国際会計基準のこと

専門家のお話を聞く機会があった。よく整理されていて、問題点やら論点が頭にすっきりと入ってきた感じである。とはいえ、いくつか新たに疑問を覚えたこともあり、忘れないうちにメモとして残しておきたい。

まず、講師がおっしゃっていたのはIFRSへの移行というのはこれまでのルールベースからプリンシプルベースへの対応を迫られるということだ。そしてIFRSの最終的な解釈は解釈委員会であるIFRICだけが行うことができるのであり、これまでのように日本の会計士協会や金融庁においても権威ある解釈を提供することができないという点だ。つまり「基準に明示的に示されていないことを自分たちで判断する必要」があるし同じような金融商品やビジネスをやっていても会社によって扱いが異なることは(会計士との関係がプリンシプルベースゆえに解釈の余地があるが故)十分ありうるということだ。

負債性の金融商品を取り扱う我々の業務において、このことは極めて重要な意味を持つ。それは一般に負債性の金融資産の分類および測定はIFRS9によってビジネスモデルテスト、キャッシュフローテストなどを経て公正価値(時価=P/L)評価か償却原価評価か決まってくるのであるが、ここでいうビジネスモデルテストについて、必ずしも数値などで明確な線引きがなされないから、結局担当会計事務所との交渉事となってくる可能性があるのだ。それゆえ、上記のように同じ業態で同じ金融資産を持っていて同じような取引手法をとっていても、片方は償却原価で他方が公正価値評価ということは十分起こりうるのである。

まあそれはいいとしても、そもそも論として、いったい何のために会計基準を統一しようとしているのか、という原点の議論が忘れられているのではないか、とちょっと思った次第。というのは上記のようなことが起こりうるとなるとルール適用の安定性を著しく損なうし、外部から見た比較可能性や客観性も失われるのではないかと思う。本来国境を越えた取引の安定性、国際企業の比較可能性といったものを目指していたのなら、逆にそれを損なう結果となってしまうのではないか、とふと思った。

もう一つは、なぜ「上場企業」すべてに強制適用するのか、という点。そのことは今日「連結ベースでIFRS,個別ベースで国内基準」といったものが日本のロードマップとして提案されているというお話を聞いて余計にそう思った。つまりどちらにしても二つの基準を残すのであれば、域外取引と全く関係ないとか海外の投資家に全く関心を持たれなくてもいいといった企業にとっては国内基準のままで問題ないんじゃなかろうか、ということだ。

ワタクシは法律系の人間だから会計は基本的に素人だが、法律の世界では国際商取引での統一ルールはあっても各国の国内民商法は必ず残っていることを知っている。法律にはそれぞれ抱える国内の背景があるし、その違いはそれぞれが尊重することにしないと国対国の上下関係が生まれるからだ。だからこそ、理想的には世界統一法が望ましいとしても、現実には「最低限必要な範囲で」統一法を作るという動きになる。しかし会計の世界は法的規範と極めて近いにもかかわらず、統一というところにやたら強引かつ拙速に向かっているように思える。

もちろん国際的な資本調達を目指し国際取引を頻繁に行う企業は、取引の相手方への配慮としてお互いに国際統一ルールでやるのが望ましい。しかしながら、純ドメの上場企業などまで本当に必要なのか?という素朴な疑問は残る。二種類のルールの併存が疎ましいというのであれば、連結ベースと単体ベースで基準をわけるという発想にはならないはずなのだが。

ともあれ、方向性は決まっているものの昨今の金融危機の後始末やなお続くソブリンなどの混乱によってあちこちで今後も腰砕け事例が出てくる可能性があるかもしれない。ただ、気になった一言は「日本というのは今はIFRSにとってとっても言うことをよく聞くカワイ子ちゃん」と位置づけられているということ。日本人が海外の決めたルールをくそまじめにやってしまうというのは、明治維新以来妙に強く体に刷り込まれてしまったのかもしれないが、なんとなくその性癖が悪用されているような気がしてならない。

素人がまた勝手なことを書いてスミマセン。専門家の方からご批判等いただけると幸いです。

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