社会です。強いことが必ずしもミクロレベルの幸せにつながるわけではないことはおっしゃる通りです。外国の人々を入れるというのはそれほど簡単ではないがそういう覚悟があるのかという意味であえて書いてみました。
厭債害債
2010/01/24 23:14
はい、大台に乗りました(^^)

>>外国の人々を入れるというのはそれほど簡単ではないがそういう覚悟があるのかという意味であえて書いてみました。
世論の過半は、覚悟がない、と思います。
犯罪が増える、ただでさえ失業率が高いのに競争が激化する、等々。
厳しい環境で切磋琢磨して、世界で通用する人材になろうという人が一体どれだけいることか・・・

40歳無職
2010/01/25 07:45
40歳無職さん、どうもです。ある意味で日本は早く上手くやりすぎたために、その後の追い上げに呆然と立ちすくんでしまった、ということでしょうね。昔は追う立場だったから・・・。
厭債害債
2010/01/30 08:36

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