厭債害債(或は余は如何にして投機を愛したか)

アクセスカウンタ

zoom RSS 責任ある投資家と議決権行使助言会社

<<   作成日時 : 2017/07/19 17:49   >>

ナイス ブログ気持玉 2 / トラックバック 0 / コメント 0

日本版スチュワードシップコードの正式名称は「責任ある機関投資家の諸原則」と言います。こうした原則が平成26年2月に金融庁から公表され(改正版は今年5月)、機関投資家や運用機関などがこれを受け入れるかどうか判断し(事実上は公的年金などが委託の前提としていることもありほぼ強制的に受け入れることを余儀なくされ)、受け入れる場合はそれについての態勢を整備することを要請されています。このコードのなかには議決権行使の重要なポイントも記載されています。
http://www.fsa.go.jp/news/29/singi/20170529/01.pdf

金融庁が求めているのは、議決権行使が株主ガバナンスを通じて経済にプラスのフィードバックを与える重要な機会であることに鑑み、きちんとした方針を示して、別の項目で求められている「対話」とあわせて実態を見つめたうえで行使することを求めています。
「形式的な判断基準にとどまるのではなく、投資先企業の持続的成長に資するものとなるよう」行使する事が求められているのです。

しかし、実際のところは、保有株の銘柄数が多いうえ、株主総会の時期が集中しており、同時に多くの議案について深読みして判断すると間に合わないし、そのためのコストもばかにならないということから、ISSやグラスルイスなどの議決権行使アドバイザーに一定の判断をしてもらうところが多いように思います。問題は、そうしたアドバイザーたちが本当に意味のある仕事をしているのかどうか?ということです。

日経新聞の7月12日号では「総会 黒子の正体」という特集記事があり、ISSについての記事が載っています。ISSの活動や中身に対する疑問の声が多く出ています。当該記事では「(ISSと)企業との間で摩擦が絶えないのは、ISSが自社基準を重視し機械的に判断しているからだ。」「約9割の議案で賛否が機械的に決まる。」「企業との意見交換は年100社程度にとどまり、企業の個別事情はほとんど考慮しない。」と断じています。

更にこの記事で初めて知ったのですが、「議案数は延べ1万前後だが、日本法人の正社員は数人」で「総会前に臨時社員を雇いデータを一斉に入力」しているのだそうです。さてここでふと疑問がわくのですが、同じタイミングであらゆる株式運用部門の担当者(アナリスト、ファンドマネージャーなど専門家)は同様に大量の議案の精査に忙殺されているわけでして、世の中に暇なプロはほとんどいないと思いますが、一体どのようなクォリフィケーションの人を臨時職員として採用しているのか、非常に興味あるところです。どちらにしても、結果を見る限り企業との摩擦が絶えないというのは、記事にもある通りろくに対話もしないで議決権行使のアドバイスをやっているところが多いということなのですが、これって、金融庁様の勧めるスチュワードシップと真っ向から対立するものではないのでしょうか?いやしくも、金融庁様が投資家の対話や議決権行使を含むスチュワードシップ活動を経てコーポレートガバナンス改革を通じて経済を良くしようと努力されているわけですから、議決権行使のアドバイスを行う会社(しかも有料で)は最終投資家の対話や深い考慮を完全に代替するレベルの業務をやってなければ、その存在価値はないか、むしろ「いい加減なアドバイス」「機械的なアドバイス」によって経済や社会に害悪すらもたらしかねない存在となり下がってしまわないでしょうか?

金融庁様がここまで鼻息荒くやってなければ、まあ手間を省く存在としてそれなりの価値は議決権行使アドバイザーにあったかもしれません。しかし、金融庁様が国策として取り入れてほかの機関投資家や運用会社がその対応のために必死で体制やら中身の整備をしている中で、相変わらず金をとって機械的なやっつけ仕事のアドバイスをやるところについて、金融庁様は真っ先に検査に入り、まさにその内部統制やガバナンスの態勢などについて、きっちりと検査し、本当にそのスチュワードシップコードの趣旨に合ったアドバイスが提供されているのかどうか調べる必要があると思うのです。

しかも、ISSの親会社はいわゆる投資ファンド(ベスタ―・キャピタル)です。2014年まではMSCI(モルガンスタンレー・キャピタル・インデックス=株価等の指数の提供会社)が所有していたのですが、ベスタ―キャピタルが買いました。ベスタ―は一応PEの会社とされますが、マネジメントバイアウトなども助言するなど、決して上場会社とも無縁ではない。まさに利益相反の問題とかもっと言えば国際的利益を巡る攻防の真っただ中の利害関係者となりかねません。その辺の利益相反防止体制はおそらく形の上ではできているのでしょうが、格付け会社やメディアと一緒で、ついつい自分の影響力を妙な方向で行使してしまう可能性は捨てきれないと思います。

スチュワードシップコード自体にも議決権行使助言会社についてわざわざ記載されており、本コードの対象とはなりますが、あくまで、まあ当然とはいえ、最終的な責任は機関投資家なり運用会社にかぶせられるような書き振りです。しかしながら、議決権行使がスチュワードシップすなわちアセットオーナーやそれに代わって運用を行う機関における極めて重要な行動要素として位置付けられた以上、それを助言する機関についても、同様の監督がなされてしかるべきだと思うのです。もし運用会社と同等の責任を負わないとか、全く議決権行使にあたってろくに企業も調べないでアドバイスするような主体であれば、そもそも金をとって業務を行うに値しないと思われますので、あらたなコードの制定を機に、金融庁様におかれては「深度ある」監督の対象としていただきたい。そうしないと、せっかくのお題目が空疎なものに終わってしまうでしょう。また、本当に新聞にあるように総会前に季節労働者でやっつけ仕事で9割の議案を処理するようでは、やはり問題だと思うのです。そしてもっと重要なところとして、その利益相反防止体制については特に速やかなる当局によるチェックが必要と思われます。別にそのような会社の意味を頭から否定するつもりはなくむしろそうした主体が、全体の制度設計のなかで上手く機能するようなコントロールが当局に求められるのだと思います。

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 2
ナイス
ガッツ(がんばれ!)

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
責任ある投資家と議決権行使助言会社 厭債害債(或は余は如何にして投機を愛したか)/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる