証券化商品の評価について会計士協会から出た文書

http://www.hp.jicpa.or.jp/specialized_field/post_970.html
日本における証券化商品の評価について会計士協会副会長名でコメントが出ています。

正直申し上げて、この時期にこのような内容の指示を出す当該協会の意図がわかりません。

今回の「インフォメーション」ですが、副会長名で出しており、事実上の拘束力を持つと思われます。

ポイントは、市場価格がない場合の時価のとりかたについて。
すでにご存知のようにCDOなどの証券化商品が殆ど値段がつかない状態であります。今回のインフォメーションによれば、もともと「証券化商品に市場価格がない場合の時価」で「自社の合理的な見積もり」が困難な場合」は「ブローカーから入手した価格を合理的に算定した価格とすることが出来る」わけですが、「証券化商品について流動性リスクを十分に考慮せず、信用リスクの評価に過ぎない格付けのみに依存した価格評価を行っている場合などは時価としての妥当性がないと考えられる」とかかれています。なるほど。

で、「時価とは、「公正な評価額」であり、金融資産の公正な評価額は取引の当事者が当該金融資産を売却又は取得することによりその時点で現金として受け取る価額又は支払う価額であるということに十分留意して時価としての妥当性を判断すべきである」。まあそういう言い方も出来るかもしれないですね。

さらに、
「このような点から、少なくとも企業がブローカー等から入手した時価がどのような前提によるものかを確認する必要がある。」
「一社のブローカーだけでなく、必要に応じ、複数のブローカーから時価を入手するなどして、企業がより合理的な時価の入手に努めていることを確認すべき場合もある」。

問題は、これがもたらす影響度がかなりあるのではないかということ。
これからどういうことが起きるか?そもそも問題の発端は、自社モデルがあるところでもそれでの価格と異なる市場価格(事実上存在しない)になっているわけですから、自社での価格検証だけでは会計監査を通りにくくなります。このインフォメーションに書かれているようにとにかく市場で売買出来る価格というのが唯一の基準になってしまう。ブローカーに価格を聞きにいくだけではだめで、流動性まで含めた価格根拠をとらえる必要があるわけですが、ブローカーだって価格モデルに流動性リスクプレミアムまできちんと入れられる可能性は薄いと思います。となるとビットが最終価格となります。

さらに、具体的なやり方として「複数のブローカーから時価を入手」することを推奨しているのはかなりヤバイというか暴挙だと思いますね。そもそも複雑な仕組みは他のブローカーではわからないとおもわれ、見積もりにせよ価格を出してもらうためには購入もとのブローカーに協力してもらって仕組みを全部さらけ出してお願いするしかないのですが、そこまで協力が得られないケースも多いと思います。

もっと恐ろしいのは、このインフォメーションを総合的に解釈してパニックに陥った金融機関(決算時の価格が読めないから)が複数のブローカーに「ファームビッド」(相手が確実に買い取ることを保障する価格)を取りに行くことです。証券界の慣行として自分が販売した商品を引き取れないというのはなかなか言いづらいと思われますが、それでも現在の流動性のない市場で引取りを強制されるとなれば、相当安全を見越した(というかどうでもいいような)価格を提示する可能性(たとえば額面の10%とかてきとーに)があります。一旦そういうファームビッドを出してしまいある会社がそれをベースに決算をやると、他の会社にとっても証券会社にとっても類似の商品に全く違う価格をつけることが困難になる。

ワタクシが苛立ちを隠せないのは、ある意味行き過ぎた時価主義が市場を壊すという問題以前に、この時期(決算期直前、かつ証券化商品の流動性が枯渇し、金利市場でアブノーマルなプライシングがなされている時期)にこういう文書を出す会計士協会の見識を疑うからです。

3月26日という日付は多くの企業が決算のための数字を固め終わっている時期でありますし、これが人々の目に触れる本日27日は国債だって受け渡しはすでに新年度入りしてる。明確なルール変更ではないのですがつまりもはや対応不能な状況での会計ルールの変更とも言えるわけです。勝負ではないですが、後出しじゃんけんですね。

さらに、企業監査を通じて経済のフェアな発展の一端を担う会計士が物事の本質を理解しないままこういう行動に出ることが、恐ろしいです。ワタクシの知っている会計士さんたちはそれぞれ優秀な方々ばかりですが、最近の様々な事象で自分たちの身の安全まで脅かされる状況が続発しており、極端な保身に走っているように見受けられます。今回のメッセージもその文脈で理解できそうです。更にさかのぼれば、現在の会計監査人のコントロールは金融庁の下にあります。結局のところ、実態もよくわからないまま外国の一部の事例を吹き込まれた金融庁の人々が会計士に圧力をかけたとも考えられます。金融庁としては、これを期に弱小金融機関が淘汰されればオーバーバンキング解消への助けとなると考えているのではないかと疑ってしまいます。そこには経済そのものへの配慮とか市場への悪影響とか本来会計士なり金融庁も考慮すべき事柄が全く検討されたふしがありません。

もちろん時価とは今売買可能な価格である、というのは真理の一面ではありますが、市場がないことをどのように評価するか、この点においてもう少し議論が必要でしょう。すくなくともこういうことは通達のように一律日本全体を縛るようなやり方ではなく、個別企業が証券化商品に係わっている度合いとかそれが業績に与える重要性とかを個別に判断すべき段階ではないかと思っています。

ちなみに最悪の展開は:
この通達を見た某金融機関が決算期前に投売りする。価格が10%とか20%とかつけられ、それがその銘柄及び類似銘柄についての「取引実勢」となり、多くの金融機関の損失が一気に膨らむということです。ちなみに現在AAA格のCDOなら少なくとも60-70ぐらいで評価しているところが多いのではないでしょうか・・・(よくわかりませんが(汗))

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この記事へのコメント

ttori
2008年03月27日 21:48
このタイミングでこれですか(絶句)。
タイミングを見計らって出したとしか思えないですね。それでなくても株の減損が出ているところも多い(<まあ持ち合い復活させてやられているところは”じこせきにん”だと思いますけど)上にこれでは決算が悲惨なことになりそうですね、、。
紺ガエル
2008年03月27日 22:25
時価なんて、ただの共同幻想なのに。
何を言っているんだ、って感じですよね。
証券化商品ばかりでなく。
流動性が高い、とされているJGBだって、共同幻想ですよ。

例えば。
年度末に1強でJGB30年債が引けたとして。
そこで値洗いして、評価損益計算しても。
仮に5000億円分、その銘柄持っている投資家が。
1強で値洗いして、いい訳?
5000億円分売ったら、当然暴落しますよね。
流動性プレミアムを考えろっていうなら。
当たり前だけど、「いくら保有しているか」「いくら買う/売るのか」という情報がなきゃ、ブローカーディーラーは値段出せない。だって、サイズ大きけりゃ流動性プレミアムが増加するわけですから。

あほらしいですね…。
北の書生もどき
2008年03月27日 23:42
ttoriさまと全く同意見であります。
08/3月期決算・・・嵐の予感?!
SOS
2008年03月28日 00:41
害債さんのおっしゃられること、全くごもっともだと思います。当該文書の「複数のブローカーから時価を入手」など、私が見ても違和感のある箇所がありますが、恐らくは、この文書を起草された方は、会計の事は詳しく知っていても、害債さんがここで書かれているような証券化商品の取引の実情をご存じではないのでしょう。
金融業界と会計士業界で某国の国会のように足の引っ張り合いをするのではなく、取引の実情を踏まえた妥当な落とし所を探っていくようになれば良いとは思うのですが、害債さんの想定されている最悪の状況も全く有り得ないとまでは言えないですが、せめて「パニック売り」が発生しないことを祈っています。
2008年03月28日 03:38
ttoriさんコメントありがとうございます。タイミングについてはかなり確信犯だと思っています。

紺ガエルさん、コメントありがとうございます。まさにその流動性プレミアムのところについて、この会計士協会の文書は自己矛盾を起こしていると感じ手います。流動性のないことがわかっているものにあえて市場価格なるものを無理やりつけさせようとしているわけで。本来は価格が取れない未上場株みたいな扱いにすべきなんだろうと思います。

北の書生もどきさん、どうもです。期末マジで悪寒ですね。

SOSさん、どうもです。もしかしたら、この通達文書は確信犯かもしれないという疑問もあります。あまりにもタイミングがよすぎるし、まさか会計士業界の上のかたがたが、証券化商品市場のじっさいを知らないなんてことはありえないと・・・信じたい・・・。
ちゅう
2008年03月29日 08:33
会計ルールが変更されても、経済実態は同じなわけですから、本質的な問題は会計上の数字に右往左往してしまう経営者や投資家なのではないでしょうか。バフェット曰く --- Accounting consequences do not influence our operating or capital-allocation decisions.
史上最低の馬鹿規制官庁
2008年03月29日 23:10
まーこの人たちは前回の金融危機の時も、国が滅びてもりっぱにコンプライアンスする人たちですよ。経済は生き物なんてしらないのですよ。
時価を知らずに、決算期にこんなことやるなんてね。どっかの国から金もらってのか、きさまらは。
史上最低の馬鹿規制官庁
2008年03月30日 17:00
もう一言いえば、この時期にこれをやっても経済状況に何も意味ないとうことですよ。で日本経済がこの先どんな状況になっても、最後は自分はりっぱに役目をはたしましたっていうんだろーね。さすがです。苦しんでいる時にまだ規制強化ですか。
まるで、敗戦が決まっている中で国民を監視し弾圧する憲兵隊員か、B29の空襲下で竹やり訓練やらセル在郷軍人みたいね。でこいつら敗戦後はGHQにうまく取り入るとこまで一緒かね。どうしようもねーな。大蔵時代は規制と政策官庁のバランスとれたけど、今じゃ規制一色挙句の果てに検察寄りだもんな。
ろじゃあ
2008年04月01日 02:45
すいません、もっとストレートに書きたかったんですが、意気地なしなもので(苦笑)。
日本ほどトラックバックさせていただきました。
決算数字の話だけでなく、このタイミングの影響というのは、取締役の注意義務の問題と、その余波。さらには内部統制報告書の内容とそれへの監査の問題まで波及する可能性があるのではないかなあと。
でも社長さんたち総会の主役の方々からすると、総会でこの件について質問があったときの回答というのも結構大変だと思うんですけどね。
2008年04月01日 12:34
ちゅうさん、コメントありがとうございます。まさにおっしゃるとおりなのです。それだからこそ、この時期にこういうことをされて余計なノイズを市場にばら撒かれては困るのですね。

史上最低のXX規制官庁(一部伏字)さん、コメントありがとうございます。大蔵時代のほうがバランスが取れていたという見方は当社のなかにもかなり強くありますね。

ろじゃあさん、どうもです。おっしゃるとおり経営者側の責任問題とも絡むのでしょうかね。でも会計士さんがそこまで気を使ってくれているとは思えないんですが。
2008年04月01日 12:36
ろじゃあさんへの追伸です。3月期決算では、大方の企業ではサブプライムや証券化商品への開示そのものは従来よりも踏み込んだものになると思いますよ。
ろじゃあ
2008年04月02日 09:14
厭債害債さんへ
ありがとうございます。
ええ、そうだろうと思います。
そんで結局持合とかの関係が出てきてまた余波が・・・ってことにならないといいんですけどねえ・・・。
今回は円高と株安と投資対象の有価証券(サブプライム関係?)の評価損等の金融面のお話と、製造行間系の素材の価格高騰の話がいろいろと絡んでくるんで、経理・財務畑の方々ホント大変だと思います。でも会計士の先生も大変だよなあ・・・というのが(2)になります。重ねてのトッラックバックすいません。
また勉強させてください。

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