厭債害債(或は余は如何にして投機を愛したか)

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zoom RSS 「要は誰が海を支配しているのかの闘争」

<<   作成日時 : 2010/09/25 09:22   >>

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船橋洋一氏の新刊「新世界 国々の興亡」より。

本書は朝日新聞社主筆の著者が各界のトップクラスの人々とのインタビューの内容をまとめたものである。

尖閣諸島をめぐる日中問題が盛り上がっているのだが、アンドリュー・クレピネビッチ氏(Andrew Krepinevich 米シンクタンク「戦略予算評価センター(CSBA)」所長)へのインタビューでちょうど中国の問題が取り上げられていた。

筆者が「グローバル・コモンズ」を普遍的概念と見る米国や日本などに対し、中国がその定義について米国と交渉しようとしているのではないか?と質問したのに対し、クレピネビッチ氏の答えは次のようなものでした。

「私は、そのものズバリで物事の本質を表現したいと思います。要は誰が海を支配しているのか、誰はしていないのか、をめぐる闘争だと思います。」
(中略)
「19世紀の大半、英国が海を支配していた時代、英国は自由貿易を推進することが時刻の国益に適うとみなしました。米国も海の支配を、貿易の妨害や、他国への強制の手段として使おうとはしませんでした。これは世界にとって有益なことだったと思います。」
「しかしそれがなくなると、潜在的な敵性国が海や他の「グローバル・コモンズ」を支配し、安定が失われ、これまでのルールも一方的に書き換えられる恐れが出てきます。そうなれば、日本や米国、そして国際社会の利益にならないかもしれません。」


この質疑にいたるまでには散々中国の軍拡への脅威を論じているので、この「潜在的な敵性国」というのが中国を含むことは疑いがありません。おそらく言いたいのは、だから米国を中心とする同盟国がこれまで以上に緊密に太平洋やアジアの海域の安定させる必要があるということでしょう。

もうひとつ興味深いことは、中国の人口構成がすでに一人っ子政策のせいで高齢化が見えてきており、また男女比もいびつになっていることがあせりを生んでいるのではないかという指摘。
「日本や欧米は成長後に高齢化しましたが、中国は豊かになる前に高齢化が始まりました。男女比率の不均衡も問題です。数千万人の男性が妻を見つけられず、社会から孤立しかねないのです。」
「中国の国家体制は、経済成長とナショナリズムの2本柱に支えられています。経済成長の柱が倒れたら、中国政府は他国を非難してナショナリズムをあおり、経済以外の問題に国民の関心を向けようとするかもしれません。」
(ふと思ったのだが、いまだに独裁体制を続ける中国とイスラム世界のいくつかの国とは結構近いものがあったりして。)

ともあれ、尖閣諸島問題で中国が今回過剰に反応している背景と今後の日米関係についてなるほどと思う面があったので、メモ

・・・

と、書いたところで、尖閣諸島問題で拘留されていた中国の船長は釈放されました。その後も中国は敵意をむき出しにして謝罪と賠償請求という戦争の後始末のような対応を見せています。

今回、あきらかに中国側ははじめから計画的に一連の事件を起こしてこの辺の問題の結論と「どちらが強いか」をきっちり認識させるつもりだったのでしょう。今回の一連の事件は、少なくとも今の政権のもとでは、中国が本気で領土をとりに来たら日本には打つ手がない、という事実を明らかにしたと思えます。中国が悪意を持って本気で向かってきたら、交渉は無力だと思います。もはやそれぐらいの覚悟で向かわなければ、今後も好き放題にされます。

政府は明らかに初動を間違えましたね。ことを大きくするつもりなら米軍まで巻き込んで大きくすべきでした。相手のことをはじめからスパイであり日本の防衛にたいする脅威として米軍に表立って泣きつくふりをすべきでした。なぜなら日本単独で軍事力で中国に勝てないことは明白だからです。そうでなければ、暗黙のうちにことを処理すべきでした。まあ安易に挑発に乗ってしまった、ということでしょう。本当に外交を知らないというかへたくそというか。

個人的には3000年の歴史を持つ中国としては、日清戦争で負けたことや太平洋戦争に至る過程で日本に蹂躙された歴史を忘れていないのではないか、と思います。やられたらやり返し、最終的には覇権を握る。遣唐使の時代に頭を下げて教えを乞いに来た日本人ごときに過去100年程度大きな顔をされて不愉快だったのかもしれません。

外交の力は、国としての手札をいかにたくさん持っているかですが、持っていなくても持っているふりをするのも外交の力でしょう。残念ながら日本には前者はもちろん、後者の技量も全くありませんでした。

圧倒的な軍事力の脅威を目前にした、外交能力のない弱小国の国民ができるのはただ一つ、ゲリラ戦とレジスタンスです。これも組織が必要です。我々にはそろそろその準備と覚悟が必要なのではないか、とおもいます。

あとは、多くの中立国で多少中国に強く出られる国を味方につけることでしょう。オーストラリアやほかのアジア諸国との密接な連携は欠かせません。あ、これも外交でしたね。

今回の釈放という結論の背景には、あまりにも中国への経済依存度が高いという現実があります。しかし、領土をどんどん侵食されては経済もへったくれもないわけで、やはりどこかの一線は経済を犠牲にしてでも守らなければならないのではないでしょうか?それはやはり国民一人一人がどれだけ強い意志を持つかにかかっています。はじめから敗北をみとめるなら、さっさと中国の省の一つに組み込んでもらってなんとか特区とか名前を付けてもらって高度経済成長(生活水準はいきなり落ちるでしょうけれど)を味わうという手もありますけれど、とりあえず多くの国民は拒否反応を示すのではないかと思います。

考えれば考えるほど、外交問題は難しい時期に来ているように思えます。米国と中国という二大国に挟まれた弱小国という現実をきちんととらえた外交手腕(加えてそれを実現する内政手腕)が必要となってきています。そして大前提として国民がこの現実に個人としてどう対応していくかの「覚悟」が問われています。今回の事件をきっかけにきちんとした議論が巻き起こり、国民レベルでの意識変容がもたらされることを期待したい。そうでなければこの事件はたんに不愉快なだけで、一部のハネッカエリが日本のどこかで中国の人を相手にいざこざを起こして鬱憤を晴らすだけになってしまうでしょう。


(おまけ)船長釈放のニュースを伝える際、テレビ東京の小谷真生子キャスターが中国で拘束された日本人社員4人について「人質」と報じてあとで訂正していましたが、それって、わざと言いましたよね?まあこのレベルで我々は北朝鮮と同じような国を相手に商売しているのだという認識をきちんと持たなければ・・・という警告ととらえました。

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中国が必要としている外部ブレーキと、日本...
昨日の話の続きです。中国は、謝罪と賠償を請求してきました。まぁ、ここで脊髄反射しそうになります。が、応じなければいいだけ、の話でもあるように見えるんですが。実はそうでも... ...続きを見る
ある日ぼくがいた場所
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尖閣諸島沖中国漁船衝突事件
尖閣諸島沖で7日発生した海上保安庁の巡視船と中国漁船の衝突事件はその後、日中間の様々な問題を浮き上がらせていますが、さてどのように収束が図られますやら。 ***♪中国の激昂♪ ...続きを見る
歌は世につれ世は歌につれ・・・みたいな。
2010/09/27 21:29

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コメント(14件)

内 容 ニックネーム/日時
おおむね同意するのですが、1点だけ。
中国の核さえ抑止できれば、通常戦力で日本周辺で戦う限りは自衛隊が圧倒的に上。
今回のは政権が外交音痴なのとヘタレだったということに尽きると思います。
ks
2010/09/25 12:56
今回、日本が切らなかった外交カード「国際司法裁判所への提訴」が切られませんでした。
これは中国としてはもっとも厳しいカードだそうです。
というのも、尖閣諸島の領有権を争議する際に、必ず台湾の話にならざるをえないからです。
尖閣諸島は台湾に近く、境界線を決めるのなら、日本との間だけ決めるのか、台湾との間でも決めるのか、といった具合になるのでしょう。
中国は下手をすると尖閣紛争で台湾を失うリスクを抱えることとなるのです。
いくら海洋資源があるからといって、尖閣諸島と台湾では天秤にのせることはできません。
中国をジレンメに追い込む、ないしは追い込むふりをするぐらい外交交渉をしてほしかった。

また、制裁としてなりふりかまわず資源禁輸などを行えば、WTOで提訴となることもあったでしょう。
自主防衛ができないのなら、国際世論を味方につけるような外交手腕を発揮してもらいたいです。

そして、日本政府の会見には唖然としています。
中国国民が注視しているのです。
ここぞとばかりに、日本がなぜ領有権を主張しているのか、こと細かにフリップや映像や数々の証拠写真を駆使して、メディアの力を活用して訴えるべきだったでしょう。
1970年代に突如として領有権を主張し始めた中国側の行動は理解できないというべきでした。
中国国民はもともと中国のものだと勘違いしているでしょう。
「固有の領土で領土問題はない」などと奇麗事を抜かす暇があったら、中国国民を逆洗脳するぐらいの情報攻撃をしてもよかったのではないでしょうか?

最後に、地検が高度な政治的判断を行う権限があると認めてしまったのは、日本検察制度の汚点として永く刻まれるでしょう。

つくづく日本人として残念です。
コナン
2010/09/25 13:25
私も今回の政府の対応には、非常に残念に思っています。
でも正直言って、ここまで中国がエスカレーションしてくると私は思ってもみませんでした。本当に驚きました。とにもかくにも目が覚めた思いです。

しかし、私のような素人はともかく、この事態推移を正確に予想していた識者はいたのでしょうか?
また釈放後更にこのような挙に出てくると予想していた方は?
すべて政府の責任と言えば、まさにその通りなんですが、一般国民はともかく、したり顔でマスコミに話をしている政治家などを見ると、お前ならうまくやれたと言うんかい?と突っ込みをいれたくなります。
mushoku2006
2010/09/25 19:46
政府がどのくらい中国の圧力に耐えられるのか見ていましたが、あっという間に陥落でした。
早いうちに民主党政府の実力がわかったことが不幸中の幸いでした。
国民一人一人に今できる対抗手段は?…私が今できることは中国製品の不買くらいなものでしょうか?
すなみ
2010/09/25 22:34
お初にコメント致します。こちらのblogの更新を楽しみにしている読者の一人でございます。

軍事に関しては私も ks さまの上記コメントに全く同感です。自国が諸外国から一目おかれる軍事力を保有しながら大多数の国民がその事を自覚していないというのは不幸な事だと思います。相当な見識のある方でもこういう事は珍しくありません。

軍隊は義務教育の社会の教科書で教えるべき事柄だと思っております。
奈良の鹿
2010/09/25 22:56
>個人的には3000年の歴史を持つ中国としては、日清戦争で負けたことや太平洋戦争に至る過程で日本に蹂躙された歴史を忘れていないのではないか、と思います。

というか、日本が暢気に忘れる唯一の国民のようです。独仏、英仏、蘭独、ロシアとポーランド、ユダヤとイスラム、という歴史的犬猿カップルも多々ありますし、蘭はインドネシアの件で未だに嫌日が多いので有名です。アメリカ人も意外と日本人嫌い多いし。

作家の塩野七生女史が昔から書いてますが、日本人は外交を「社交」と間違えてますよ。外交官からして。マキャベリの「君主論」を彼らは読んでないでしょう。「外交とは武器を使わない戦争である」という格言を日本の政治家も官僚も知らな過ぎです。

「会議は踊る」の映画で「外交官の仕事とは酒を飲んでダンスをすること」だと思った日本人も多いようですが、あれは単なる大規模なデコレーションだったってことを国を動かす人間が知らない、というのはあまりにも嘆かわしいことです。なにせウィーン会議は4ヵ月かかったけど利害調整が済んでちゃんと議定書が締結され、ウィーン体制がクリミア戦争までの約40年続くわけですから。

まるふう
2010/09/26 23:09
我が日本の外交の弱さは 筋金入りだね。
自衛隊も悔しがってるよ。
何の為の自衛隊か、自国の独立と平和を守るのが、政府ではないかとおもいます。、
太郎
2010/09/26 23:28
私も今回の日本の判断は本当に残念に思いますが、ここで強行に出られるだけの覚悟と自覚が、別に政府や政治家だけでなく、国全体に足りなかったのだと思います。それでは極論として国の主張を通すために日本人社員4人を犠牲に出来るのか、経済活動への影響を受け入れられたのか。中国がこういう国だと本当に分かった上で中国進出し、駐在員は中国国内で行動していたのか。
(もちろん覚悟がないのであれば船長は自民党政権のうようにさっさと返しておけば良かったのでしょう、民主党政権には覚悟がないという自覚すらなかったようです)
そして、国家間のことというのは最終的には、自国しか自国の国益を追求出来ない以上、国益を守るために何が必要なのか。民主党には与党である以上頑張って欲しいのですが…ちょっと難しい気がします。
せでぃあ
2010/09/27 03:15
私も最初は、中国そして日本政府の対応に憤りを覚えましたが、そもそも今まで中国漁船は追い払っても拿捕・船員逮捕までしなかった日本の海保が、なぜ今回は執拗に追いかけて公務執行妨害→逮捕に至る事態となったか、ということも考えてみるべきかと思い始めました。

船長の釈放を決めた地検の判断に、政治が介入したかどうかが話題になっていますが、政治問題化が容易に予想される海域で、逮捕に踏み切る判断を現場の海保レベルでホントにできるのでしょうか?

沖縄の米軍基地保全派の巻き返し、結果を深く考えない民主党政権の強がり、…いろいろ想像できますね。
お染
2010/09/30 12:44
初動を誤ったことは同意見ですが、中国が首相も舞台に上がり、人質までとった状況になった状況からは、米国から尖閣は安保対象の確認を得たうえでの釈放は、少ない選択枝のなかではやむを得なかったのではないかと考えます。

現状、日本には命を賭してでも守るべきものがあるという認識を持たない層が一定数います(無防備地域宣言を議会で可決する自治体が複数存在)。その状況下で人質の処刑や新たな人質が追加された場合、「無人島よりも人命を尊重するべき」みたいな街角インタビューが放送されまくり、国内世論も変な方向に向かいかねないと考えます。

とにかく中国を近寄らせずもめ事を表面化させず、地道に国民の国家主権に対する意識を高めて、独力でも尖閣を死守することを示せなければ、それこそ永遠と中国からの侵略は続くのでしょう。
ひゃく
2010/09/30 19:18
レアメタルの禁輸なんて、はっきりいえばイランに対する経済製剤と同じ戦争行為であるのをしっていながら、誰もいわない。abcd包囲陣は日本の死活的な資源の禁輸から始まったことを考えれば、戦争行為の一歩手前であるということを日本政府は知るべきですな。
その点中国は一歩も二歩その意味を知った行動原理で動いています。あーあ日本外交は。
karu
2010/10/06 23:28
いつも勉強させて頂いております、有り難うございます。

世の中はバランスが保たれることで存続しているので
中国が覇権を握ると、金融バランス・軍事バランス・自然環境のバランス等が崩れて、世界は貧困と内戦続きになり
地球を食いつぶして人類は早く絶滅しそうな気がします。
米国も完璧からはほど遠いけれど、宗教観の違いから
求めるものは経済的利益のみと割り切っているので
民族浄化等の破滅的な事は起こりにくいと考えます。

現在の通貨安競争や軍事等の問題は、単なる米中対決ではなく
地球や生命活動のバランス・・・というように大きな事のように思います。
toriumi
2010/10/17 18:45
ニッチュ両国様とも、なんか一部盲動的な方々を気にしすぎて初動を誤り、にっちもさっちもという感じですね。両国首相も「大同小異」なんて言葉しってるかな。お互いに痛いところがあれば、なんとかせんと。
何かあれば、内陸での学生デモだの、某国大使館に恫喝だの、誰が得するか考えてみれば、こういう数年前のステレオタイプなやり方はだめって両国政府のまともな人間はわかっているとおもうが。こういう時には、強硬派が最後のかけに出るので、後は両国の馬鹿マスコミは信じないで、国民達の自覚と民度で勝負でしょう。世界というか欧米はワラってみてまっせ。
日中両国は子々孫々の友好を
2010/10/19 00:33
みなさま、コメントありがとうございます。まとめてで失礼します。
最近の中国の行動はレアアース禁輸先拡大や利上げなど読みづらいことが多いのですが、さまざまな点で国内の世論コントロールに相当配慮しているような気がしています。指導者移行と何らかの関係がありそうな気がしています。中国の行動は世界標準からは(ある意味当然ですが)極めて異質であり、過去の常識が通用しない部分がありますが、その規模が極めて大きく合理性を欠いた状態を比較的長く続けるだけの体力と力による統制があることは、今後経済、政治、環境という点で予測不可能な時代が長く続く可能性がありますね。
それにしても中国は、今のような独自の体制からの出口をどこかで見つけるか、世界を「中国化」するかの選択をいずれ迫られると思うのですがどうなるのでしょうか?
厭債害債
2010/10/21 06:19

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