厭債害債(或は余は如何にして投機を愛したか)

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zoom RSS 金融庁、地銀に特別検査

<<   作成日時 : 2017/03/09 09:40   >>

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http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS08H5A_Y7A300C1MM8000/?n_cid=NMAIL001

もともと地銀に対しては現在の森長官がそのビジネスモデルに対して強い疑念をあらわにしており、ことあるごとにこれまでからいろいろなところでそれを表明してきたところで、恐らく森長官の頭の中ではすでに多くの地銀のビジネスモデルは破綻していてよっぽど進んで地域金融の活性化などに取り組んでいるところでなければ残す必要はないという考えが出来てしまっているのではないかと思います。

先日は、日経にも出ていましたが、生保(この業態も森長官からすると「運用の下手な業界」として「運用の高度化」をさせていかなければならないらしいです)が地銀の株を保有する事と見返りにいろいろな窓販商品を売らしているのではないかとか、そういう実態にメスを入れるとか、書いてあったように思います。生保協会でも話していますし、別のところ(あまり直接関係のない業界団体)でも「顧客本位の業務運営」とからめて同じ話をわざわざしているというところが、相当気合が入っているところでありますが、これも一見生保を責めているように見えて、実は地銀をターゲットにしていることは明白です。

本日の日経1面の記事「金融庁、地銀に特別検査」もその脈絡ではあまり違和感はありません。金融庁の検査情報は、私は若い時に口を酸っぱくして言われていますが、やるやらないも含めて内容などを外部に漏らしたら手が後ろに回る(まあ大げさですが)、というものだと思っていたので、今回の記事は金融庁が意図的にリークしたものであろうと思われます。本当にありとあらゆる形でプレッシャーをかけてくるものだと感心します。

今回のテーマは「資産運用」のようで、きっかけは、トランプ大統領当選後の米金利上昇によって外債の金利が急上昇し、それによって、(利回りを稼ぐためにヘッジ付などで保有していた)外債の含み損が膨らんでいるということのようです。
確かに、ワタクシもこの話はあちこちで耳にするので、記事にも出ている静岡銀行さんなどは堅実経営で知られるところですが、そこがこんなに損失を出しているということはまあ確かに監督する側としては非常に気になるところでしょう。ただ、問題の所在は地銀だけかというと、信金や信組も多分似たり寄ったりで、個別にみればかなりのリスク(為替、金利など)をとってしまっているところがあります。ワタクシが聞いた限りにおいても日本の金利が上がり始めた昨年後半ぐらいに0.4%を超えた20年国債を大量に買い込んでいる信金さんもありましたし、バーゼルIIIのアウトライヤーに結構引っかかってくるところも出てくるのではないか、とかあります。その中で地銀を狙い撃ちにしているのは、やはり先ほど書いた通り、地銀のビジネスモデル(あるいは意義と持続可能性)について金融庁長官が強い懸念を持っているということなのだと思います。ちなみにいわゆる系統金融は、最後は親許(信金であれば信金中金)が多少面倒を見ます。そもそも系統預金という一定の利回りを保証された預け金が親元に対して出せます。本当にやばいところは、必要に応じてめんどくさい理事長などを説得し、周りの金庫などとくっつけたりして救済するというイニシアチブを系統の中央機関がとることが出来るので、個別の金融機関の規模がそれほど大きくないこともあってその意味でシステミックリスクは大きくありません。しかし、地銀はそのような中央組織もなく、放っておくとよくわからないことになりかねないので、こうやって釘を刺しに行く、ということなのでしょう。

ただ、ちょっと記事の内容が本当に金融庁の意向そのままだったとしたら、二点ほどワタクシ的にはやや違和感があるところがあります。
「検査では、頭取など経営トップがどれだけ運用部門に主体的にかかわり、判断しているかも調べる。」と記事にはありましたが、確かにガバナンスという意味ではそうなんですが、経営者のガバナンスが強すぎると昔どこぞの生保のようにxx一族の経営者が資産運用の細かいことまで口を出して結局潰れたという事例を思い出すので、本件に関してはトップがうんぬんよりどれだけ合理的な経営判断として外債の増加を認めたかというのがあるべき経営者に対する問いかけだと思います。まあきっとそういう意味だと思いますが。

もう一つは、「本来は売却して損失を確定すべき債券を放置して、含み損が膨らむままにしている事例もあるという」という記載。金利を稼ぐために投資したのであれば、あまりばたばたと売り買いするものではないようには思うので、読み方によってはちょっと誤解を招きかねないなぁと。たしかにリスクをとりすぎている場合はそうでしょうが、外債であっても、償還は外貨100%で帰ってくるので、ヘッジのベーシスリスクをしっかり管理できていれば、満期保有などを使った損益管理はできると思うのです。まあ今の環境だとベーシスリスクそのものがしんどくなってきているし、その他保有目的だと結構苦しいかもしれません。

そもそもなんで地銀が外債に走ったのか?ということが問題なわけで、金融庁は、一つの地銀(公的資金受け入れ行)の事例を推奨事例としてあげていて、こういうのが地銀としてとるべき行動だと言っているのですが、それは「顧客情報共有による(顧客の)本業支援強化」「顧客との対話の充実に向けた業務効率化」「戦略的店舗人員配置」「提案力重視の人材育成」「ガバナンス改革(社外取締役を過半数にするなど)」というもので、こういうことを行った結果もともと「地域密着型金融」を行っていた当該地銀の「貸出先数、貸出残高ともに着実に増加」したというのです。
(この銀行が公募増資をしたところ内外の投資顧問会社等から6倍を超えるoversubscribeだったのに、生保などはケンもホロロだったとかまあ返す矢で生保もdisることをしっかりと忘れてはおられないのが長官クオリティ。)
どちらにせよ、投資家の評価したのはこの地銀の地元の隣の県でのポテンシャルの高さなので、隣の県を地元とする金融機関との食いあいが予想され、地銀の貸出市場全体が苦しいことには違いない。仮にこの地銀のビジネスが「いいビジネス」であったとしても、それが今あるすべての地銀で成立するかというとそんなはずはなくて、いまの金融環境、資金需要環境を考えたときに、全体としての地銀が一定範囲淘汰される、という結論は変わらないのです。そのなかで、目先の期間収益を稼ぐべく、外国金利リスクをとってクレジットリスクに問題のない米国トレジャリーなどを為替リスクをヘッジしながら投資するというのは、工夫しているように見えて、この時代においては一種の思考停止行動です。10年ぐらい前なら、日米金利差や両国の長短の金利差ギャップがヘッジ付外債のエコノミーを十分に成り立たせていましたが、ここ数年の金利環境の中ではまあ自殺行為です。地銀や地域金融機関のみならず一部保険会社でも投資先に困ってヘッジ付外債を増やすという似たようなパターンがここ数年流行していたのですが、いずれにしてもそのような行動に走らざるを得ないほど、収益が厳しいなら、商売辞めたらどうですか、というのが金融庁のメッセージなのだと思います。そういう思考停止は許されないというスタンスを明確にしているのでしょう。

とはいえ、地銀の肩を持つわけではありませんが、そもそも根っこにはやたら「第一の矢」にだけ頼る機能不全のアベノミクスと、市場を驚かせすぎる予見不可能な行動をとる日銀という存在もあるので、もし金融庁に余裕があれば是非、アベノミクスの本質にまで立ち返って安倍首相や日銀も検査してもらいたいものだとは思いますけれどね(無理)。

余談ですが、記事にある「複雑な証券化商品」ってたとえばREITとかCLOとかでしょうか?要するに中身をきちんと理解して投資しているかどうかを調べられるのだと思いますが、今後マーケットに妙な波及効果を及ぼさないよう、祈るのみです。

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コメント(1件)

内 容 ニックネーム/日時
いつも楽しく拝見しています。
小生感じたことは、イザ何か起こったときの金融庁のリスクヘッジなのではないかと軽く考えていました。
確かに久しぶりの金利上昇局面ではあるわけで、経験者も減っているはずですし。
BOND(冬眠中)
2017/03/09 12:55

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