厭債害債(或は余は如何にして投機を愛したか)

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zoom RSS いんちき力(りょく)の重要性(その2)

<<   作成日時 : 2010/07/26 12:21   >>

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(前回からの続き)
つまり、より大きな惨事をさけるために、多少のことに目をつぶらなければならない状況というのは必ずあるのであって、それをいんちきだの何だのと非難しても仕方ないのではないか、ということだ。

欧州の銀行のストレステストの結果が金曜の日本時間深夜に発表されたけれど、市場の受け止め方は極めて冷静であった。今回のストレステストを含む欧州の危機対応というのは、かなり秀逸であったと思う。とりわけ、このストレステストは、専門家やアナリスト等から「甘い」という批判が発表前から続出していたにもかかわらず、堂々とその「甘い」基準で結果を公表したことは、重要だ。

けさいろいろな方々が出されているコメントを見る限りやはり「甘い」という主張が多いのだけれど、そういう主張だけでは欧州が今回発したもっと重要なメッセージを見逃しているとおもえる。

その重要なメッセージとは「政治が市場に優越することがある」ということだ。ユーロ破綻だのなんだの言う人々に対し、「オタクらは、当局に逆らう覚悟あるの?」と聞いてきているのだ。コメンテーターとして中長期的にユーロがどうなるかはワタクシとしてもきわめて懐疑的なのだけれど、実際のマーケット参加者として周辺国国債をショートし続けられるかははなはだ疑問だ。ギリシャはインデックスから外れたけれど、スペインもポルトガルも外れていない。万が一これらがアウトパフォームするとしたら、インデックス投資家でこれらをショートしていたら大負けする。5年ぐらい先にはまた勝つかもしれないけれど、とくに顧客のお金を預かっている投資顧問などは、説明に耐えられるかどうか?3年先にスペインなどが絶対だめになっていると言う保証もない。そういう状況でこれからもショートし続けますか?という覚悟を聞かれたのが、今回のストレステストの結果だと思う。

今回のユーロ危機はまさに各国の財政とユーロの仕組みとの不整合という構造的問題が引き起こしたのだが、もともとユーロが政治的な仕組みである以上、合意さえ進めば更なる財政連合といった進んだ形態に進化する可能性を100%排除できるものではない。ワタクシ自身は、長期的にはやはり懐疑的であるとはいえ、当面そういう方向に話が進みがちで、そのときにベンチマークにやられるリスク(もっといえば職を失うリスク)をとってまでショートを続ける根性があるファンドマネージャーは一部のヘッジファンドぐらいだろう。もともと政治の不整合が起こしたリスクゆえに、欧州はそれを「政治が市場に優越する」ことをかなり極端なメッセージで伝えようとしたのだろうと考えている。

前回の高速道路のアナロジーでいえば、ユーロ加盟国がスピード違反をしているからといって急停止させるわけには行かないのだ。当面はスピード違反を見逃しつつ、自分で巡航速度に調整できるように個別に指導し、気が付いたら制限速度できちんと車が流れている状況を作るのが理想だろう。この状況で英国系を筆頭とするメディアなどが声高にユーロの問題点を取り上げるけれど、それは何時間も前の事故情報の路肩規制を伝えるカーナビのようなものだ。市場のほうはむしろ厳格な取り締まりより車がスムーズに流れるような「いんちき力」を期待している。図らずも、週明けの市場が、そのことを如実に証明したのではないだろうか?とはいえ、究極的にそれがいいことなのかどうかはワタクシにもわからないが、少なくとも資産運用を業務としている以上、リスク資産の値上がりは歓迎すべきなんだろうと、ぼんやりと思っている。

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コメント(7件)

内 容 ニックネーム/日時
金融の「いんちき力」情報制御ですね。
なんとなく分かったような気がします。
しかし、日本では政府の財政破綻の話題がチラホラ出ている程度で、では日本の銀行のストレステストをやってみましょう!とはなりません。
おそらく甘いといわれる今回の欧州のテスト基準で日本の銀行をやってみたら・・・
もう大変な資本不足が指摘されるでしょう。
なにしろ国債をしこたま抱え込んでいますからね。
日本の場合、「いんちき力」に頼る段階をとうに越え、何も情報を出さない「いんぺい力」に頼らざるを得ないステージに移行しているのでしょうか・・・。

なお、蛇足ながら、渋滞とナビの関係は例えとしてどうかと・・・。
クルマヲタとしてはどうもしっくりきません。
というのも、路肩の故障車情報程度では減速する人はまずいません。
理由は「どこにいる停まっているか分からない」からです。
普通の人は減速などしないで通り抜けます。
私が危惧するのはむしろ渋滞情報ほ方です。
都市部に戻る上り線などでは、逐一渋滞が増えていく状況で、人々は、なるべく渋滞が伸びる前に少しでも先に着きたいと考えて速度を上げてしまします。
それが車間を詰めることとなり、自然渋滞が起こる状況を醸成します。
細かな渋滞情報がむしろ渋滞に拍車を掛けるという矛盾ですが、今のところ仕方のないことですね。
込んでいるときは、車間をとって速度を抑えた方が、実は渋滞が抑制できるという渋滞学の基本が多くの人に浸透しない限りは。。。
(といっている私自身は実践していませんのでw)
348ts
2010/07/26 17:34
いんちき力は乱用すると効果がだんだん減りそうなところが、まさにインチキな感じがして、面白いです。

いんちき力を使って当局の信用力が増すのか減るのか、わかりませんが、できれば上手く行って欲しいですね。
きん
2010/07/26 21:50
交通渋滞の例からの流れ、
秀逸なエントリーですねえ・・・

EU当局の力業にとりあえず感服です。
これが却って将来の禍根を大きくさせはしないか?
取り越し苦労にならないことを祈ります(^^)

日本の当局も、こういった力業で、年金は安心だと国民を信じさせることが出来ていれば、将来不安による消費減退や未納などの問題を引き起こさずに済んだのになあ・・・と思いました。
40歳無職
2010/07/27 07:09
渋滞学ですね。

「渋滞学」の権威、西成活裕東大教授が伝授!
目からウロコの“究極”の渋滞回避術
http://trendy.nikkeibp.co.jp/article/pickup/20090428/1025879/?ST=life&P=2

では、西成先生が提唱されている「渋滞を起こさない運転方法」について教えて下さい。

西成教授:まず、車間距離を十分空けることです。高速道路の場合、車間距離40mが大きな分岐点になります。これを40m以下に詰めてしまうと、前のクルマがブレーキを踏んだとき、自分のクルマもブレーキを踏まざるを得ないということが実験結果などから分かっています。でも、40m以上空いていれば、前のクルマがブレーキを踏んでも自分のクルマはより強くブレーキを踏むということがないのです。つまり、後続車に対して「ブレーキを踏む」という連鎖が強まるか、弱まるかの境目が車間距離40mなのです。言い換えれば、40m以上空けていれば、後続車にブレーキが弱まって伝わるため、渋滞は発生しないということになります。
学生さん
2010/07/27 19:36
学生さんリンクありがとうございます。私もそのサイトか何かで知りました。大多数で実行しないと効果がないんですよね。免許更新のときに無駄な教則指導をするよりも、こういう有用な情報を提供してもらいたいものです。
ま、イタリア人曰く「前の車が動き出したら間髪いれずに自分もひっついて動けば渋滞なんて起きない!」だそうですから、そういうポジティブかつせっかちな方が自分は好きですがw
348ts
2010/07/28 11:20
348tsさんどうもです。今回の場合通常の不良債権問題と異なるのは、国家(しかも複数の主要国を含む)が主たるプレーヤーであるということで、市場としては、個別の金融機関よりもはるかに権能の強い国家の行動について、必ずしも読み切れないということにだんだん気づいているような気がします。つまり、バーゼルIIIの変更などにみられるような、ルールの方を変えてしまう可能性などについて考えると、あまり戦いを挑む相手として不適当ではないか、と(あくまでしばらくの間は、ということですけれどね)。

車のたとえの件は、おっしゃる通りかもしれません。ただ、ワタクシとして、消去法でこの渋滞が何によって生じたかを考えてどうもそれしかないのではないかという結論だったのです。

学生さん、さんコメントありがとうございます。ワタクシもその渋滞学の話は読んだことがあります。確かにそうかもしれないと思います。

きんさんどうもです。これを使った結果が結局よかったという印象を市場に持ってもらえれば成功と言えるのでしょう。おっしゃる通り、何度も使うと、市場そのものの機能を著しく阻害することになりそうです。
40歳無職さんどうもです。結局、経済も財政も「信頼」を持たせることが重要です。それはつまり将来が予測可能であること、すなわちボラティリティーの低下をもたらすことであり、一つ一つ不安要素をつぶしていくことが重要なのだと思います。


厭債害債
2010/07/30 06:23
事故処理による渋滞は、通行量が多いときは一旦発生すると規制が外れてからもしばらくは続いてしまいますよ。
福島県民の車やさん
2010/07/31 00:34

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